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ダイブ7 第二次ポエニ戦争の巻 〜 ハンニバル・バルカ編 〜
第64話 立派なマインド・ダイバーですよ
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「ビジェイ。こう言っては失礼だが、どういう理由であれ、きみが残ってくれてホッとしているよ」
それはわたしがはじめて聞いた、父の心の底からの本音だった。
「きみがいなくなったら、この財団は立ち行かなくなるところだった。もちろん若手の有望なダイバーも育ってきている。だがまだAA級どまりだ」
「ガードナーさん、なにを言ってるんです」
ビジェイは驚いた顔で父を見つめた。
「エヴァちゃんがいるじゃないですか」
父はまるではじめて気づいた、と言わんばかりの、複雑な表情を浮かべてから、わたしのほうへ目をむけた。
「あ、いや、この子はまだ子供……」
「立派なマインド・ダイバーですよ。それもSS、いや、もうひとつSをつけてもいいほどの、超一流ダイバーです」
「CEO、あんたもわかってンでしょうが。お嬢さんがどれほど有能かをね」
ローガンの口調は、まるで父を追い詰めるような強いものだった。
「父親のあんたが認めてやらねぇでどうすンです。オレがプライドをズタズタにされて、ここを辞める決意をさせられたほどの『才能』を!」
わたしはローガンの態度に驚きを隠せなかった。あんなにひとを子供扱いして、うとんじるような態度をとっていた人物が、こんなにもわたしのことで熱くなってくれてる。
「ああ…… ローガン。わ、わかってるさ。わかっているとも。エヴァにはいずれ協力をお願いするつもりだ」
父は遠慮がちに声をつむぐのが精いっぱいだった。
「ガードナーさん」
ビジェイが穏やかな口調で言った。
「エヴァちゃんは別れた奥さんが、あなたのために人生をかけて育てたと聞きました。力がなくなったから、という理由で、奥さんを見限ったあなたの態度を、ぼくは個人的に許せませんが、エヴァちゃんという奥さんからの『贈物』をちゃんと正面から受けとめてあげてください」
ローガンは建物の出口で、父と握手をしながら言った。
「CEO、あんたは幸せモンだぜ。あんたに捨てられても、あんたのために役立ちたいと、娘を立派に育てあげてくれた奥さんがいて、それに応えて、あんたを助けてくれる、頼もしい娘がいる……」
彼は最後に手をふりながら言った。
「オレもあやかりたいほどだ」
それはわたしがはじめて聞いた、父の心の底からの本音だった。
「きみがいなくなったら、この財団は立ち行かなくなるところだった。もちろん若手の有望なダイバーも育ってきている。だがまだAA級どまりだ」
「ガードナーさん、なにを言ってるんです」
ビジェイは驚いた顔で父を見つめた。
「エヴァちゃんがいるじゃないですか」
父はまるではじめて気づいた、と言わんばかりの、複雑な表情を浮かべてから、わたしのほうへ目をむけた。
「あ、いや、この子はまだ子供……」
「立派なマインド・ダイバーですよ。それもSS、いや、もうひとつSをつけてもいいほどの、超一流ダイバーです」
「CEO、あんたもわかってンでしょうが。お嬢さんがどれほど有能かをね」
ローガンの口調は、まるで父を追い詰めるような強いものだった。
「父親のあんたが認めてやらねぇでどうすンです。オレがプライドをズタズタにされて、ここを辞める決意をさせられたほどの『才能』を!」
わたしはローガンの態度に驚きを隠せなかった。あんなにひとを子供扱いして、うとんじるような態度をとっていた人物が、こんなにもわたしのことで熱くなってくれてる。
「ああ…… ローガン。わ、わかってるさ。わかっているとも。エヴァにはいずれ協力をお願いするつもりだ」
父は遠慮がちに声をつむぐのが精いっぱいだった。
「ガードナーさん」
ビジェイが穏やかな口調で言った。
「エヴァちゃんは別れた奥さんが、あなたのために人生をかけて育てたと聞きました。力がなくなったから、という理由で、奥さんを見限ったあなたの態度を、ぼくは個人的に許せませんが、エヴァちゃんという奥さんからの『贈物』をちゃんと正面から受けとめてあげてください」
ローガンは建物の出口で、父と握手をしながら言った。
「CEO、あんたは幸せモンだぜ。あんたに捨てられても、あんたのために役立ちたいと、娘を立派に育てあげてくれた奥さんがいて、それに応えて、あんたを助けてくれる、頼もしい娘がいる……」
彼は最後に手をふりながら言った。
「オレもあやかりたいほどだ」
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