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ダイブ7 第二次ポエニ戦争の巻 〜 ハンニバル・バルカ編 〜
第58話 テューポーン撃破
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ドオォォォォォン
すさまじい地響きをたてて、ついにテューポーンが地面に落下した。
それはスキピオの陣営のど真ん中。
落下したテューポーンはその体躯の下から逃れられなかった者をことごとく押し潰した。なんとか難を逃れた兵士もおおくいたが、断末魔の痙攣であわただしく動く、テューポーンの翼の摩擦ですり潰された。
フラウロスは?
わたしはピストル・バイクの高度を慎重にさげていくと、テューポーンに近づいていった。テューポーン本体はすでに沈黙していたけど、ちぎれたドラゴンの首のなかにはまだ断末魔にあえいで、反射で動いているものもあった。口から炎を吐いて、命からがら逃げおおせたローマ兵を火だるまにしたり、のたうちまわって傷兵にとどめをさしたりしていた。
そのとき、テューポーンの背中の上で、よろよろとたちあがる影が目に入った。
「リスクスさん! 砲を構えて!」
わたしはうしろをふり向いて叫んだ。
リスクスの顔はすでにガリア人の勇猛な顔に戻っていた。
「お嬢、みっともないとこ、見せちまったな。だがもう大丈夫だ」
そう言うと肩にバズーカー砲を乗せて、正面に構えた。
「きさまぁぁぁぁ」
フラウロスが叫んだ。
それはわたしを指さしているような仕草だったけど、すでに両腕はもげていたのでそれはわからなかった。顔の上半分は吹っ飛んでいたし、腹にもおおきな穴が開いていて、それが本当にフラウロスかどうかも不明だったけど、ここにいたってわたしに怒りをぶつけてくるのは、ヤツしかいないので、わたしはそちらのほうにバイクの正面をむけた。
「リスクスさん。お父上の仇です。あなたの手で仇をうつってくださいっっ!」
わたしは、わたしの顔の横からヌッと突き出しているバズーカーの先端を、手で抱えながら叫んだ。
「さっきみたいに、そんなへなちょこ弾、受けてやるわぁぁぁぁ」
フラウロスが叫んだが、その直後、自分の腕が両方ともないことに気づいたようだった。
「ちょ、ちょっと待て、う、腕が……腕が……」
リスクスさんはまったくためらいもなく引鉄をひいた、
「ちょっと待てぇ、腕がぁぁぁ」
次の瞬間、フラウロスのからだはその場で弾けた。
「お見事です。リスクスさん、あなたはお父上の無念を、みずからの手で果たされました」
返事はなかった。
リスクスさんはバズーカーの砲身を抱きかかえて、声を殺して泣いていた。
わたしは背中をさしだすようからだをうしろにひいた。リスクスさんはわたしのちいさな背中に、自分の頭を預けると声をあげて泣きつづけた。
すさまじい地響きをたてて、ついにテューポーンが地面に落下した。
それはスキピオの陣営のど真ん中。
落下したテューポーンはその体躯の下から逃れられなかった者をことごとく押し潰した。なんとか難を逃れた兵士もおおくいたが、断末魔の痙攣であわただしく動く、テューポーンの翼の摩擦ですり潰された。
フラウロスは?
わたしはピストル・バイクの高度を慎重にさげていくと、テューポーンに近づいていった。テューポーン本体はすでに沈黙していたけど、ちぎれたドラゴンの首のなかにはまだ断末魔にあえいで、反射で動いているものもあった。口から炎を吐いて、命からがら逃げおおせたローマ兵を火だるまにしたり、のたうちまわって傷兵にとどめをさしたりしていた。
そのとき、テューポーンの背中の上で、よろよろとたちあがる影が目に入った。
「リスクスさん! 砲を構えて!」
わたしはうしろをふり向いて叫んだ。
リスクスの顔はすでにガリア人の勇猛な顔に戻っていた。
「お嬢、みっともないとこ、見せちまったな。だがもう大丈夫だ」
そう言うと肩にバズーカー砲を乗せて、正面に構えた。
「きさまぁぁぁぁ」
フラウロスが叫んだ。
それはわたしを指さしているような仕草だったけど、すでに両腕はもげていたのでそれはわからなかった。顔の上半分は吹っ飛んでいたし、腹にもおおきな穴が開いていて、それが本当にフラウロスかどうかも不明だったけど、ここにいたってわたしに怒りをぶつけてくるのは、ヤツしかいないので、わたしはそちらのほうにバイクの正面をむけた。
「リスクスさん。お父上の仇です。あなたの手で仇をうつってくださいっっ!」
わたしは、わたしの顔の横からヌッと突き出しているバズーカーの先端を、手で抱えながら叫んだ。
「さっきみたいに、そんなへなちょこ弾、受けてやるわぁぁぁぁ」
フラウロスが叫んだが、その直後、自分の腕が両方ともないことに気づいたようだった。
「ちょ、ちょっと待て、う、腕が……腕が……」
リスクスさんはまったくためらいもなく引鉄をひいた、
「ちょっと待てぇ、腕がぁぁぁ」
次の瞬間、フラウロスのからだはその場で弾けた。
「お見事です。リスクスさん、あなたはお父上の無念を、みずからの手で果たされました」
返事はなかった。
リスクスさんはバズーカーの砲身を抱きかかえて、声を殺して泣いていた。
わたしは背中をさしだすようからだをうしろにひいた。リスクスさんはわたしのちいさな背中に、自分の頭を預けると声をあげて泣きつづけた。
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