ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜

多比良栄一

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ダイブ7 第二次ポエニ戦争の巻 〜 ハンニバル・バルカ編 〜

第55話 ローガン、ビジェイとの共闘

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「ああ、そうだね。その程度だ……」

 フラウロスの目がたくらみに満ちた邪悪さを帯びたのがわかった。
「では、そちらもその程度を避けてもらおうか」

 その瞬間、テューポーンの頭から生えているドラゴンが一斉に火を吹いた。100頭から一気に放たれる炎の爆撃。

 わたしはフラウロスの邪気を感じ取った時点で、攻撃をしかけてくると予測していた。
 だから炎の先端がこちらに届く頃には、はるか上空へ上昇していた。
 
 でも、その動きをフラウロスも読んでいたらしい。
 テューポーンはその武骨な翼をおおきく広げて、二、三度、羽ばたきさせたかと思うと、ものすごいスピードで、空にいるわたしたちにむけてとびかかってきた。100メートルもある巨体とは思えないスピード。
 鈍重にちがいない、大雑把であるべきだ、という先入観を、みごとに裏切った動きだった。

 わたしは目の前に出現したテューポーンに、すこし面喰らいながらも、急ハンドルをきってバイクを反対にむけた。

 のろまではないのはわかった。
 でもこちらはそれ以上に小回りがきく。 

 スロットルをひねると、あっという間にテューポーンを後方へひきはなした。

「逃げるのかね」

 背後からフラウロスが、ひとを小馬鹿にしたことばを投げつけてきたけど、わたしは無視した。わたしはハンニバルの陣営の上空まで後退した。

「エヴァ! 撤退しよう!」
 下から大声で叫ぶ父の声が聞こえた。
 わたしにとっては、フラウロスのなじることばより、父のことばのほうが、耳障りだった。

「ハンニバル様! みんな逃げてください。テューポーンがこちらに来ます!」

 地上の兵たちの動きは速かった。騎兵が指さしで指示をすると、すぐに四方へ馬を駆り、
それに歩兵たちが続いた。
 動いてないのは、父たち、マインド・ダイバーたちだけだった。わたしは地面にむかって叫んだ。

「ビジェイ! テューポーンの腹に氷の槍を、思いっきり突き立てて! ローガン、あなたはその穴から、火の玉を送り込んで! 倒さなくていい。すこし弱らせてちょうだい」

「わかった! エヴァちゃん」
「ああ、まかせておけ」

 おおきな体躯を窮屈そうにひるがえして、テューポーンがこちらへむかってくる。蛇の尻尾のせいで、方向転換は容易ではない、とにらんだとおりだった。


「くるわ!」
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