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ダイブ7 第二次ポエニ戦争の巻 〜 ハンニバル・バルカ編 〜
第43話 ザマの戦い はじまる!
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「数では勝っているが、この戦いは圧倒的に我が軍が不利なのだ」
目の前に展開している両軍の布陣を見おろしながら、ハンニバルがぎりと唇をかんだ。
ビジェイの話では、ローマ軍の総数は4万2000。
対するハンニバル率いるカルタゴ軍は、5万3000と圧倒的に数的優位があった。しかも戦象も80頭おり、あきらかに戦力は充実していた。
「でもこちらの軍のほうが兵士が多いんでしょう。ビジェイに聞いたわ」
「ああ、数だけはな」
「数が多いのになんで不利なの? しかも圧倒的だなんて」
「騎兵だよ、エヴァ。われわれの軍には騎兵が足りないのだ」
ハンニバルにそう言われて、わたしは目の前にひろがるローマ軍の布陣を見た。
スキピオは重装歩兵を中央に配置し、その前面に軽装歩兵を展開させ、両翼を騎兵で固めていた。
ハンニバルも最前列に戦象を配置してはいたものの、前面に歩兵を三列に並べ、その両翼を騎兵で固めていたが、その騎兵の数におおきな違いがあった。
圧倒的、とハンニバルの口からついてでたのが、納得できるほどの差があった。
「こちらの騎兵は3000。でもローマ軍は、ローマ騎兵3000に、ヌミディア騎兵が6000。3倍もの戦力差があるんだ」
ビジェイがローマ軍の布陣を指さしながら言った。
「ヌミディア騎兵が? あのひとたちはこちらの味方じゃなかったの?」
わたしは単純に疑問を口にしたつもりだったけど、ハンニバルはおどろくほど悔しさをにじませて言った。
「ヌミディア王、マシニッサがカルタゴを裏切ったのだ」
戦いはローマ軍の騎兵の突撃によってはじまった。
「ハンニバル将軍、戦象をバラバラに突進させてください」
ビジェイが叫んだ。
「わかっている。突進しても避けられるのだったな」
「はい。このザマの戦いでは、スキピオに戦象の通り道を造られて、素通りさせられるんです。戦象はなんの攻撃もできずに終わってしまいます」
「象っていうヤツは、走りはじめたら止めるのが難しいからな」
ローガンが先頭を走る象に目をむけながら言った。
一列目の象はもうもうとした土煙をあげて、突進していたが、それがビジェイの作戦だった。巻き上げる土煙のせいで、そのうしろから続く象がどの位置にいるかがわからないように画策したのだ。
この戦象に幾度となく苦杯を舐めさせられたローマ軍は、わざと小隊ごとの間隔を広くとっていた。スキピオは象が近づいたところで、さらにこの幅を広げて、余裕で象が通り抜けてしまう間隔を空けるはずだった。
「一頭目はスルーされても、二頭目以降はほんのすこし横にずれているから、モロにローマ兵たちに突っ込みますよ」
ビジェイが自信満々に言った。
目の前に展開している両軍の布陣を見おろしながら、ハンニバルがぎりと唇をかんだ。
ビジェイの話では、ローマ軍の総数は4万2000。
対するハンニバル率いるカルタゴ軍は、5万3000と圧倒的に数的優位があった。しかも戦象も80頭おり、あきらかに戦力は充実していた。
「でもこちらの軍のほうが兵士が多いんでしょう。ビジェイに聞いたわ」
「ああ、数だけはな」
「数が多いのになんで不利なの? しかも圧倒的だなんて」
「騎兵だよ、エヴァ。われわれの軍には騎兵が足りないのだ」
ハンニバルにそう言われて、わたしは目の前にひろがるローマ軍の布陣を見た。
スキピオは重装歩兵を中央に配置し、その前面に軽装歩兵を展開させ、両翼を騎兵で固めていた。
ハンニバルも最前列に戦象を配置してはいたものの、前面に歩兵を三列に並べ、その両翼を騎兵で固めていたが、その騎兵の数におおきな違いがあった。
圧倒的、とハンニバルの口からついてでたのが、納得できるほどの差があった。
「こちらの騎兵は3000。でもローマ軍は、ローマ騎兵3000に、ヌミディア騎兵が6000。3倍もの戦力差があるんだ」
ビジェイがローマ軍の布陣を指さしながら言った。
「ヌミディア騎兵が? あのひとたちはこちらの味方じゃなかったの?」
わたしは単純に疑問を口にしたつもりだったけど、ハンニバルはおどろくほど悔しさをにじませて言った。
「ヌミディア王、マシニッサがカルタゴを裏切ったのだ」
戦いはローマ軍の騎兵の突撃によってはじまった。
「ハンニバル将軍、戦象をバラバラに突進させてください」
ビジェイが叫んだ。
「わかっている。突進しても避けられるのだったな」
「はい。このザマの戦いでは、スキピオに戦象の通り道を造られて、素通りさせられるんです。戦象はなんの攻撃もできずに終わってしまいます」
「象っていうヤツは、走りはじめたら止めるのが難しいからな」
ローガンが先頭を走る象に目をむけながら言った。
一列目の象はもうもうとした土煙をあげて、突進していたが、それがビジェイの作戦だった。巻き上げる土煙のせいで、そのうしろから続く象がどの位置にいるかがわからないように画策したのだ。
この戦象に幾度となく苦杯を舐めさせられたローマ軍は、わざと小隊ごとの間隔を広くとっていた。スキピオは象が近づいたところで、さらにこの幅を広げて、余裕で象が通り抜けてしまう間隔を空けるはずだった。
「一頭目はスルーされても、二頭目以降はほんのすこし横にずれているから、モロにローマ兵たちに突っ込みますよ」
ビジェイが自信満々に言った。
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