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ダイブ7 第二次ポエニ戦争の巻 〜 ハンニバル・バルカ編 〜
第41話 ついに悪魔が正体を現わす
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「フラウロス…… ビジェイ、わかるか?」
父は目の前で猛獣に変貌していく男の顔を睨みつけたまま訊いた。
「アダム。たしか『ソロモン72柱』にその名前があったかと……」
「ソロモン72柱だとぉ……」
父やローガンたちの動揺は、はた目にもわかるほどだった。様子を無言でみていたハンニバルが、おもわず声をあげた。
「アダム! なにがあった? マルケルス、いや、さっきまでマルケルスだったあいつは何者なのだ」
「将軍。あいつは、悪魔です。それもかなり階級が高い」
「階級が高いとどうなる?」
「我々の持つ不思議な能力を使っても勝てないかもしれません。もちろん、本来の歴史でハンニバル軍が勝利する戦いなら、力の差は埋められるでしょう。しかし、この戦い、この『ザマの戦い』はハンニバル軍が壊滅させられる戦いです。強大な力を持つ悪魔を相手にして、正統な歴史をひっくり返すのは……」
「ここで負けてしまっては、そなたらの任務も失敗になるのだろう」
「ええ…… 残念ですが……」
父が頭をたれたまま、リスクスのほうへ目を向けた。その申し訳なさそうな視線に、リスクスは自分の思いが果たせないことに気づいたらしかった。
「ど、どういうことですか? 俺っちの未練ははらせないってことですか? ここまで何年待ったと思うのです?」
リスクスが父の胸ぐらを掴んだ。すぐにローガンがそれを引き剥がそうと、動いたが、父はローガンを目で制した。
「リスクス、わたしたちもおまえの未練を晴らしてやれないのが、悔しくて仕方がないのだ。そのためだけに未来から来ているのだからね。だが、おまえの未練の思いを叶えるには、敵はあまりに強大で、歴史は我々に無慈悲な結末をつきつけてくるのだ」
「目の前に、すぐそこに、俺っちの父を殺した、憎き執政官がいるんですぜ。せめてあいつの息の根をとめられれば……」
「わたしがやるわ!」
わたしは自信満々にそう言い放っていた。
「リスクスさん、それであなたの未練はそれで晴れるのね」
父の胸ぐらを掴んだままのリスクスに、わたしは近づいてから彼を睨みつけた。
「リスクスさん、あの男、マルケルスを倒せば…… あなたのお父上の仇をとれば……あなたの未練はなくなるのね」
もちろん選択肢などない。
言質が欲しいだけだ。
リスクスはわたしから目をそらすようにして、すっかり豹男に変身したマルケルスのほうへ目をむけた。
「ああ、そうだ。父の仇、あのマルケルスを倒してくれ。俺っちはずっとそれを願ってた」
「決まりよ!」
わたしはすでにリスクスを見てなかった。
「リスクスさん。あなたの未練、晴らしてあげる」
わたしはフラウロスと名乗った悪魔に、にっこりと微笑みかけてから言った。
「そこにいる三流悪魔を、わたしが倒すわ」
父は目の前で猛獣に変貌していく男の顔を睨みつけたまま訊いた。
「アダム。たしか『ソロモン72柱』にその名前があったかと……」
「ソロモン72柱だとぉ……」
父やローガンたちの動揺は、はた目にもわかるほどだった。様子を無言でみていたハンニバルが、おもわず声をあげた。
「アダム! なにがあった? マルケルス、いや、さっきまでマルケルスだったあいつは何者なのだ」
「将軍。あいつは、悪魔です。それもかなり階級が高い」
「階級が高いとどうなる?」
「我々の持つ不思議な能力を使っても勝てないかもしれません。もちろん、本来の歴史でハンニバル軍が勝利する戦いなら、力の差は埋められるでしょう。しかし、この戦い、この『ザマの戦い』はハンニバル軍が壊滅させられる戦いです。強大な力を持つ悪魔を相手にして、正統な歴史をひっくり返すのは……」
「ここで負けてしまっては、そなたらの任務も失敗になるのだろう」
「ええ…… 残念ですが……」
父が頭をたれたまま、リスクスのほうへ目を向けた。その申し訳なさそうな視線に、リスクスは自分の思いが果たせないことに気づいたらしかった。
「ど、どういうことですか? 俺っちの未練ははらせないってことですか? ここまで何年待ったと思うのです?」
リスクスが父の胸ぐらを掴んだ。すぐにローガンがそれを引き剥がそうと、動いたが、父はローガンを目で制した。
「リスクス、わたしたちもおまえの未練を晴らしてやれないのが、悔しくて仕方がないのだ。そのためだけに未来から来ているのだからね。だが、おまえの未練の思いを叶えるには、敵はあまりに強大で、歴史は我々に無慈悲な結末をつきつけてくるのだ」
「目の前に、すぐそこに、俺っちの父を殺した、憎き執政官がいるんですぜ。せめてあいつの息の根をとめられれば……」
「わたしがやるわ!」
わたしは自信満々にそう言い放っていた。
「リスクスさん、それであなたの未練はそれで晴れるのね」
父の胸ぐらを掴んだままのリスクスに、わたしは近づいてから彼を睨みつけた。
「リスクスさん、あの男、マルケルスを倒せば…… あなたのお父上の仇をとれば……あなたの未練はなくなるのね」
もちろん選択肢などない。
言質が欲しいだけだ。
リスクスはわたしから目をそらすようにして、すっかり豹男に変身したマルケルスのほうへ目をむけた。
「ああ、そうだ。父の仇、あのマルケルスを倒してくれ。俺っちはずっとそれを願ってた」
「決まりよ!」
わたしはすでにリスクスを見てなかった。
「リスクスさん。あなたの未練、晴らしてあげる」
わたしはフラウロスと名乗った悪魔に、にっこりと微笑みかけてから言った。
「そこにいる三流悪魔を、わたしが倒すわ」
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