ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜

多比良栄一

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ダイブ7 第二次ポエニ戦争の巻 〜 ハンニバル・バルカ編 〜

第26話 カンナエの戦いはじまる

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 アドリア海を背にしたローマ軍は横一直線の陣形を敷いていた。真ん中に歩兵、そしてその両側を騎兵が守っていた。
 迎え撃つカルタゴ軍もおなじ陣形だった。ただカルタゴ軍の歩兵は、中央部分が敵側につきだす形でふくらんだ弓形になっていた。
 中央に配置したローマ軍歩兵が、あまりのおおさに横長ではなく縦長に近いほど重なりあっているのと比べると、どうにも不自然な陣形だった。



 そして両軍が最初にコンタクトしたのは、その弓なりの中央部分のガリア兵とローマの軽装歩兵だった。

 緒戦からローマ側が優勢だった。
 軽装歩兵で押し気味になると、ローマの執政官は後方に控えていた重装歩兵を投入した。早期の中央突破を狙ってきたのだと、すぐにわかった。
 ハンニバル軍の前衛は、中央がふくらんでいた弓形が、数におされはじめ、次第に中央がへこんだ弓形になってきた。
 このままでは中央突破されそうだ、と思ったけど、歩兵の両翼にいる騎兵同士の戦いもはじまっていて、加勢を送れるような状況ではなかった。
 
 だけど、この両翼の騎兵たちは、逆にハンニバル軍が善戦していた。

「騎兵たちは勝ってるんじゃないの?」
「ああ、そうだね。約9万対5万の戦力差はあるけど、騎兵の数は約7000対10000と、ハンニバル軍のほうが多いんだ」
 ビジェイが手でひさしをつくって、戦局を眺めながら言った。

「だからハンニバルは、この平地で決戦を挑んだ。騎兵にとって有利な平地での戦いをね」

 わたしは思わずハンニバルのほうを見た。
 数十メートル離れた幕舎の近くで、部下に矢継ぎ早に指示を飛ばしている姿が目に入った。その表情は緊張感に引き締まってたが、けっして焦っているようには見えなかった。

「でも中央は押されているわ。このままじゃ、中央を突破……」
 そこまで言って、わたしはことばを失った。

 ローマの重装歩兵におされていた前衛は、弓なりにへこみきったところで、戦闘をやめて左右にわかれて戦列を離れはじめたのだ。ちりぢりばらばらになって、ガリア兵や軽装騎兵が逃げまどう。



 ついに中央突破したと思ったローマ兵が、いさんで前に飛び出す。

 そこに軽装歩兵の影に隠れていた、ハンニバルの重装歩兵がたちはだかった。

「ローマ兵のやつら、驚いてやがる。ま、無理もない」
 ローガンがひとりごちるように呟いた。

「でも数は圧倒的にローマ軍のほうがおおいわ」
「数はな」
 ローガンは力強く言いきった。
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