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ダイブ7 第二次ポエニ戦争の巻 〜 ハンニバル・バルカ編 〜
第22話 エヴァ能力発動!
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「さく……エヴァ。おまえ、なにをするつもりだ?」
「お父様。わたしの能力を使うのよ」
「おあんたの能力? 嬢ちゃん、あんたはなにができるっていうんだ?」
ローガンが小馬鹿にした口調で言ってきた。
わたしは天空にむけて手をむけたまま、振り向いていった。
「わたしの能力は『金』よ。英語だと『マネー』、『ゴールド』になるかしら。わたし、最初のダイブのとき、金という金すべてを願ったの」
「金?」
ローガンは声が裏返るくらい驚きをあらわにしたが、すぐに口元をおさえて含み笑いをした。
「くくくくく…… やっぱ、子供の発想だな。金が欲しいだなんて。CEO、残念ながらあんたの娘さんは、見込みちがいだったようだな」
「あーら。お金は大切なものでしょ。歴史は金の力で動いているようなものなんだから」
「ああ、嬢ちゃん。たしかにそのとおりだ。だが悪魔相手にお金なんぞ通用しねぇよ」
「さぁて、どうかしら?」
わたしは上に上げていた両腕を一気に下に降ろした。
その瞬間——
林の奥のほうの上空からコインの雨が、地面めがけて降り注いだ。
それはまさに土砂降りといっていいほどの量。
地面や木々にコインがあたる、カチン、カチンという音が聞こえてくる。
が、ほどなくして、林の奥のあちこちから、うぉーーーーという歓声が巻き起こった。その声が数キロにもおよぶ湖畔の西から東へ、うねりとなって東のほうへと進んでいった。
「なにが?」
ローガンが唖然としていた。まだ口元に手をやったままだった。ビジェイが目を輝かせながら言った。
「お金が降ってきたんだ。しかも高価なクアドリガトゥス銀貨だよ。そんなの、だれだって声あげちゃうに決まってるさ。戦争なんかしてる場合じゃない」
ローマ兵がおもわずあげた声のおかげで、ハンニバル軍は自分たちの背後に敵兵が迫っていることに気づいたようだった。すぐに反転して湖を背にして、陣形を整えはじめていた。
が、そこに一部のローマ兵が突撃してきた。お金の誘惑に負けなかった精鋭たちにちがいなかった。
ガリア兵はとっくに臨戦態勢になっていたので、余裕で先陣の兵たちを斬り伏せた。
だけどすぐに怒声のような雄叫びが、あちこちであがりはじめた。
その響きはお金が降ってきて我を忘れたときのものとは、あきらかにちがっていた。せっぱ詰まったような、悲愴感が感じ取られた。
わたしにはローマ兵が決死の覚悟をもって、ハンニバル軍殲滅に転じたことがわかった。
「まずいな。やっぱり押されてる」
父が湖畔のほうへ目をむけて言った。
「エヴァちゃんのおかげで、奇襲こそまぬかれたけど、地形的な不利はどうしようも動かせない」
「ローガン! 炎で敵兵を焼き尽くせないか?」
「お父様。わたしの能力を使うのよ」
「おあんたの能力? 嬢ちゃん、あんたはなにができるっていうんだ?」
ローガンが小馬鹿にした口調で言ってきた。
わたしは天空にむけて手をむけたまま、振り向いていった。
「わたしの能力は『金』よ。英語だと『マネー』、『ゴールド』になるかしら。わたし、最初のダイブのとき、金という金すべてを願ったの」
「金?」
ローガンは声が裏返るくらい驚きをあらわにしたが、すぐに口元をおさえて含み笑いをした。
「くくくくく…… やっぱ、子供の発想だな。金が欲しいだなんて。CEO、残念ながらあんたの娘さんは、見込みちがいだったようだな」
「あーら。お金は大切なものでしょ。歴史は金の力で動いているようなものなんだから」
「ああ、嬢ちゃん。たしかにそのとおりだ。だが悪魔相手にお金なんぞ通用しねぇよ」
「さぁて、どうかしら?」
わたしは上に上げていた両腕を一気に下に降ろした。
その瞬間——
林の奥のほうの上空からコインの雨が、地面めがけて降り注いだ。
それはまさに土砂降りといっていいほどの量。
地面や木々にコインがあたる、カチン、カチンという音が聞こえてくる。
が、ほどなくして、林の奥のあちこちから、うぉーーーーという歓声が巻き起こった。その声が数キロにもおよぶ湖畔の西から東へ、うねりとなって東のほうへと進んでいった。
「なにが?」
ローガンが唖然としていた。まだ口元に手をやったままだった。ビジェイが目を輝かせながら言った。
「お金が降ってきたんだ。しかも高価なクアドリガトゥス銀貨だよ。そんなの、だれだって声あげちゃうに決まってるさ。戦争なんかしてる場合じゃない」
ローマ兵がおもわずあげた声のおかげで、ハンニバル軍は自分たちの背後に敵兵が迫っていることに気づいたようだった。すぐに反転して湖を背にして、陣形を整えはじめていた。
が、そこに一部のローマ兵が突撃してきた。お金の誘惑に負けなかった精鋭たちにちがいなかった。
ガリア兵はとっくに臨戦態勢になっていたので、余裕で先陣の兵たちを斬り伏せた。
だけどすぐに怒声のような雄叫びが、あちこちであがりはじめた。
その響きはお金が降ってきて我を忘れたときのものとは、あきらかにちがっていた。せっぱ詰まったような、悲愴感が感じ取られた。
わたしにはローマ兵が決死の覚悟をもって、ハンニバル軍殲滅に転じたことがわかった。
「まずいな。やっぱり押されてる」
父が湖畔のほうへ目をむけて言った。
「エヴァちゃんのおかげで、奇襲こそまぬかれたけど、地形的な不利はどうしようも動かせない」
「ローガン! 炎で敵兵を焼き尽くせないか?」
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