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ダイブ7 第二次ポエニ戦争の巻 〜 ハンニバル・バルカ編 〜
第23話 ビジェイの能力(ギフト)
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「無茶を! CEO、数キロに広がってるんですよ。林に火を放つのは簡単ですが、味方まで巻込んじまいまさぁ」
「しかしこのままだと、この戦いであったままに、トラシメヌス湖を数万の死体が埋めつくすことになる。ローマ軍でなくハンニバル軍の死体でな」
「そんなこたぁわかってます。ですが、オレが本気で火の力をふるっても、おなじ結果になるってもんです。溺死体じゃなく焼死体に変わるだけでね」
わたしたちはリスクスを引き連れて、より湖岸に近づく方角へむかった。林から抜け出すと、湾曲した湖岸の様子がみてとれた。
状況は父の言う通りだった。
すでに一部のハンニバル兵は湖岸に追い詰められていて、なすすべもなく殺されていた。湖をわたって逃げようとする兵士は、うしろからの投槍で体を貫かれていた。うまく攻撃を交わしても、泳げない者たちは溺れるしかなかった。
「このままではハンニバル軍は全滅するぞ、ビジェイ!」
父はビジェイをしかりつけるように叫んだ。
ビジェイは両腕の袖を腕まくりしながら前に進みでながら言った。
「しかたがないですね。ぼくがハンニバル軍の退路を作りだしますよ」
「ビジェイ、なにするつもり?」
わたしはやけに余裕の表情を浮かべているのが、気に入らなくてビジェイに訊いた。
「エヴァちゃん。なぜぼくがローガンとバディを組んでいると思うかい?」
「そ、そりゃあ、仲がいいから……でしょ」
「またぁ。だれがどう見たって、ぼくとローガンが馬が合うようには見えないだろ」
「本当だぜ。お嬢ちゃん。オレとビジェイは性格も真逆だしな。仲がいいわきゃないだろ」
「だったらどうして?」
「それはね……」
ビジェイはその場に腰を落とすと、手を地面に近づけてから言った。
「ローガンの力が『火』にたいして、ぼくの力が……」
その瞬間、ビジェイの手元から光が広がったかと思うと、トラシメヌス湖の湖面がみるみるしろく凍りはじめた。
「——『氷』だからなんだ」
凍った湖面はあっと言う間に、対岸のほうへ到達していった。
ハンニバル軍の兵士が、氷の上を走って逃げていく。湖岸に追いたてていたローマ兵たちは、湖面に現われた逃走経路に唖然としていた。
「なるほど。つまりファイア&アイスというわけね」
「ああ。性格は正反対なんだけど。ぼくとローガンの能力が重なれば最強さ。だからバディを組んでるっていうわけ」
そう言いながらたちあがると、ハンニバル兵をおいかけはじめたローマ兵にむかって両腕を大きくふった。
氷の矢——
ローマ兵たちが走る勢いのまま倒れて、氷の上を滑っていく。もう一度腕をふるうと、また数人がバタバタと倒れた。
「指10本しかないからね。効率わるいったらないけどね」
「ビジェイ、氷の上を渡ろうとしてるヤツの足だけ凍らせて、足止めしてくれや」
「了解」
「しかしこのままだと、この戦いであったままに、トラシメヌス湖を数万の死体が埋めつくすことになる。ローマ軍でなくハンニバル軍の死体でな」
「そんなこたぁわかってます。ですが、オレが本気で火の力をふるっても、おなじ結果になるってもんです。溺死体じゃなく焼死体に変わるだけでね」
わたしたちはリスクスを引き連れて、より湖岸に近づく方角へむかった。林から抜け出すと、湾曲した湖岸の様子がみてとれた。
状況は父の言う通りだった。
すでに一部のハンニバル兵は湖岸に追い詰められていて、なすすべもなく殺されていた。湖をわたって逃げようとする兵士は、うしろからの投槍で体を貫かれていた。うまく攻撃を交わしても、泳げない者たちは溺れるしかなかった。
「このままではハンニバル軍は全滅するぞ、ビジェイ!」
父はビジェイをしかりつけるように叫んだ。
ビジェイは両腕の袖を腕まくりしながら前に進みでながら言った。
「しかたがないですね。ぼくがハンニバル軍の退路を作りだしますよ」
「ビジェイ、なにするつもり?」
わたしはやけに余裕の表情を浮かべているのが、気に入らなくてビジェイに訊いた。
「エヴァちゃん。なぜぼくがローガンとバディを組んでいると思うかい?」
「そ、そりゃあ、仲がいいから……でしょ」
「またぁ。だれがどう見たって、ぼくとローガンが馬が合うようには見えないだろ」
「本当だぜ。お嬢ちゃん。オレとビジェイは性格も真逆だしな。仲がいいわきゃないだろ」
「だったらどうして?」
「それはね……」
ビジェイはその場に腰を落とすと、手を地面に近づけてから言った。
「ローガンの力が『火』にたいして、ぼくの力が……」
その瞬間、ビジェイの手元から光が広がったかと思うと、トラシメヌス湖の湖面がみるみるしろく凍りはじめた。
「——『氷』だからなんだ」
凍った湖面はあっと言う間に、対岸のほうへ到達していった。
ハンニバル軍の兵士が、氷の上を走って逃げていく。湖岸に追いたてていたローマ兵たちは、湖面に現われた逃走経路に唖然としていた。
「なるほど。つまりファイア&アイスというわけね」
「ああ。性格は正反対なんだけど。ぼくとローガンの能力が重なれば最強さ。だからバディを組んでるっていうわけ」
そう言いながらたちあがると、ハンニバル兵をおいかけはじめたローマ兵にむかって両腕を大きくふった。
氷の矢——
ローマ兵たちが走る勢いのまま倒れて、氷の上を滑っていく。もう一度腕をふるうと、また数人がバタバタと倒れた。
「指10本しかないからね。効率わるいったらないけどね」
「ビジェイ、氷の上を渡ろうとしてるヤツの足だけ凍らせて、足止めしてくれや」
「了解」
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