767 / 935
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第291話 サプライズ・エンディング(どんでん返し)1
しおりを挟む
「子供じゃない?」
「あの子は子供じゃなくて、れっきとした大人なんです」
「10年前のテムズ川の遊覧船転覆事故で、両親を亡くしたとき、自力で生還したのです。そして親戚の手で『養育院』に送り込まれ、それがいやでオリヴァーのように逃げ出した」
「ちょっと待って。ピーターはどうみても10歳くらいだ」
「そうなんです。10年前に逃げ出したのなら、今は20歳を超えているはずなんです。0歳児が自力で泳げないし、『養育院』には送られない。ましてや自分の意志で逃げ出すなんて……」
「そういやぁ、ピーターも、この街では子供の発育がとまるって言ってたねぇ」
「そうです。もしかしたら、小人症か、ホルモンの分泌不全なのかもしれません」
「だからどうした。戻っても仕方ないだろ」
「彼の父親は町医者と言ってましたが、外科医だったとしたらどうします? それだけじゃありません。肉処理工場でパトリックという肉処理人がいい腕だった……と」
「ま、まさか……」
エヴァが絶句した。
「ええ、エヴァ様。そのまさか、かもしれないんです」
「だって、切り裂きジャック、チャールズ・レクミアは捕まったんですよ」
「ピーターの証言でね」
「つまり、あの切り裂きジャックに腕は切られたというのは狂言ってことかい?」
「ゾーイ。わたくしとしたことが…… 切り裂きジャックの正体を探らせるために、まさかその当人に見張らせていただなんて……」
「動機は? 動機はなんです」
エヴァが食い下がった。
「それは、あの文士の方々が推論していた通りです」
「いや、スピロ。だってみんなバラバラだったじゃないか?」
「ああ、自分の著書や研究成果から、自分勝手な解釈ばかりしてやがったぞ」
「それで正解だったのです」
「ここは、このイースト・エンドは、ピーターにとってのネバー・ランドなんです」
「どういう意味なんだい」
「セイ様、ネバーランドでは、子供たちは年をとらない、となっています。ですが、マシュー・バリー様の原作ではそうではないのです。大人にならないのではなく、なれないのです。それは……」
「大人になったら、ピーター・パンが殺すからです」
「そんな……」
「エヴァ様、驚かれるのはわかります。わたくしたちが知っている話とはちがってますからね」
「本当は怖いピーター・パン…… だから子供しかいねぇのか」
マリアがひとりごちた。
「あの子は子供じゃなくて、れっきとした大人なんです」
「10年前のテムズ川の遊覧船転覆事故で、両親を亡くしたとき、自力で生還したのです。そして親戚の手で『養育院』に送り込まれ、それがいやでオリヴァーのように逃げ出した」
「ちょっと待って。ピーターはどうみても10歳くらいだ」
「そうなんです。10年前に逃げ出したのなら、今は20歳を超えているはずなんです。0歳児が自力で泳げないし、『養育院』には送られない。ましてや自分の意志で逃げ出すなんて……」
「そういやぁ、ピーターも、この街では子供の発育がとまるって言ってたねぇ」
「そうです。もしかしたら、小人症か、ホルモンの分泌不全なのかもしれません」
「だからどうした。戻っても仕方ないだろ」
「彼の父親は町医者と言ってましたが、外科医だったとしたらどうします? それだけじゃありません。肉処理工場でパトリックという肉処理人がいい腕だった……と」
「ま、まさか……」
エヴァが絶句した。
「ええ、エヴァ様。そのまさか、かもしれないんです」
「だって、切り裂きジャック、チャールズ・レクミアは捕まったんですよ」
「ピーターの証言でね」
「つまり、あの切り裂きジャックに腕は切られたというのは狂言ってことかい?」
「ゾーイ。わたくしとしたことが…… 切り裂きジャックの正体を探らせるために、まさかその当人に見張らせていただなんて……」
「動機は? 動機はなんです」
エヴァが食い下がった。
「それは、あの文士の方々が推論していた通りです」
「いや、スピロ。だってみんなバラバラだったじゃないか?」
「ああ、自分の著書や研究成果から、自分勝手な解釈ばかりしてやがったぞ」
「それで正解だったのです」
「ここは、このイースト・エンドは、ピーターにとってのネバー・ランドなんです」
「どういう意味なんだい」
「セイ様、ネバーランドでは、子供たちは年をとらない、となっています。ですが、マシュー・バリー様の原作ではそうではないのです。大人にならないのではなく、なれないのです。それは……」
「大人になったら、ピーター・パンが殺すからです」
「そんな……」
「エヴァ様、驚かれるのはわかります。わたくしたちが知っている話とはちがってますからね」
「本当は怖いピーター・パン…… だから子供しかいねぇのか」
マリアがひとりごちた。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる