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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第285話 ツイスト 思いがけない真相4
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「たしかに、ほかの犯行は咽喉を切り裂いてから、腹部を刺したり、切り裂いたり、内臓をとりだしたりしているのに、三番目だけがほかに傷がありませんから、当時から切り裂きジャックの犯行かどうか疑われていました」
「だろ? バカだよね。でもね、あたしはバカじゃないからね。ちゃんと犠牲者の名前のつながりは大事にしたさ」
「名前のつながり?」
スピロはそう言って、エヴァのほうへ目をむけた。その目はあきらかに驚きと、すくなからず狼狽の色がみてとれた。スピロにして、まったく意味がわからないということなのだ。
おもわず自分に助けをもとめた、とエヴァは理解した。
「ネルさん。名前のつながりってなんですの?」
「エヴァ。この切り裂きジャックってヤツはね、自分なりの美学があるのさ」
「美学? あのレクミアってひとは風采のあがらない男でしたわ」
「は、そうみえただけさ。だけどあたいは気づいたさ」
「最初の被害者、メアリー・アン・ニコルズが殺されたときにね」
「なにを気づいたと?」
「その前に殺されたマーサ・タブラムは切り裂きジャックの仕業ってことになってないけどね。マーサのダチから聞いたのさ。もしかしたらマーサは自分と間違えて殺されたのかもしれないってね。そのダチはマーサが殺される直前まで一緒でね」
「それがなぜ、間違えて殺されたってことに?」
「次の犠牲者がメアリー・アン・ニコルズだったからさ」
「どういうことです?」
「マーサ・タブラムと直前まで一緒にいたダチの名前は、メアリー・アン・コネリーっていうのさ」
「偶然でしょう!」
スピロが突然いきり立った。が、顔色をうしなってる。
「そうだね。名探偵クロニス。でも2番目の被害者アニー・チャップマンは、本名をエリザ・アン・スミスっていうのさ。ほら、ここでもアンっていうミドルネームだ」
「まさか『見立て殺人』だというのですか!」
「見立て殺人? なんだいそりゃ?」
「童謡や言い伝え、アルファベット順などに見立てて、死者や現場が犯人に装飾された殺人事件です。アガサ・クリスティの『ABC殺人事件』『そして誰もいなくなった』、ヴァン・ダインの『僧正殺人事件』が有名です」
「名探偵クロニス、あんたがなにを言ってるのかわからないね」
ネルは大袈裟に肩をすくめてみせた。
「おい、ネル。おめえが殺った三番目の犯行も『アン』がついてるのか!」
マリアが苛つきをことばにした。
「だろ? バカだよね。でもね、あたしはバカじゃないからね。ちゃんと犠牲者の名前のつながりは大事にしたさ」
「名前のつながり?」
スピロはそう言って、エヴァのほうへ目をむけた。その目はあきらかに驚きと、すくなからず狼狽の色がみてとれた。スピロにして、まったく意味がわからないということなのだ。
おもわず自分に助けをもとめた、とエヴァは理解した。
「ネルさん。名前のつながりってなんですの?」
「エヴァ。この切り裂きジャックってヤツはね、自分なりの美学があるのさ」
「美学? あのレクミアってひとは風采のあがらない男でしたわ」
「は、そうみえただけさ。だけどあたいは気づいたさ」
「最初の被害者、メアリー・アン・ニコルズが殺されたときにね」
「なにを気づいたと?」
「その前に殺されたマーサ・タブラムは切り裂きジャックの仕業ってことになってないけどね。マーサのダチから聞いたのさ。もしかしたらマーサは自分と間違えて殺されたのかもしれないってね。そのダチはマーサが殺される直前まで一緒でね」
「それがなぜ、間違えて殺されたってことに?」
「次の犠牲者がメアリー・アン・ニコルズだったからさ」
「どういうことです?」
「マーサ・タブラムと直前まで一緒にいたダチの名前は、メアリー・アン・コネリーっていうのさ」
「偶然でしょう!」
スピロが突然いきり立った。が、顔色をうしなってる。
「そうだね。名探偵クロニス。でも2番目の被害者アニー・チャップマンは、本名をエリザ・アン・スミスっていうのさ。ほら、ここでもアンっていうミドルネームだ」
「まさか『見立て殺人』だというのですか!」
「見立て殺人? なんだいそりゃ?」
「童謡や言い伝え、アルファベット順などに見立てて、死者や現場が犯人に装飾された殺人事件です。アガサ・クリスティの『ABC殺人事件』『そして誰もいなくなった』、ヴァン・ダインの『僧正殺人事件』が有名です」
「名探偵クロニス、あんたがなにを言ってるのかわからないね」
ネルは大袈裟に肩をすくめてみせた。
「おい、ネル。おめえが殺った三番目の犯行も『アン』がついてるのか!」
マリアが苛つきをことばにした。
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