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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第284話 ツイスト 思いがけない真相3
しおりを挟むセイはあんぐりと口をあけたまま、それ以上ことばを続けることができなかった。
「ど、どーいうことですの。ネルさん!!」
エヴァは気色ばんだ。
三番目の犠牲者、エリザベス・ストライド——
自分が上空からネルを探していたとき、バーナー・ストリートの路地から転がりでてきたときの光景を思い出した。
「ひとが死んでる!」
ネルは尻餅をついたまま、そう叫んでいたはずだ。
「エヴァぁ、あんたのあの空飛ぶ機械のせいで、もうすこしでバレそうになったよ。あれは危なかった」
「だ、だって…… あなた、わたしたちと合流しようと、あの場所にいたって……」
「ああ、そうさ。でももうすこしあとでね。だけどあんたのせいで、あの女を切り裂く時間がなくなっちまったよ。おかげで第一発見者になるしかなかったのさ」
ネルは呆然としているスピロのほうに目を向けて言った。
「スピロ・クロニス…… 犯罪においては『第一発見者を疑え』は鉄則……だろ?」
「なぜです。なぜ、あなたがストライド嬢に手をかける必要があったのです?」
「あのババアは、あたしの金づるを寝取ったのさ」
「金づる?」
「ジェームズだよ。商船エンジニアのね」
その瞬間、エヴァは思い出した。
ピーターの紹介で行ったピックフォード社の肉解体工場を出たところで、出会った年かさのいった男——
ジェームズ・トマス・サドラー
親子ほども年が離れているネルの上客。
ネル、本名フランシス・コールズ殺害の犯人として逮捕され、切裂きジャックとして裁判にかけられたのち、アリバイのおかげで無罪になった男——
「あの性悪ババア、あたいが文句を言ったら、『あんたのモンじゃあ、あのひとは満足できないのさ』とか『そんなに若いのに逃げられるって、なんかヘンなビョーキでももってるんじゃないのかい』とか、さんざん罵倒したのさ」
「だからぶっ殺してやった。切り裂きジャックの手口をまねてね」
「お粗末な手口でしたよ」
「しかたがないだろ。空飛ぶ機械の音が近づいてきたのがわかったんだからさ。ほんとうは咽喉を掻き切るくらいしたかったさ。だけど、この犯行は切り裂きジャックの犯行ってことなってるンだろ?」
「ええ。カノニカル・ファイブのなかに含まれています」
「あはははは…… だったら大成功じゃないのさ。お粗末なのは、こいつを切り裂きジャックの犯行だって決めつけてる、大先生様たちのほうさ。あはははは……」
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