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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第282話 ツイスト 思いがけない真相1
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「さて、そろそろ、わたくしたちもこの世界を去る時間です」
船が出港し、見送り客たちもすくなくなってきたところで、スピロは言った。
すでにコナン・ドイルやワイルド、マシュー・バリーたちも去り、いまはサイコ・ダイバーズの面々とネルしかいない。
エヴァはスピロのことばを聞いて、あらためて煤けた空をみあげた。
「このヘドのでるような空気とおさらばできるのはありがたいですわ」
つい本音が口をついてでた。
「そうか? オレはもうすっかり慣れっこになったぜ」
「空を飛ぶには、この不潔な空はサイアクですわ」
「エヴァ様にはそうかもしれませんね。でもわたくしは堪能させていただきましたよ。シャーロック・ホームズが活躍したこの時代をね」
「これからどうなるんだい? あたしが殺された日までは、もうすこしあいだがあるんですよ」
ネルの表情は沈んでいた。
「おそらくそろそろジョウントが起きるはずです」
「ジョウント? ああ、あなたがたにおきる時間の跳躍ですね。でもあたしはそのあいだ数週間ふつうに暮らしているんですけどね」
「ネルさん、仕方がないよ。あたいたちはここの時代の住人じゃないからね。ただの日常を送っている時間ははしょられちまうのさ」
ゾーイがネルの背中に手をまわして、そう諭したがネルは不安そうに眉根をよせた。
「心細いですわ」
その瞬間、エヴァはあたりの風景がブーンとブレるのを感じた。
ジョウントだ——
ふっとあたりの場景が元に戻る。
気づくとエヴァたちは、狭い路地にいた。日が落ちて夜になっていたが、メンバーもおなじままだったので、そのまま数時間経って、日が暮れた、としか思えなかった。
ゾクッとするような冷気が肌をさす。
何日経ってるの——?
「すげー、寒いぞ!」
マリアが抗議の声をあげ、ゾーイやセイが服の前身ごろをかきあわせる。
エヴァはスピロに今がいつなのかを尋ねようとした。が、あまりの寒さに唇がかじかんで、とっさに声がでなかった。
そのとき、遠くからセイたちを呼ぶ声が聞こえた。
コナン・ドイルたちが戻ってきたかと思ったが、むこうからゆっくり歩いてくるのは、ウォルター・デュー刑事だった。
「デュー刑事、なぜここが?」
セイがデューに尋ねると、デューはスピロのほうに目をむけて言った。
「スピロさんに、あなたがたに次に会えるのは、このスワローガーデンだって聞いてましたので、待っていたんです」
「そうなんですか。でもこんな寒い夜に来ていただいて…… なにかあったんですか?」
「レクミアが殺されました」
デューがそう言った。
船が出港し、見送り客たちもすくなくなってきたところで、スピロは言った。
すでにコナン・ドイルやワイルド、マシュー・バリーたちも去り、いまはサイコ・ダイバーズの面々とネルしかいない。
エヴァはスピロのことばを聞いて、あらためて煤けた空をみあげた。
「このヘドのでるような空気とおさらばできるのはありがたいですわ」
つい本音が口をついてでた。
「そうか? オレはもうすっかり慣れっこになったぜ」
「空を飛ぶには、この不潔な空はサイアクですわ」
「エヴァ様にはそうかもしれませんね。でもわたくしは堪能させていただきましたよ。シャーロック・ホームズが活躍したこの時代をね」
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「おそらくそろそろジョウントが起きるはずです」
「ジョウント? ああ、あなたがたにおきる時間の跳躍ですね。でもあたしはそのあいだ数週間ふつうに暮らしているんですけどね」
「ネルさん、仕方がないよ。あたいたちはここの時代の住人じゃないからね。ただの日常を送っている時間ははしょられちまうのさ」
ゾーイがネルの背中に手をまわして、そう諭したがネルは不安そうに眉根をよせた。
「心細いですわ」
その瞬間、エヴァはあたりの風景がブーンとブレるのを感じた。
ジョウントだ——
ふっとあたりの場景が元に戻る。
気づくとエヴァたちは、狭い路地にいた。日が落ちて夜になっていたが、メンバーもおなじままだったので、そのまま数時間経って、日が暮れた、としか思えなかった。
ゾクッとするような冷気が肌をさす。
何日経ってるの——?
「すげー、寒いぞ!」
マリアが抗議の声をあげ、ゾーイやセイが服の前身ごろをかきあわせる。
エヴァはスピロに今がいつなのかを尋ねようとした。が、あまりの寒さに唇がかじかんで、とっさに声がでなかった。
そのとき、遠くからセイたちを呼ぶ声が聞こえた。
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「デュー刑事、なぜここが?」
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「スピロさんに、あなたがたに次に会えるのは、このスワローガーデンだって聞いてましたので、待っていたんです」
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「レクミアが殺されました」
デューがそう言った。
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