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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第275話 切り裂きジャックの正体
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手錠をかけられて、貸間長屋の出口からでてきた男は、がっしりとしたからだつきの中年男性だった。
セイと一緒にかけつけたスピロは、切り裂きジャックがあまりにふつうの顔だちをしていることに驚いた。
容疑者とされた、画家ウィリアム・シッカートは狂気を感じさせる目つきであったし、理髪師セヴェリン・クロソフスキー、のちの毒殺魔ジョージ・チャップマンは子供をして、不気味がられ、ポーランド人の理髪師アーロン・コズミンスキーは、マリアにイカれていると揶揄されていた。
だが、捕まった男は眼窩が落ちくぼんで、からだに比して痩せぎすの印象をうけるが、狂気や不気味さや異常性を感じさせない。
それどころか警官に捕まれて、おどおどとした目つきであたりをキョロキョロとしている。
とても世紀の連続殺人をおこした人物には見えない——
「あれが、切り裂きジャックなのかい。とてもそうは見えないけど」
セイが自分とたがわぬインプレッションを口にした。
「セイ様。現実のシリアル・キラーはそんなものです。33人を殺したジョン・ゲイシーは、子供たちのためにパーティーを開くような町の名士でしたし、30人以上を殺した手ッド・バンディは、高学歴でハンサムな人気者でした」
「彼はなにものなんだい?」
「あの男の名はチャールズ・アレン・レクミア。切り裂きジャック事件の第一の犠牲者、メアリー・アン・ニコルズ嬢の第一発見者です」
調書を手にしたウォルター・デュー刑事が、レクミアの前に進み出た。その隣にはゾーイとマリアがいる。
「チャールズ・アレン・レクミアだな」
「は、はい……」
「おまえを切り裂きジャック事件の犯人として逮捕する」
「は? なにを?」
「おまえはあの部屋のメアリー・ケリー嬢を殺害目的で訪れた。そうだな」
「ち、ちがいます。わたしはメアリーに渡して欲しいというのを頼まれて……」
「こんな真夜中にかね」
「だって、わたしは仕事にいくところなんです。ここはその通り道なんで、そのついでに……」
「デュー刑事」
ひとりの警察官が声をあげた。
「この男はこんなものを持っていました」
その警官がうやうやしくデューの前にさしだした。
それは血だらけのレザー・エプロンだった。
そしてその上に大きな肉切り包丁が乗っていた。
セイと一緒にかけつけたスピロは、切り裂きジャックがあまりにふつうの顔だちをしていることに驚いた。
容疑者とされた、画家ウィリアム・シッカートは狂気を感じさせる目つきであったし、理髪師セヴェリン・クロソフスキー、のちの毒殺魔ジョージ・チャップマンは子供をして、不気味がられ、ポーランド人の理髪師アーロン・コズミンスキーは、マリアにイカれていると揶揄されていた。
だが、捕まった男は眼窩が落ちくぼんで、からだに比して痩せぎすの印象をうけるが、狂気や不気味さや異常性を感じさせない。
それどころか警官に捕まれて、おどおどとした目つきであたりをキョロキョロとしている。
とても世紀の連続殺人をおこした人物には見えない——
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「あの男の名はチャールズ・アレン・レクミア。切り裂きジャック事件の第一の犠牲者、メアリー・アン・ニコルズ嬢の第一発見者です」
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「チャールズ・アレン・レクミアだな」
「は、はい……」
「おまえを切り裂きジャック事件の犯人として逮捕する」
「は? なにを?」
「おまえはあの部屋のメアリー・ケリー嬢を殺害目的で訪れた。そうだな」
「ち、ちがいます。わたしはメアリーに渡して欲しいというのを頼まれて……」
「こんな真夜中にかね」
「だって、わたしは仕事にいくところなんです。ここはその通り道なんで、そのついでに……」
「デュー刑事」
ひとりの警察官が声をあげた。
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そしてその上に大きな肉切り包丁が乗っていた。
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