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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第272話 あれが切り裂きジャックか?
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そのとき、コナン・ドイルが声をあげた。
「も、もうひとりでてきますよ」
暗くてよく見えなかったが、男はボアのついた襟つきの長い黒コートに、黒いズボンを着て、黒いフェルト帽をかぶっていた。
年齢は30代なかばという感じで、濃い眉毛、濃い口髭でいる、浅黒い顔の男だった。
コートの下にはヴェストを着込み、ネクタイをきっちりと締めている。この時間、このイーストエンドという場所には、およそ不似合いな立派な格好だった。
「あれが切り裂きジャックか?」
マリアが訊くと、ゾーイが即座に否定した。
「いいや。たぶん、最後の犠牲者メアリ・ケリーと最後に一緒にいた人物、とされている御仁だろうね」
「じゃあ、切り裂きジャックじゃねぇか」
「ちょっとゾーイさん、大丈夫なんですか?。ケリーさん、もしかしたらもうなかで殺されてるんじゃないですか?」
「コナン・ドイルさん。あなたの言うことももっともだけどね、セイさんとお姉さまが外で見張ってるんだよ。そんなヘマしやしないよ」
「まぁ……たしかに…… でもセイさんもスピロさんもいったい全体なんだって、外を見張っているんです」
「そうだな。ピーターの証言で切り裂きジャックの正体はわかったンだろ?」
「はい。お姉さまは確信したと……」
「だったらなんでさっさと捕まえねぇんだ? もうアロケルのヤツはくたばったんだ」
「お姉さまがまだやり残しがあるかもしれないって」
「やり残し?」
マリアとコナン・ドイルが同時に言った。
------------------------------------------------------------
男が二階建ての貸間長屋の屋根の上で、祈るような仕草をしていた。
彼の視線は昇ってこようとする日の光のほうにむけられている。男が広げた両手を上から下へバサッと降ろした。
とたんに、あたりが漆黒の闇に閉ざされた。
男は満足そうに口元をゆるめた。
「ほんとうにもう一体いるとは思いいたりませんでした」
その一連の動作を隣の棟から眺めていたスピロが感嘆した口調で言った。
セイはスピロの腰に手をあてがうと、ポーンと跳躍して、男がいる屋根の上に飛び移った。
帽子を目深にかぶって顔を隠そうとした。
スピロが、してやられた、とばかりに軽くため息をついて言った。
「まさか生きてらっしゃったとはね……」
「エイブラハム・ブラム・ストーカー様、いえ、ブラム・ストーカー様を乗っ取った悪魔様」
「も、もうひとりでてきますよ」
暗くてよく見えなかったが、男はボアのついた襟つきの長い黒コートに、黒いズボンを着て、黒いフェルト帽をかぶっていた。
年齢は30代なかばという感じで、濃い眉毛、濃い口髭でいる、浅黒い顔の男だった。
コートの下にはヴェストを着込み、ネクタイをきっちりと締めている。この時間、このイーストエンドという場所には、およそ不似合いな立派な格好だった。
「あれが切り裂きジャックか?」
マリアが訊くと、ゾーイが即座に否定した。
「いいや。たぶん、最後の犠牲者メアリ・ケリーと最後に一緒にいた人物、とされている御仁だろうね」
「じゃあ、切り裂きジャックじゃねぇか」
「ちょっとゾーイさん、大丈夫なんですか?。ケリーさん、もしかしたらもうなかで殺されてるんじゃないですか?」
「コナン・ドイルさん。あなたの言うことももっともだけどね、セイさんとお姉さまが外で見張ってるんだよ。そんなヘマしやしないよ」
「まぁ……たしかに…… でもセイさんもスピロさんもいったい全体なんだって、外を見張っているんです」
「そうだな。ピーターの証言で切り裂きジャックの正体はわかったンだろ?」
「はい。お姉さまは確信したと……」
「だったらなんでさっさと捕まえねぇんだ? もうアロケルのヤツはくたばったんだ」
「お姉さまがまだやり残しがあるかもしれないって」
「やり残し?」
マリアとコナン・ドイルが同時に言った。
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男が二階建ての貸間長屋の屋根の上で、祈るような仕草をしていた。
彼の視線は昇ってこようとする日の光のほうにむけられている。男が広げた両手を上から下へバサッと降ろした。
とたんに、あたりが漆黒の闇に閉ざされた。
男は満足そうに口元をゆるめた。
「ほんとうにもう一体いるとは思いいたりませんでした」
その一連の動作を隣の棟から眺めていたスピロが感嘆した口調で言った。
セイはスピロの腰に手をあてがうと、ポーンと跳躍して、男がいる屋根の上に飛び移った。
帽子を目深にかぶって顔を隠そうとした。
スピロが、してやられた、とばかりに軽くため息をついて言った。
「まさか生きてらっしゃったとはね……」
「エイブラハム・ブラム・ストーカー様、いえ、ブラム・ストーカー様を乗っ取った悪魔様」
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