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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第270話 悪魔アロケルの最後
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「いや、ホント、すごかった。とくにあのクモの、いや……プロビデンスの目の怪物、あれには一度してやられたからね」
「あ、あれ……ですか…… まぁ、あれは……」
「でもスピロの言うように、頭のいい悪魔は、策に溺れるんだよね」
「なにを言ってるのです?」
「ひとの知恵や努力を、あまく見過ぎなんだよ。それが三流悪魔だって、スピロは言ってたけど……」
「ユメミ・セイ。あなたはわたくしを褒めているのですか、けなしているのですか?」
「あんたとの戦いを総括してるだけだよ。これが最後のあいさつになるからね」
「最後のあいさつ?」
「アロケル、ぼくに付いてきてくれるかい」
セイはそう言いながら、上空に手をつきあげて、ついてくるように指示するジェスチャーを送った。
「なぜです。なぜ、わたくしめがあなたに従わねば、ならないんです?」
「だって、これ以上、ビッグベンもウエストミンスター宮殿も壊したくないからさ」
「な、なにを言ってるんです?」
ま、いいか……
セイは上にあげたままの指をぱちんとならした。
それが合図だった。
ゾーイがテレパシーで全員に指示を伝える。
夜のロンドンに光が走った。
放射状に居並んでいたトライポッドの数台から、レーザービームが放たれていた。アロケルの搭乗するトライポッドの頭部を、立て続けに直撃する。
ガコン!
金属音とともにトライポッドの体躯がゆられぐらつく。あわてて触手をのばして、ビッグベンにしがみついた。ちがう方角からの連続攻撃に、足下がさだまらない。
「な、なにがぁぁぁ」
「乗っ取ったのさ」
「の、の、乗っ取ったぁですって」
「うん、ほかのみんなはトライポッドに乗り込んでる。ぼくは……」
「ただの囮だ」
「な、何台、何台乗っ取られたの」
セイは指を折りながら、数えた。
「マリア、エヴァ、スピロ、ゾーイ、それにネルさん、ワイルドさん、そしてマシュー・バリーさん…… 7台だね」
「7台…… 嘘でしょ」
セイはアロケルが聞きのがすことがないように、片手を口元にそえてから叫んだ。
「アロケル。今の一撃であんたの周りの透明火星人の盾……」
「もう残ってないよ」
アロケルがあわてふためいて、コックピットのなかに潜り込むのがみえた。顔色こそ見えなかったが、完全に蒼ざめているに違いない。
トライポッドが動きだそうとしていた。
が、遅かった。
7箇所から放たれたレーザー光線が、同時にアロケルが搭乗するヘッド部分に見事にヒットした。
透明の盾をうしなった状態では、もうなんの抵抗もしようがなかった。
ドォォォォン
レーザーの光がヘッド部分にいくつもの穴をあけたかと思うと、すさまじい轟音をあげて大爆発をおこした。
傾いたトライポッドがビッグベンにぶつかった。その衝撃のせいで誤動作をおこしたのか、鐘の音が真夜中のロンドン中に響いた。
キーン・コーン・カーン・コーン。キーン・コーン・カーン・コーン。
日本の学校のチャイムの元となった鐘の音。
まさに終業のチャイムだった。
「あ、あれ……ですか…… まぁ、あれは……」
「でもスピロの言うように、頭のいい悪魔は、策に溺れるんだよね」
「なにを言ってるのです?」
「ひとの知恵や努力を、あまく見過ぎなんだよ。それが三流悪魔だって、スピロは言ってたけど……」
「ユメミ・セイ。あなたはわたくしを褒めているのですか、けなしているのですか?」
「あんたとの戦いを総括してるだけだよ。これが最後のあいさつになるからね」
「最後のあいさつ?」
「アロケル、ぼくに付いてきてくれるかい」
セイはそう言いながら、上空に手をつきあげて、ついてくるように指示するジェスチャーを送った。
「なぜです。なぜ、わたくしめがあなたに従わねば、ならないんです?」
「だって、これ以上、ビッグベンもウエストミンスター宮殿も壊したくないからさ」
「な、なにを言ってるんです?」
ま、いいか……
セイは上にあげたままの指をぱちんとならした。
それが合図だった。
ゾーイがテレパシーで全員に指示を伝える。
夜のロンドンに光が走った。
放射状に居並んでいたトライポッドの数台から、レーザービームが放たれていた。アロケルの搭乗するトライポッドの頭部を、立て続けに直撃する。
ガコン!
金属音とともにトライポッドの体躯がゆられぐらつく。あわてて触手をのばして、ビッグベンにしがみついた。ちがう方角からの連続攻撃に、足下がさだまらない。
「な、なにがぁぁぁ」
「乗っ取ったのさ」
「の、の、乗っ取ったぁですって」
「うん、ほかのみんなはトライポッドに乗り込んでる。ぼくは……」
「ただの囮だ」
「な、何台、何台乗っ取られたの」
セイは指を折りながら、数えた。
「マリア、エヴァ、スピロ、ゾーイ、それにネルさん、ワイルドさん、そしてマシュー・バリーさん…… 7台だね」
「7台…… 嘘でしょ」
セイはアロケルが聞きのがすことがないように、片手を口元にそえてから叫んだ。
「アロケル。今の一撃であんたの周りの透明火星人の盾……」
「もう残ってないよ」
アロケルがあわてふためいて、コックピットのなかに潜り込むのがみえた。顔色こそ見えなかったが、完全に蒼ざめているに違いない。
トライポッドが動きだそうとしていた。
が、遅かった。
7箇所から放たれたレーザー光線が、同時にアロケルが搭乗するヘッド部分に見事にヒットした。
透明の盾をうしなった状態では、もうなんの抵抗もしようがなかった。
ドォォォォン
レーザーの光がヘッド部分にいくつもの穴をあけたかと思うと、すさまじい轟音をあげて大爆発をおこした。
傾いたトライポッドがビッグベンにぶつかった。その衝撃のせいで誤動作をおこしたのか、鐘の音が真夜中のロンドン中に響いた。
キーン・コーン・カーン・コーン。キーン・コーン・カーン・コーン。
日本の学校のチャイムの元となった鐘の音。
まさに終業のチャイムだった。
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