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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第266話 そらを飛んでるみたい
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はじかれたレーザー光線がビッグベンの中腹にあたり、爆発をひきおこした。下からまきあがった爆風が、ピストルバイクをはげしくあおる。
マリアが後方へからだをひっぱられ、バイクからころげ落ちた。セイが手をのばしてつかまえる。続けてスピロもバイクのシートからはがされるようにして、背後へとばされた。
その手を今度はマリアがつかむ。
エヴァは自分のうしろのそんな状況にかまっていなかった。そのままフルスロットルでピストルバイクを走らせた。
エヴァのバイクがビッグベンの時計盤の前を横切っていく。
そのバイクのうしろに、セイ、マリア、スピロが数珠つなぎでぶらさがっている。
文字盤からの光に照らされて、そのからだはまるで空を飛んでいるようにみえた。
「そらを飛んでるみたい」
ネルがうっとりとした口調で言った。
「なんと幻想的なんだ」
ネルにつられるようにして、マシュー・バリーがつぶやいた。するとワイルドがふいに手をうった。
「ジェームス。きみが執筆予定の『ピーター・パン』の世界にぴったりではないか」
「ピーター・パンの世界に?」
「ああ。そうだとも。ネバーランドから子供たちを迎えにきたピーター・パンは、子供部屋から空を飛んで、夜のビッグベンの時計盤の前を、いまのように横切っていくんだよ。じつに印象的なシーンになるではないか」
そう提案されてマシュー・バリーは時計盤を見つめた。が、すぐに首をよこにふった。
「いや、オスカー、やめておくよ。いいアイディアだが、そんな印象的なシーンをいれては、ネバーランドの魅力が薄れそうだ」
「そうか…… いいシーンだと思ったのだけどね」
「ああ、たしかにいいシーンだね。まったくロマンティストのきみらしいアイディアだよ」
バイクから振り落とされそうになっている三人を、遠隔で支えるのに必死で、ゾーイは彼らの語らいに耳を傾けている余裕はなかったが、なんとか全員が建物の影に逃げ込んだのをみて、ひと息ついてから言った。
「マシュー・バリーさん。おまえさんが書いても、書かなくても、未来じゃあ、ピーターパンとウエンディたちは、ワイルドさんの言うように、ビッグベンの文字盤の前を飛んでくことになってるよ」
マシュー・バリーは目をまるくしたが、ワイルドはしたり顔でにやついた。
マリアが後方へからだをひっぱられ、バイクからころげ落ちた。セイが手をのばしてつかまえる。続けてスピロもバイクのシートからはがされるようにして、背後へとばされた。
その手を今度はマリアがつかむ。
エヴァは自分のうしろのそんな状況にかまっていなかった。そのままフルスロットルでピストルバイクを走らせた。
エヴァのバイクがビッグベンの時計盤の前を横切っていく。
そのバイクのうしろに、セイ、マリア、スピロが数珠つなぎでぶらさがっている。
文字盤からの光に照らされて、そのからだはまるで空を飛んでいるようにみえた。
「そらを飛んでるみたい」
ネルがうっとりとした口調で言った。
「なんと幻想的なんだ」
ネルにつられるようにして、マシュー・バリーがつぶやいた。するとワイルドがふいに手をうった。
「ジェームス。きみが執筆予定の『ピーター・パン』の世界にぴったりではないか」
「ピーター・パンの世界に?」
「ああ。そうだとも。ネバーランドから子供たちを迎えにきたピーター・パンは、子供部屋から空を飛んで、夜のビッグベンの時計盤の前を、いまのように横切っていくんだよ。じつに印象的なシーンになるではないか」
そう提案されてマシュー・バリーは時計盤を見つめた。が、すぐに首をよこにふった。
「いや、オスカー、やめておくよ。いいアイディアだが、そんな印象的なシーンをいれては、ネバーランドの魅力が薄れそうだ」
「そうか…… いいシーンだと思ったのだけどね」
「ああ、たしかにいいシーンだね。まったくロマンティストのきみらしいアイディアだよ」
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「マシュー・バリーさん。おまえさんが書いても、書かなくても、未来じゃあ、ピーターパンとウエンディたちは、ワイルドさんの言うように、ビッグベンの文字盤の前を飛んでくことになってるよ」
マシュー・バリーは目をまるくしたが、ワイルドはしたり顔でにやついた。
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