737 / 935
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第261話 弱い悪魔っていうヤツは....
しおりを挟む
バッキンガム宮殿にむかってる——
セイには確信に近いものがあった。
「セイ様、悪魔というのは、人間世界の権威というのに弱いのです」
スピロがそう言ったことがある。
「だから歴史上の有名人になり代わろうとするし、王や貴族のような力のあるものの、威信を借りようとするんです」
「だけど、ハマリエルやウエルキエルは、部隊の指揮官や王の家臣に取り憑いていたよ」
「そう。力がほんとうにある悪魔は、自分の素性を悟られないように、まずまず力があるが、絶対的ではない、そういう人物になりすますのです。力がない悪魔と一緒にしては危険です」
「は、弱い悪魔ってぇのは、人間とおんなじで、ただの俗物じゃねぇか」
マリアが鼻で笑った。
「ええ。当然です。悪魔は人間のダークサイドが具現化した存在なのですから」
セイはトライポッドを駆逐しながら、進んでいては先回りできないと判断した。
『ゾーイ。聞こえてるかい?』
セイは小声で話しかけた。ゾーイはすぐにこちらの思考をキャッチした。
『セイさん、もちろんさ』
『トライポッド退治はあとまわしにすることにしたよ。きりがないからね。それより先にバッキンガム宮殿にさきまわりするほうを優先したい』
『ああ、そうだね。こっちは今、ワイルドさんとマシュー・バリーさんと合流したよ。トライポッドの襲撃から逃げてきたってさ』
『そうか。じゃあ、ぼくはすこし急ぐから、あとから追いかけてきて。くれぐれもネルさんから目を離さないようにして』
『セイさん、あんまり先行しすぎないようにしておくれ。ネルさんから離れすぎるとさ』
『わかってる。だけどあんなに遠くに見えてるマリアが、うまくやってる。それくらいの距離なら大丈夫だ』
『マリアさんとエヴァさんもそっちに急ぐように言っておくよ』
『あぁ、ありがとう。お願いする。たぶん、マリアもこいつらを倒すのに、飽き飽きしている頃だろう』
------------------------------------------------------------
ゾーイからの連絡にマリアはいちもにもなく賛成した。
「エヴァ、このクソロボットどもは置き去りにして、悪魔をぶっ倒しにいくぞ」
「了解しましたわ」
エヴァはスロットルをふかした。
ウエストエンドの街並みをなめるように、エヴァは操縦した。道路は逃げまどうひとびとであふれかえっていたが、エヴァのバイクが頭の上を通り抜けると、その排気音にあわててからだを伏せていった。
あらたな攻撃にさらされた、と勘違いするのも無理はない。
「あれだ! エヴァ」
うしろから指をつきだしてマリアが叫んだ。
暗闇のなか、ひときわおおきなトライポッドが、ビッグベンのたもとを進行しているのがみえた。
いくつかある触手のうちのひとつが、なにかを握っている。
「ありゃ、スピロだな」
「そのようですね。まずはスピロさんからお助けしましょう」
「いいのか。お姫さまの救出は、王子様の仕事ってきまってるんだぜ」
「いいんですか、マリアさん。そんなこと言って」
「わたしたちも、お姫様ですよ」
「な、なんだよ……そ、そりゃ、そうだが……」
マリアがくちごもった。
「わたしは遠慮するつもりはないですわよ。かがりさんにも、ゾーイさんにも、スピロさんにも。もちろんマリアさん、あなたにもです」
「おい、おい、なにマジでカミングアウトしてンだ」
「カミングアウトなものですか。決意表明ですわ」
エヴァはぐっとスロットルをひねった。
目の前に悪魔が搭乗するトライポッドが迫る。
「さあ、マリアさん、悪魔退治のお時間です!」
セイには確信に近いものがあった。
「セイ様、悪魔というのは、人間世界の権威というのに弱いのです」
スピロがそう言ったことがある。
「だから歴史上の有名人になり代わろうとするし、王や貴族のような力のあるものの、威信を借りようとするんです」
「だけど、ハマリエルやウエルキエルは、部隊の指揮官や王の家臣に取り憑いていたよ」
「そう。力がほんとうにある悪魔は、自分の素性を悟られないように、まずまず力があるが、絶対的ではない、そういう人物になりすますのです。力がない悪魔と一緒にしては危険です」
「は、弱い悪魔ってぇのは、人間とおんなじで、ただの俗物じゃねぇか」
マリアが鼻で笑った。
「ええ。当然です。悪魔は人間のダークサイドが具現化した存在なのですから」
セイはトライポッドを駆逐しながら、進んでいては先回りできないと判断した。
『ゾーイ。聞こえてるかい?』
セイは小声で話しかけた。ゾーイはすぐにこちらの思考をキャッチした。
『セイさん、もちろんさ』
『トライポッド退治はあとまわしにすることにしたよ。きりがないからね。それより先にバッキンガム宮殿にさきまわりするほうを優先したい』
『ああ、そうだね。こっちは今、ワイルドさんとマシュー・バリーさんと合流したよ。トライポッドの襲撃から逃げてきたってさ』
『そうか。じゃあ、ぼくはすこし急ぐから、あとから追いかけてきて。くれぐれもネルさんから目を離さないようにして』
『セイさん、あんまり先行しすぎないようにしておくれ。ネルさんから離れすぎるとさ』
『わかってる。だけどあんなに遠くに見えてるマリアが、うまくやってる。それくらいの距離なら大丈夫だ』
『マリアさんとエヴァさんもそっちに急ぐように言っておくよ』
『あぁ、ありがとう。お願いする。たぶん、マリアもこいつらを倒すのに、飽き飽きしている頃だろう』
------------------------------------------------------------
ゾーイからの連絡にマリアはいちもにもなく賛成した。
「エヴァ、このクソロボットどもは置き去りにして、悪魔をぶっ倒しにいくぞ」
「了解しましたわ」
エヴァはスロットルをふかした。
ウエストエンドの街並みをなめるように、エヴァは操縦した。道路は逃げまどうひとびとであふれかえっていたが、エヴァのバイクが頭の上を通り抜けると、その排気音にあわててからだを伏せていった。
あらたな攻撃にさらされた、と勘違いするのも無理はない。
「あれだ! エヴァ」
うしろから指をつきだしてマリアが叫んだ。
暗闇のなか、ひときわおおきなトライポッドが、ビッグベンのたもとを進行しているのがみえた。
いくつかある触手のうちのひとつが、なにかを握っている。
「ありゃ、スピロだな」
「そのようですね。まずはスピロさんからお助けしましょう」
「いいのか。お姫さまの救出は、王子様の仕事ってきまってるんだぜ」
「いいんですか、マリアさん。そんなこと言って」
「わたしたちも、お姫様ですよ」
「な、なんだよ……そ、そりゃ、そうだが……」
マリアがくちごもった。
「わたしは遠慮するつもりはないですわよ。かがりさんにも、ゾーイさんにも、スピロさんにも。もちろんマリアさん、あなたにもです」
「おい、おい、なにマジでカミングアウトしてンだ」
「カミングアウトなものですか。決意表明ですわ」
エヴァはぐっとスロットルをひねった。
目の前に悪魔が搭乗するトライポッドが迫る。
「さあ、マリアさん、悪魔退治のお時間です!」
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。


セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる