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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第259話 ゾーイ。悪魔はどこへむかってるんだ?
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マリアは疾走しながら、目の前にあるトライポッドの足を叩き切った。
『わかった。オレがいく』
『行くって……言ったって、そっちのほうが遠いんじゃないかい』
『は、ゾーイ。オレの足をバカにすんなよ。このバケモンなんか相手にせずに向えば、すぐに追いつくぜ』
三本の足の一本がボキリと折れて、そのままトライポットがゆっくりと傾いでいく。その脇を走り抜けていくと、背後でドーンという音とともにトライポットが倒れたのがわかった。路面にまるみを帯びた頭部がぶつかると、ボンというくぐもった音がして、なかから黒い煙があがりはじめた。
『これだから、ど派手な花火が打ち上がンねぇんだな』
『おい、セイはどんな戦い方をしてる?』
『セイさんかい? セイさんはトライポットの頭の上までジャンプして、何本もの刀で串刺しにしてるよ』
『頭部に? ゾーイ、おまえが手助けしてンだな』
『そうだね セイさんを空に跳ねあげる手助けはしてるさ』
『くーー その差かぁ おい、ゾーイ。こっちこい。さっきみたいにオレを空へはね上げろ』
『いや、マリアさん、無茶を言われても困るよ。あたいはネルさんと一緒なんだよ』
そのとき、上空から声が聞こえた。
「マリアさん! もうトライポットを倒すの、飽きましたの?」
みなくてもわかった。エヴァだ。
『ゾーイ。こっちにも援軍がきた。セイに言っとけ。そっちとこっちで同時に悪魔の乗った旗艦を挟み撃ちだってな』
『ああ、伝えとくよ』
『ところで、ゾーイ。悪魔はどこへむかってるんだ?』
『お姉さまが言うには……バッキンガム宮殿っていう話だよ』
『ヴィクトリア女王を人質にでもとられたらやっかいだな』
マリアは満面の笑みで叫んだ。
『その手前で潰そうぜ!』
------------------------------------------------------------
夜陰をさいて出現してくるトライポッドを横目で見ながら、ゾーイはネルの手をひきながら小走りで進んでいた。トライポッドからは数十メートル離れた、安全な道を選んでいたが、なるべくセイに遅れないようにしていた。
「ゾーイさん、あそこ!」
ネルが前の方を指さした。
ゾーイがそちらに目をむけると、おびただしいひとたちが街角にいるのがみえた。みるみる人の数が増えはじめ、自分たちの進路をふさぎはじめる。
「前がつっかえてるのかい」
「トライポッドが迫ってきたので、みなあわてて逃げ出そうとしてるんですわ」
いっこうに列が前に進まないのに苛立ったひとたちが、怒号とも悲鳴ともつかない声をあげて、あたりはたちまち騒然としていた。
すぐ近くでトライポッドが大爆発して、空気を震わせている状況では、パニックに陥るな、というのが無理なことだ。
『わかった。オレがいく』
『行くって……言ったって、そっちのほうが遠いんじゃないかい』
『は、ゾーイ。オレの足をバカにすんなよ。このバケモンなんか相手にせずに向えば、すぐに追いつくぜ』
三本の足の一本がボキリと折れて、そのままトライポットがゆっくりと傾いでいく。その脇を走り抜けていくと、背後でドーンという音とともにトライポットが倒れたのがわかった。路面にまるみを帯びた頭部がぶつかると、ボンというくぐもった音がして、なかから黒い煙があがりはじめた。
『これだから、ど派手な花火が打ち上がンねぇんだな』
『おい、セイはどんな戦い方をしてる?』
『セイさんかい? セイさんはトライポットの頭の上までジャンプして、何本もの刀で串刺しにしてるよ』
『頭部に? ゾーイ、おまえが手助けしてンだな』
『そうだね セイさんを空に跳ねあげる手助けはしてるさ』
『くーー その差かぁ おい、ゾーイ。こっちこい。さっきみたいにオレを空へはね上げろ』
『いや、マリアさん、無茶を言われても困るよ。あたいはネルさんと一緒なんだよ』
そのとき、上空から声が聞こえた。
「マリアさん! もうトライポットを倒すの、飽きましたの?」
みなくてもわかった。エヴァだ。
『ゾーイ。こっちにも援軍がきた。セイに言っとけ。そっちとこっちで同時に悪魔の乗った旗艦を挟み撃ちだってな』
『ああ、伝えとくよ』
『ところで、ゾーイ。悪魔はどこへむかってるんだ?』
『お姉さまが言うには……バッキンガム宮殿っていう話だよ』
『ヴィクトリア女王を人質にでもとられたらやっかいだな』
マリアは満面の笑みで叫んだ。
『その手前で潰そうぜ!』
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「ゾーイさん、あそこ!」
ネルが前の方を指さした。
ゾーイがそちらに目をむけると、おびただしいひとたちが街角にいるのがみえた。みるみる人の数が増えはじめ、自分たちの進路をふさぎはじめる。
「前がつっかえてるのかい」
「トライポッドが迫ってきたので、みなあわてて逃げ出そうとしてるんですわ」
いっこうに列が前に進まないのに苛立ったひとたちが、怒号とも悲鳴ともつかない声をあげて、あたりはたちまち騒然としていた。
すぐ近くでトライポッドが大爆発して、空気を震わせている状況では、パニックに陥るな、というのが無理なことだ。
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