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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第250話 一瞬だけだが切り裂きジャックの姿を見た
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「ええ、そうね。あなたが警告してくれてなければ、直撃をくらってましたわ」
エヴァは空中でとまったままの状態で、ゾーイのほうへ顔をむけた。
ゾーイは小走りでエヴァのほうへむかってくると、エヴァと地面の隙間に両腕を差し入れた。と、そのとたん重力が戻った。エヴァはゾーイの腕に抱きかかえられるようにして、地面へ降りたった。
「ゾーイ。感謝しますわ。痛い目にあわずにすみました」
「気にするこたぁ、ないさ。それよりバイクを消されちまったから、むこうへ行けなくなっちまったんじゃないかい」
エヴァはかるく首を傾げてみせてから、すぐに手を路面にむけた。
「ご心配なく。セイさんの刀とおなじで、一時的に消えただけです」
地面におおきな黒い穴があいて、そこからバイクがせり出してきた。
「未練の力がなくならい限り、無限に作りだせますわ」
エヴァはバイクにまたがると、ゾーイに言った、
「あなたも乗ってください」
だが、ゾーイは壁のほうを見ながら、ボソリと言った。
「いや、もうその必要はなくなったみたいだねぇ」
エヴァがゾーイが見ている方向へ目をむけると、立ちはだかっていたはずの壁がなくなっていた。また透明人間になったのか、と思ったが、雰囲気がぜんぜんちがった。そこになにかがいる、という感覚はなく、あきらかに存在そのものが消えうせていた。
「壁がなくなった……」
「くそぅ! ダメだったかぁ!」
背後からセイの唾棄するような声が聞こえた。
「あそこに人が倒れています」
次に聞こえてきたのは、モリ・リンタロウの声だった。コナン・ドイルも続く。
「ありゃ、おんなのひとじゃないですかぁ。まさか切り裂きジャックってことですか?」
バイクにまたがったままのエヴァの横をセイたちが駆けて行く。それを呆けたままエヴァは見送った。
「エヴァさん、残念でしかたがないねぇ」
ゾーイがエヴァの背中を軽く叩いて言った。
「もうすこしだったのにさ」
「ええ…… もうすこしでした」
エヴァはうつろな目で、倒れている人に駆け寄っていったセイたちを見ながら言った。
「ほんのすこしで、切り裂きジャックを捕まえられたんです」
「ああ…… わかってるさ」
そう言いながら、ゆっくりとエヴァから離れて、セイたちのほうへ歩いていった。
エヴァは納得がいかなかった。
一瞬だけだが、切り裂きジャックの姿を見たのだ。性別も身長も体重も、暗くてわからなかったが、その非道な行いの一端をたしかにかいま見た。あれは倒れている被害者に、ナイフをふるっている姿だった。
まだ近くにいる——
エヴァは空中でとまったままの状態で、ゾーイのほうへ顔をむけた。
ゾーイは小走りでエヴァのほうへむかってくると、エヴァと地面の隙間に両腕を差し入れた。と、そのとたん重力が戻った。エヴァはゾーイの腕に抱きかかえられるようにして、地面へ降りたった。
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「気にするこたぁ、ないさ。それよりバイクを消されちまったから、むこうへ行けなくなっちまったんじゃないかい」
エヴァはかるく首を傾げてみせてから、すぐに手を路面にむけた。
「ご心配なく。セイさんの刀とおなじで、一時的に消えただけです」
地面におおきな黒い穴があいて、そこからバイクがせり出してきた。
「未練の力がなくならい限り、無限に作りだせますわ」
エヴァはバイクにまたがると、ゾーイに言った、
「あなたも乗ってください」
だが、ゾーイは壁のほうを見ながら、ボソリと言った。
「いや、もうその必要はなくなったみたいだねぇ」
エヴァがゾーイが見ている方向へ目をむけると、立ちはだかっていたはずの壁がなくなっていた。また透明人間になったのか、と思ったが、雰囲気がぜんぜんちがった。そこになにかがいる、という感覚はなく、あきらかに存在そのものが消えうせていた。
「壁がなくなった……」
「くそぅ! ダメだったかぁ!」
背後からセイの唾棄するような声が聞こえた。
「あそこに人が倒れています」
次に聞こえてきたのは、モリ・リンタロウの声だった。コナン・ドイルも続く。
「ありゃ、おんなのひとじゃないですかぁ。まさか切り裂きジャックってことですか?」
バイクにまたがったままのエヴァの横をセイたちが駆けて行く。それを呆けたままエヴァは見送った。
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ゾーイがエヴァの背中を軽く叩いて言った。
「もうすこしだったのにさ」
「ええ…… もうすこしでした」
エヴァはうつろな目で、倒れている人に駆け寄っていったセイたちを見ながら言った。
「ほんのすこしで、切り裂きジャックを捕まえられたんです」
「ああ…… わかってるさ」
そう言いながら、ゆっくりとエヴァから離れて、セイたちのほうへ歩いていった。
エヴァは納得がいかなかった。
一瞬だけだが、切り裂きジャックの姿を見たのだ。性別も身長も体重も、暗くてわからなかったが、その非道な行いの一端をたしかにかいま見た。あれは倒れている被害者に、ナイフをふるっている姿だった。
まだ近くにいる——
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