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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第238話 トライポッド出現!!
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夜の帳のなかに、ぼんやりと光が浮かんでいた。
距離はあるというのに、おもわず見あげるほどの高さに、いくつもの光がずらりと横並びになっている。
「なんだ、ありゃ?」
「霧にけぶってて見えにくいですね」
「な、なんであんな上空に、光があるってぇんですぅ。あたしゃ、はじめて見ましたよ。あんなの」
だがゾーイにはそれがなんなのかわかっていた。はっきり見えるわけではなかったが、自分がもつ未練の力の応用で、ほかのメンバーより詳細に見ることができていた。
トライポッド 100年前のイラスト
あきらかに硬質な機械でありながら、なめらかな曲線のフォルムは、まるでクラゲのようだった。おおきな傘そのものの頭部は、その裏に武骨な機械部分がむきだしになっていたが、それでも不気味な生物を思わせた。頭部のいたるところには、ライトが眼のように散在し、四方に強い光を一直線に投げかけている。
そのおおきな頭部からは、触手を容易に想像させる管が何本も生えていて、のたくるような動きをしていた。そして、数十メートルもある三本の脚が、その頭部を直接支えていた。
ぶぅぅぅぅぅぅん……
だれもが、いや、生きとし生けるものであればなんだって、不安を募らせるであろう、不気味な波長の音が鳴り続けていた。それは耳で聞こえているというより、からだのあらゆる器官を、波動で直接揺らされて、鳴っているような感じだった。
「な、なんでしょうか? あれは?」
リンタロウはすでに胸騒ぎを感じているらしかった。
「あれは『トライポッド』。ウエルズさんが創造した火星人の兵器だよ」
「か、か、火星人ンンン…… そ、そんなモンがほ、ほんとうにいるんですかぁ」
「安心しておくれ、コナン・ドイルさん。火星には生き物なんかいやしないさぁ。あくまでもウエルズさんの創造物だよ」
「は、悪魔のヤロウが、ウエルズの頭ンなかの兵器を具現化したっていうわけか」
「ああ。マリアさん。どうやらそのようだよ」
「おもしろくねぇな」
「なにがかい?」
「あんなにでけぇンじゃあ、叩き落とせねぇだろうがぁ」
マリアがゾーイを睨みつけた。
「おい、ゾーイ。おまえ。オレをあのトライポッドってヤツの頭の上まで飛ばせるか?」
「ちょ、ちょっと待ってくれよぉ。ありゃ、どうみても3、40メートルはありそうだよ。」
「なんだよ。できねぇのかよ。エヴァはバイクごと、オレを持ちあげきれンぞ」
ゾーイはため息をついた。
最初から自分に選択肢がない問いかけをされるのは、なかなか馴れない。姉スピロなら、そうしろ、と命令する。そうなっていないのは、まだ自分にそれだけの信頼がないのかもしれない。
「マリアさん。すまないけどね。そういうときは、あそこまで持ちあげてくれって、ストレートに言ってくんないかねぇ」
「そう命令したら、できんのか!」
「できるできないじゃないよ。そう言われたら、ヤルしかないだろ」
「わかった……」
マリアが満足そうに微笑んで言った。
「んじゃあ、ゾーイ。オレをあのトライポッドの頭の上まで持ちあげろ!」
距離はあるというのに、おもわず見あげるほどの高さに、いくつもの光がずらりと横並びになっている。
「なんだ、ありゃ?」
「霧にけぶってて見えにくいですね」
「な、なんであんな上空に、光があるってぇんですぅ。あたしゃ、はじめて見ましたよ。あんなの」
だがゾーイにはそれがなんなのかわかっていた。はっきり見えるわけではなかったが、自分がもつ未練の力の応用で、ほかのメンバーより詳細に見ることができていた。
トライポッド 100年前のイラスト
あきらかに硬質な機械でありながら、なめらかな曲線のフォルムは、まるでクラゲのようだった。おおきな傘そのものの頭部は、その裏に武骨な機械部分がむきだしになっていたが、それでも不気味な生物を思わせた。頭部のいたるところには、ライトが眼のように散在し、四方に強い光を一直線に投げかけている。
そのおおきな頭部からは、触手を容易に想像させる管が何本も生えていて、のたくるような動きをしていた。そして、数十メートルもある三本の脚が、その頭部を直接支えていた。
ぶぅぅぅぅぅぅん……
だれもが、いや、生きとし生けるものであればなんだって、不安を募らせるであろう、不気味な波長の音が鳴り続けていた。それは耳で聞こえているというより、からだのあらゆる器官を、波動で直接揺らされて、鳴っているような感じだった。
「な、なんでしょうか? あれは?」
リンタロウはすでに胸騒ぎを感じているらしかった。
「あれは『トライポッド』。ウエルズさんが創造した火星人の兵器だよ」
「か、か、火星人ンンン…… そ、そんなモンがほ、ほんとうにいるんですかぁ」
「安心しておくれ、コナン・ドイルさん。火星には生き物なんかいやしないさぁ。あくまでもウエルズさんの創造物だよ」
「は、悪魔のヤロウが、ウエルズの頭ンなかの兵器を具現化したっていうわけか」
「ああ。マリアさん。どうやらそのようだよ」
「おもしろくねぇな」
「なにがかい?」
「あんなにでけぇンじゃあ、叩き落とせねぇだろうがぁ」
マリアがゾーイを睨みつけた。
「おい、ゾーイ。おまえ。オレをあのトライポッドってヤツの頭の上まで飛ばせるか?」
「ちょ、ちょっと待ってくれよぉ。ありゃ、どうみても3、40メートルはありそうだよ。」
「なんだよ。できねぇのかよ。エヴァはバイクごと、オレを持ちあげきれンぞ」
ゾーイはため息をついた。
最初から自分に選択肢がない問いかけをされるのは、なかなか馴れない。姉スピロなら、そうしろ、と命令する。そうなっていないのは、まだ自分にそれだけの信頼がないのかもしれない。
「マリアさん。すまないけどね。そういうときは、あそこまで持ちあげてくれって、ストレートに言ってくんないかねぇ」
「そう命令したら、できんのか!」
「できるできないじゃないよ。そう言われたら、ヤルしかないだろ」
「わかった……」
マリアが満足そうに微笑んで言った。
「んじゃあ、ゾーイ。オレをあのトライポッドの頭の上まで持ちあげろ!」
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