ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜

多比良栄一

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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜

第237話 こんなバケモン相手にしてても仕方がない

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「おい、セイたち、次にむかってるぞ!」
 はるかかなたの上空に光の玉があがって、あたりを照らし出したのを目撃して、マリアが忌々しそうに言った。

「たしかに。あそこはもうウエストエンドですからね」
 リンタロウが手でひさしをつくって、光の方角を見ていた。
「えーー、どーいうことです? あたしたちにこんな怪物の相手させて、どっか行っちまうなんて、ひどかないですか?」
 コナン・ドイルが口を尖らせる。

「お姉さまたちがウエストエンドに向った、ってこたぁ、第三の事件も防げなかったってことだねぇ」
 ゾーイはあたりを取り巻きはじめた獣人を威嚇しながら言った。
「ああ、そういうことになるな」
「ーーってこたぁ、あたしたち、こんなとこで、こんなバケモン相手にしてても仕方がないってことでしょ」
「そうですね。アーサーの言う通りですよ、マリアさん。小生たちも移動しましょう」

「おまえら、オレに続け! オレが道を切り開く!」
 マリアはそう言うなり、ウエストエンド方向にむかう路地のほうへ走りはじめた。目の前に立ちふさがった獣人を、横に一閃して叩き切る。
「ちょ、ちょっとぉ、マリアさん。やることが性急すぎやしません?」
 コナン・ドイルは文句を言ったが、マリアのうしろに続くリンタロウの姿をみて、あわてて追いかけようとした。が、足がもつれてよろめいた。ゾーイはコナン・ドイルの腰に手をまわして、ひきたてた。

「あ、ゾーイさん。すみません」
「コナン・ドイルさん。しっかりしておくれよ」
 ゾーイはコナン・ドイルの背中をポンポンと叩いて、走りはじめた。

 なぜ、ウエストエンドに移動するというのに、自分に連絡がなかったのだろうか?

 走りながらゾーイは考えた。

 いつもなら第三の殺人が防げなかった時点で、テレパシーを通じてこちらに連絡してくるはずだ。よほど切迫した状況にあったのだろうか?
 いや、もしほんとうにそうであれば、助けを求めてきただろうし、むしろ先にウエストエンドに向うように、と指示したはずだ。

 なにか迷っている?
 それともそういう単純な指示すら忘れるほど、なにか考え込むようなことが起きた?

 ゾーイは走り込んでくる獣人たちをはね飛ばした。マリアは先陣を切って突き進んでいたが、全部倒せるわけでもなく、討ち漏らした獣人がわらわらと襲ってくる。2ブロックほど進んだところで、ようやく獣人たちの群れが切れてきた。

「マリアさん。もう大丈夫そうだよ」
 ゾーイが声をかけると、コナン・ドイルも息も絶え絶えの声で同調した。
「そ……そうです……よ。もうだい……じょうぶ……です。スピード、ゆるめて……ください」
 マリアは大剣をビュンとふって、刃についた血をとばすと、背中の鞘に剣を収めた。

「ああ、そうだな。もの足りねぇが、もう大丈夫そうだ」
「ですが、セイさんたちのいるところまでは、まだけっこうありますよ。急がないと……」
 リンタロウがよどみなく言った。コナン・ドイルとちがって息一つ切れてない。

 さすが『武術』を修得しているだけある

 ゾーイは感心した。

「ん、まぁそうだな。邪魔がねぇなら、全員揃えばなんとか……」
 マリアの顔を光が横切った。サーチライトで照らされたような光——

 なに?

 ゾーイは光の方角、テームズ川方向へふりむいた。
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