ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜

多比良栄一

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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜

第234話 あなたが悪魔ですよね

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「つじつまがあってますからね」

 スピロが皮肉めいた口調で言ったことに、セイはおどろいた。こういう口調をするときは、なにか確信めいたものがあるときだけだ。スピロがなにかをしかけるつもりだとセイは身構えた。

「つじつまは合ってる?」
 アバーラインは怪訝そうな顔をスピロにむけた。

「ええ。切り裂きジャックがキャサリン・エドウズ嬢を殺害するのを、わたくしたちに邪魔されないように現われたにしては、説得力のある登場理由です」
「な、なにをおっしゃってるのかな。スピロさん。わたくしめには……」

「最初からわかっていたのですよ。アバーライン様……」


「あなたが悪魔だってことをね」

 
 エヴァとネルは唖然として目を見開いていたが、セイはすでに剣を身構えていた。いつでも斬撃できる体勢。その動きを横目でみていたスピロが、手を横にだして制止した。
「セイ様、この程度の悪魔、あなたならいつでも倒せます」

 スピロがアバーラインのほうへ一歩進みでた。
「なぜ、わかったか? 不思議に思っていますか?」
「い、いえ…… それよりスピロさん、あなたがなぜわたくしめを悪魔だと言うのか、まったく心当たりもないですし、意味がわかりません。これでもこの切り裂きジャック事件の主任刑事ですよ」
「うまい選択でした。事件に絶対にかかわる人物ですし、わたくしたちを見張っていてもなんの違和感もない。わたくしたちがワイルド様のパーティーに参加して、ロンドンを離れたときも、絶妙のタイミングでマーサ・タブラム嬢の事件をしかけて、こちらに疑念を抱かせずに追いかけてくることができた……」

「あれにはわたくしも舌をまきました」

「ス、スピロさん! アバーラインさんが悪魔だって知ってて、なぜ教えてくれなかったんです!」
 呪縛から解き放たれたように、エヴァが一気にまくしたてた。
「エヴァ様、しかたなかったのです。このミッションは悪魔を倒せば終わるものではなく、切り裂きジャックを捕まえなければなりませんでしたから」
「でも、悪魔を倒せば邪魔ははいらなかったンじゃあありませんの」
「そうかもしれません。ですが、この悪魔の後釜に、もっと強い悪魔が現われる可能性を考えると、さっさと倒してしまうという選択肢はとりにくかったのです」

「だったらなぜ今、正体を?」
 スピロはわざとらしく肩をすくめてみせた。

「こんなに弱い悪魔なら、次に現われたとしてもたかがしれている、と思ったからですわ」
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