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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第228話 ひとが死んでる!
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うわぁぁぁ——
バケモノだぁ。バケモノがにらんでるぞぉぉぉぉぉ——
クモの子を散らすように、たちまちその街角からひとが散っていく。
「バケモノ……ねぇ…… ま、そう見えてもしかたないです。でもこうしないとネルさんが探せないんですけどねぇ」
と、またひとりごとを言ったが、エヴァはよい作戦を思いついた。
「そうね。ネルさんには、この光がバケモノに見えないはずですわ。申し訳ないですけど、このふたつのライトを使って、住人たちを追い立てるとしましょうか」
エヴァは地上から三メートルほどの位置を保ったまま、ライトを下のほうへむけた。その作戦はおもしろいように奏功した。暗闇のなかに現われた、目から光を放つ上空三メートルほどに浮いているバケモノに、ひとびとは声をあげて逃げまどった。
ちょっとばかり、心が痛みますわ……
わずかばかりの良心の呵責はあったものの、エヴァは光のなかに浮かびあがる、逃げまどうひとびとの姿をつぶさに見ていった。だが、そこにネルの姿はなかった。
「ネルさぁぁぁぁん」
エヴァは逃げまどうひとびとにむかって、声を投げかけた。が、それらしい反応はなにもなかった。さらに奥へとむかうしかない。
やがて、セイたちがむかっているはずのエリアにさしかかった。具体的にどの場所で第三の事件がおきたか、エヴァは把握していなかったが、あらかじめ地図で確認した場所はこの近辺であるのは間違いなかった。
「セイさんたちはもう来ているかしら?」
エヴァはライトが投げかけている先に浮かびあがる光景に注意をむけた。その途端、脇の路地から転がりでるようにして、ひとが飛びだしてくるのがみえた。
「ひとが死んでる!」
地面に尻餅をついたまま、その人物が叫んだ。
ネルだった。
「ネルさん!!」
その声にハッとしたのか、光を眩しそうに目元をてのひらでおおいながら、ネルがこちらを仰ぎ見た。
「エヴァさん!」
「探してたんですよ。ネルさん」
エヴァはライトを消すと、ピストル・バイクを下降させながら飛び降りた。ネルに駆け寄る。ネルの顔はこころなしか蒼白で、あきらかに狼狽えている様子だった。
「大丈夫? ネルさん」
「エヴァさん。ひとが死んでるんです」
「まさか!」
「本当です。首を掻き切られて、女のひとが……」
第三の犯行現場 バーナー・ストリート
そこは道のなかほどで、左側に学校があり高い石塀に仕切られていた。その真向かいの建物は二階建てのクラブハウスだったが、まだ灯がついており、なかから談話する声がぼそぼそと聞こえていた。
その脇の中庭にむかう大木戸の近く、クラブハウスの壁近くの地面に黒いかたまりが横たわっていた。だが、暗くてよく見えなかった。エヴァはピストル・バイクのライトを点灯させた。
そこに女性が仰向けに横たわっていた。
バケモノだぁ。バケモノがにらんでるぞぉぉぉぉぉ——
クモの子を散らすように、たちまちその街角からひとが散っていく。
「バケモノ……ねぇ…… ま、そう見えてもしかたないです。でもこうしないとネルさんが探せないんですけどねぇ」
と、またひとりごとを言ったが、エヴァはよい作戦を思いついた。
「そうね。ネルさんには、この光がバケモノに見えないはずですわ。申し訳ないですけど、このふたつのライトを使って、住人たちを追い立てるとしましょうか」
エヴァは地上から三メートルほどの位置を保ったまま、ライトを下のほうへむけた。その作戦はおもしろいように奏功した。暗闇のなかに現われた、目から光を放つ上空三メートルほどに浮いているバケモノに、ひとびとは声をあげて逃げまどった。
ちょっとばかり、心が痛みますわ……
わずかばかりの良心の呵責はあったものの、エヴァは光のなかに浮かびあがる、逃げまどうひとびとの姿をつぶさに見ていった。だが、そこにネルの姿はなかった。
「ネルさぁぁぁぁん」
エヴァは逃げまどうひとびとにむかって、声を投げかけた。が、それらしい反応はなにもなかった。さらに奥へとむかうしかない。
やがて、セイたちがむかっているはずのエリアにさしかかった。具体的にどの場所で第三の事件がおきたか、エヴァは把握していなかったが、あらかじめ地図で確認した場所はこの近辺であるのは間違いなかった。
「セイさんたちはもう来ているかしら?」
エヴァはライトが投げかけている先に浮かびあがる光景に注意をむけた。その途端、脇の路地から転がりでるようにして、ひとが飛びだしてくるのがみえた。
「ひとが死んでる!」
地面に尻餅をついたまま、その人物が叫んだ。
ネルだった。
「ネルさん!!」
その声にハッとしたのか、光を眩しそうに目元をてのひらでおおいながら、ネルがこちらを仰ぎ見た。
「エヴァさん!」
「探してたんですよ。ネルさん」
エヴァはライトを消すと、ピストル・バイクを下降させながら飛び降りた。ネルに駆け寄る。ネルの顔はこころなしか蒼白で、あきらかに狼狽えている様子だった。
「大丈夫? ネルさん」
「エヴァさん。ひとが死んでるんです」
「まさか!」
「本当です。首を掻き切られて、女のひとが……」
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そこは道のなかほどで、左側に学校があり高い石塀に仕切られていた。その真向かいの建物は二階建てのクラブハウスだったが、まだ灯がついており、なかから談話する声がぼそぼそと聞こえていた。
その脇の中庭にむかう大木戸の近く、クラブハウスの壁近くの地面に黒いかたまりが横たわっていた。だが、暗くてよく見えなかった。エヴァはピストル・バイクのライトを点灯させた。
そこに女性が仰向けに横たわっていた。
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