ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜

多比良栄一

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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜

第225話 ゾーイが願った能力(リグレット)

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「了解だよ!」

 ゾーイはその場にかがんで、路面に力を吹き込んだ。
 石畳がゆがむ。
 と、石畳のレンガが路面から抜けて、無数の石つぶてとなって前方へ飛んでいった。目の前の180度に見えているほとんど獣人が、ブロックの直撃をうけてうしろへはじけ飛んだ。
「おお、やるじゃねぇか! ゾーイ。おめぇ、どんな力だ?」

 ゾーイは立ちあがりながら言った。
「あたいのパワーは『動かす』こと」
「なんだ? オレのように『力』じゃねぇのか?」
 ゾーイは苦笑いしながら、首を横にふった。
「あたいは初めて精神世界へダイブしたとき、からだが不自由な姉を動かしてやりたい、って願ったのさ。現実世界では指一本しか動かせない姉に活躍の場を与えてほしくてね」
「は、それで『動かす』力を手にしたのか!」

「ああ。マリアさんのように戦える『力』はないけどね。この世界にあるものだったら、たいがいのものを『動かす』ことができる。モノだろうと人だろうとね」
「なるほどな。だから、人や馬車を持ちあげたり、地面を物理法則無視して動かせるっていうわけか……」
 マリアは口元をゆるめて言った。

「いい能力リグレットを手に入れたな」

 ゾーイは目を見開いた。
 姉以外にそんなにストレートに褒められたのははじめてだった。それがマリアから発せられたのがおどろきだった。彼女は嘘をついたり、相手をおもんばかったりできない性格なのだ。つまり今のことばは、忖度なしの本音だということだ。
 ゾーイはうれしくなった。
「ああ、この力はひとを守るのには最適さ」
「ゾーイ、そんなもったいねぇこと言ってンな。攻めろ、攻めろ! 今、獣人どもをあらかたぶっ飛ばしたじゃねぇか」
 ゾーイはつい口元がにやけた。

 ああ、このひとはひとをあおるのが、エグいくらいうまい。
 あたいにそんなに自信を与えちゃあ……
 つい姉のことを忘れて……

 活躍したくなる!

 倒れている獣人を踏みつけるようにして、奥から獣人たちがこちらに迫ってきた。
「マリアさん、任せておくれ!」
「道路のブロックはあらかた使っちまっただろう」

「ブロックで倒せるなら、ここでは武器は無尽蔵さ」
 ゾーイは地面に手をあてて、広場の向こう側にある貸間長屋に、意識を集中させた。
 貸間長屋の壁面が波打ちはじめた。
 壁面に埋めこまれていたブロックが、もりあがった波の勢いで飛び出した。壁面のブロックが一斉に下方にむけて撃ち放たれた。背後からブロックに直撃されて、獣人たちはいとも簡単に崩れ落ちた。

「ーったく、一体づつ斬り伏せてるのが嫌になるな」

 マリアが大剣を背中のさやに収めながら言った。剣をおさめたということは、あとは頼んだということだ。
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