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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第224話 ドクター・モローの街
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「なんだって、こんな醜いバケモノがうじゃうじゃ現われてンだ?」
マリアが豹男と犬女を斬り伏せながら言った。
広場にはありとあらゆる動物の顔をした獣人があふれ、ゾーイたち貸間長屋の一棟を背にした一角に追い込まれていた。
「マ、マ、マリアさん。醜いとか、うつくしいとか言う前に、はやく逃げましょう」
コナン・ドイルが長屋の壁に背中をつけて、これ以上退きようがないことに、絶望しながら声を震わせた。
「バカか、アーサー。ネルを探さねぇとなんねぇだろうがぁ」
「で、ですがね。こんな化物に取り囲まれて、あたしゃ生きた心地がしませんよ」
「ミアズマに囲まれたことがあンだろうがぁ」
「こ、こいつらはひとを襲ってるんですよ。さっき、喰われたひといましたよね」
ゾーイはコナン・ドイルの止まらない泣き言にすこしいらついた。
「コナン・ドイルさん。そんな覚悟であたいらと行動をともにしようなんてことじゃあ、困るよ。リンタロウさんを見習っておくれ」
「ゾーイさん、勘弁してくださいよ。あたし、行動を共にしようなんてひとっことも言ってませんからぁ? リンタロウさんが勝手に決めちゃうから、巻込まれているだけですよ」
「アーサー、ずいぶん人聞きのわるいことをおっしゃいますね。小生たちは医者で物書きという共通点があるから、同志だと思っていたのですがね」
「リンタロウさん、そりゃ、そう言っていただけるとうれしいですよ。ですがね、あなたは軍医というリッパな医者です。あたしのような田舎の町医者とは……」
「でも作家として、世界に並ぶものがないほど成功されるのは、あなたですよ」
「いや、そりゃ、この未来人の方々が言ってるだけで。それにこんな目にあったからって、創作のヒントを得られるなんて、とうてい思えま……」
「うるせぇぞ、アーサー! 集中力がとぎれる!」
マリアはコナン・ドイルの愚痴を聞きながら、数体の獣人を倒していたが、さすがに片手間というわけにはいかなくなってきたのだろう。大声でコナン・ドイルをしかりつけた。
「ゾーイ、まわりがかなり密集してきた。一度、はね飛ばせるか?」
ゾーイはマリアの打診に一瞬こころが踊ったが、すぐにまだ信頼しきれてもらっていないのだとわかって、ため息をついた。
「マリアさん。ぶっ飛ばせって命令してくれないかい? 遠慮はなしだよ」
マリアはゾーイの不満をすぐさま感じ取ったようだった。
「すまねぇ。やつらをぶっ飛ばしてくれ!」
マリアが豹男と犬女を斬り伏せながら言った。
広場にはありとあらゆる動物の顔をした獣人があふれ、ゾーイたち貸間長屋の一棟を背にした一角に追い込まれていた。
「マ、マ、マリアさん。醜いとか、うつくしいとか言う前に、はやく逃げましょう」
コナン・ドイルが長屋の壁に背中をつけて、これ以上退きようがないことに、絶望しながら声を震わせた。
「バカか、アーサー。ネルを探さねぇとなんねぇだろうがぁ」
「で、ですがね。こんな化物に取り囲まれて、あたしゃ生きた心地がしませんよ」
「ミアズマに囲まれたことがあンだろうがぁ」
「こ、こいつらはひとを襲ってるんですよ。さっき、喰われたひといましたよね」
ゾーイはコナン・ドイルの止まらない泣き言にすこしいらついた。
「コナン・ドイルさん。そんな覚悟であたいらと行動をともにしようなんてことじゃあ、困るよ。リンタロウさんを見習っておくれ」
「ゾーイさん、勘弁してくださいよ。あたし、行動を共にしようなんてひとっことも言ってませんからぁ? リンタロウさんが勝手に決めちゃうから、巻込まれているだけですよ」
「アーサー、ずいぶん人聞きのわるいことをおっしゃいますね。小生たちは医者で物書きという共通点があるから、同志だと思っていたのですがね」
「リンタロウさん、そりゃ、そう言っていただけるとうれしいですよ。ですがね、あなたは軍医というリッパな医者です。あたしのような田舎の町医者とは……」
「でも作家として、世界に並ぶものがないほど成功されるのは、あなたですよ」
「いや、そりゃ、この未来人の方々が言ってるだけで。それにこんな目にあったからって、創作のヒントを得られるなんて、とうてい思えま……」
「うるせぇぞ、アーサー! 集中力がとぎれる!」
マリアはコナン・ドイルの愚痴を聞きながら、数体の獣人を倒していたが、さすがに片手間というわけにはいかなくなってきたのだろう。大声でコナン・ドイルをしかりつけた。
「ゾーイ、まわりがかなり密集してきた。一度、はね飛ばせるか?」
ゾーイはマリアの打診に一瞬こころが踊ったが、すぐにまだ信頼しきれてもらっていないのだとわかって、ため息をついた。
「マリアさん。ぶっ飛ばせって命令してくれないかい? 遠慮はなしだよ」
マリアはゾーイの不満をすぐさま感じ取ったようだった。
「すまねぇ。やつらをぶっ飛ばしてくれ!」
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