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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第221話 敵の、悪魔の臭いがする
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「よかった。ネルさんはまだ近くにいるようだ」
エヴァがピストル・バイクを呼びだし、それに乗って空中に舞いあがっていくのをみて、セイはほっとした思いで言った。
ネルがここから離れた場所にいたら、未練の力をうしなう可能性が頭をよぎっただけに、とりあえず戦う力があることが、ありがたかった。
マリアとゾーイがコナン・ドイルとリンタロウをひきつれて、ホワイトチャペルの奥のほうへ走りだしたのを見届けてからセイは訊いた。
「スピロ、次の犯行現場はどこ?」
「セイ様、ここからすこし南下します。ホワイトチャペル・ロードをまたいだ先にある、コマーシャル・ロードの近く『バーナー・ストリート(現ヘンリキズ・ストリート)』です」
「急ごう!」
セイはマリアやゾーイたちも気になったが、いまはそんなことを思いやっている余裕はないと、気をひきしめた。まずはネルを保護することに専念してもらわねば、最初のダイブとおなじ結末におわる可能性があるのだ。
それまでに、切り裂きジャックの正体だけでも知ることができれば、なんとか打開策をできるかもしれない。
今できるベストをつくすしかない。
だが、ホワイトチャペル・ロードを越えたとたん、あたりの様相が突然変わったことにきづいて、セイは思わず足をとめた。
「まただ。敵の、悪魔の臭いがする」
スピロが夜空に目をむけた。さきほどのレッド・ドラゴンのように、上から襲ってくるのを警戒しているのだろう。
ふいにレンガの石畳に波紋が浮かんだ。
まるでゾーイが石畳を歪ませたときのような、物理的制約を無視した動き。通路のいたるところで、それが干渉しあうほどに次々と浮かんでは消える。
しだいにその波紋はこちらへ近づいてくる。
セイたちの足元付近までその波紋の外周部の輪っかが届いた瞬間、地面からいくつもの毛むくじゃらの手が伸びてきた。
セイは飛び退きながら、すかさずその腕を斬り伏せた。
地中から、ギャァァァ、という悲鳴がくぐもって聞こえる。
やがて石畳におおきな穴があき、そこからまるで類人猿のような姿をしたモンスターが何体も這い出てきた。
「セイさま。おそらくモーロックです。小説『タイム・マシン』に出てくる」
「タイム・マシン!」
「はい。残念ながら、H・G・ウエルズ様は、悪魔の手にかかってしまったかと」
エヴァがピストル・バイクを呼びだし、それに乗って空中に舞いあがっていくのをみて、セイはほっとした思いで言った。
ネルがここから離れた場所にいたら、未練の力をうしなう可能性が頭をよぎっただけに、とりあえず戦う力があることが、ありがたかった。
マリアとゾーイがコナン・ドイルとリンタロウをひきつれて、ホワイトチャペルの奥のほうへ走りだしたのを見届けてからセイは訊いた。
「スピロ、次の犯行現場はどこ?」
「セイ様、ここからすこし南下します。ホワイトチャペル・ロードをまたいだ先にある、コマーシャル・ロードの近く『バーナー・ストリート(現ヘンリキズ・ストリート)』です」
「急ごう!」
セイはマリアやゾーイたちも気になったが、いまはそんなことを思いやっている余裕はないと、気をひきしめた。まずはネルを保護することに専念してもらわねば、最初のダイブとおなじ結末におわる可能性があるのだ。
それまでに、切り裂きジャックの正体だけでも知ることができれば、なんとか打開策をできるかもしれない。
今できるベストをつくすしかない。
だが、ホワイトチャペル・ロードを越えたとたん、あたりの様相が突然変わったことにきづいて、セイは思わず足をとめた。
「まただ。敵の、悪魔の臭いがする」
スピロが夜空に目をむけた。さきほどのレッド・ドラゴンのように、上から襲ってくるのを警戒しているのだろう。
ふいにレンガの石畳に波紋が浮かんだ。
まるでゾーイが石畳を歪ませたときのような、物理的制約を無視した動き。通路のいたるところで、それが干渉しあうほどに次々と浮かんでは消える。
しだいにその波紋はこちらへ近づいてくる。
セイたちの足元付近までその波紋の外周部の輪っかが届いた瞬間、地面からいくつもの毛むくじゃらの手が伸びてきた。
セイは飛び退きながら、すかさずその腕を斬り伏せた。
地中から、ギャァァァ、という悲鳴がくぐもって聞こえる。
やがて石畳におおきな穴があき、そこからまるで類人猿のような姿をしたモンスターが何体も這い出てきた。
「セイさま。おそらくモーロックです。小説『タイム・マシン』に出てくる」
「タイム・マシン!」
「はい。残念ながら、H・G・ウエルズ様は、悪魔の手にかかってしまったかと」
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