ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜

多比良栄一

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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜

第207話 マリア・エヴァ 大型ドラゴン戦2

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 ど派手な爆発音がして、ドラゴンのからだが沈んだ。

「浅いっ!」
 マリアが耳元で叫んだ。
「でも動きをとめました!」
「落ちるぞ!」
「どうします?」
「横につけろ!」
 
 エヴァはスロットルをふかすと、羽根を必死で羽ばたかせて、落下しまいとあえいでいるドラゴンにちかづいた。マリアが後部座席のうえで立ちあがり剣を構えた。
「すれ違いざまに斬る」
「了解です!」
 エヴァは悶絶するドラゴンの脇をすり抜ける軌道で、バイクを疾駆させた。
 マリアが剣をおおきく振り抜いた。
 
 グォォォォォォォン

 苦しげな重々しい低い咆哮が響く。
 エヴァには見えなかったが、マリアの剣がドラゴンのどこかしらを切り裂いたのは確かだった。だが斬りつけた反動でバイクがうしろに押し戻されそうになる。
 思いっきりスロットルをまわす。
 なんとかバイクはドラゴンの真横をすり抜けた。

「マリアさん、やりました?」
「だめだ!。あれじゃあ、表面をなめただけだ」
「切り裂いたんじゃないんですの?」
「角度が足りなかった。エヴァ、もう一度頼む! 今度はうまくやる」

 エヴァはすぐさまハンドルをひねって、バイクを反転させた。
「今度は正面からになりますが、大丈夫ですか?」
「ああ、また背後にまわっている余裕はねぇ。それにヤツはすでに手負いだ。なんとかするさ」
「わかりました。仕損じなきよう願います」

 エヴァはスピードをあげた。
 ドラゴンはさきほどより高度を下げていた。
 放っておけば、そのまま街中に墜落するのではないか、という思いが一瞬頭をよぎったが、そうなればまたセイの力を借りることになる、と思い直した。
「マリアさん! もうすぐです」
 ドラゴンの顔にバイクが近づいていく。ドラゴンの頭は下をむいていたが、背後から近づいていくのとは、あきらかに威圧感がちがった。

「ぶっころしてやる!!」

 後部座席からマリアの威勢のよい雄叫びが聞こえた。

 その瞬間、ふいにドラゴンが首をもちあげた。真正面からぐっとこちらを睨みつけている。
 ドラゴンが口をおおきくひらいた。

 まずい!!

「マリアさん、バイクにつかまってくださいっっっっっ!」
 そう叫ぶやいなや、エヴァはバイクを真横に引き倒して、そのまま上下さかさまになるまで傾けた。

 ドラゴンの口から火炎が放たれた。

 ひっくり返ったバイクの底を炎がなめるように通り抜けていく。なにかが焦げる臭いがつんと鼻をつく。

 あぶなかった——
 
 逆さまのままバイクを下方にむけて走らせながら、エヴァはほっと胸をなでおろした。

「こらぁ、エヴァ。あいつ、口から火ぃ吹くなら、最初からそう言えぇ」

 真下からマリアの叫び声が聞こえてきた。
 うしろに目をむけると、マリアがバイクのでっぱり部分を掴んで、ぶらんとぶら下がっているのがみえた。
「おかげで剣を落としちまったじゃねぇか」
「あら、マリアさん。ドラゴンは火を吹くっていうのがお約束でしょうに」
「なぁにが、お約束だぁ。もうすこしで丸焼きになるところだったんだぜ」

 エヴァはハンドルをひねってバイクを正常な位置に戻しながら嘆息した。


「では、次は丸焼けにならない妙案をお願いしますわ」
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