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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第191話 ネルを知る男
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「そうですね。お願いしておいたほうがいいでしょうね。第二の殺人までたったの7日間しかありません。しかもそれが一気に早まる可能性もあるでしょうし」
スピロが言うと、ピーターは先ほどもらったコインをポケットに突っ込んで、手のひらをからにしてからもう一度さしだした。
「いくらくらいですの?」
エヴァがうんざりとした顔で言うと、ピーターは値踏みするような目をスピロのほうにむけてから言った。
「一日1ポンド(現在の価値で24000円ほど)でどうだい?」
「ずいぶん、おおきく出ましたわね」
「それだけの働きはするぜ。実績はじゅうぶんだと思うけど……」
スピロはエヴァに目で訴えた。
「ではまずは3日分を先払いということで……」
スピロははやめにこの場所を離れたかった。空気はわるかったし、なによりこんな貧民街のど真ん中で、大金の話をしているのは危険がすぎる。
「では、ピーター。クロソフスキーさんの張り込みをお願いします。なにかおかしな動きがあったら……」
そのとき、路地のむこうから、野太い男の声がした。
「フランシス。フランシスじゃないか」
見ると50過ぎほどの髭面の男がこちらに歩み寄ってきた。
彼はセイたちを無視して、ネルの元へ駆け寄り抱きつこうとした。ネルがそれとなく手を前につきだして、それを拒否した。
「なによ、ジェームズ。あんた、別におんなができたんじゃないの?」
「フランシス、なにを言うんだ。濡れ衣さ。むかし馴染みのおんなとちょっと話込んでただけで、べつにオレのおんなっていうわけじゃない」
「へぇ。船員さんっていうのは、いたるところに女がいるから信用できないわね」
「いや、いや、フランシス。おまえさんだって、オレっていう男がいながら……」
男はそこまで言って、まわりにいるセイたちに気づいたらしく声を急にひそめて言った。
「街娼の仕事をしてるだろ」
「あんたがわたしを食べさせられるだけ稼いでくれれば、そんなことしなくてすむのよ」
「よく言う。いくら貢いだと思ってる?」
「まぁ、いいわ。わたしは今、そんなことしなくても食べていけるから、あんたに気にかけてもらう必要はないの?」
「どういうことだ?」
ネルはジェームズに、セイやスピロたちを、手をひろげて紹介した
「このお金持ちのお坊ちゃんとお嬢さんにね、とびっきり高収入でやとわれているよ」
ジェームスはすこし面喰らっていた。
「このって…… 子供じゃないか?」
「ろくでもない年寄りも、よっぽど頼りになるのよ。ほかのおんなにちょっかいかけないしね」
スピロが言うと、ピーターは先ほどもらったコインをポケットに突っ込んで、手のひらをからにしてからもう一度さしだした。
「いくらくらいですの?」
エヴァがうんざりとした顔で言うと、ピーターは値踏みするような目をスピロのほうにむけてから言った。
「一日1ポンド(現在の価値で24000円ほど)でどうだい?」
「ずいぶん、おおきく出ましたわね」
「それだけの働きはするぜ。実績はじゅうぶんだと思うけど……」
スピロはエヴァに目で訴えた。
「ではまずは3日分を先払いということで……」
スピロははやめにこの場所を離れたかった。空気はわるかったし、なによりこんな貧民街のど真ん中で、大金の話をしているのは危険がすぎる。
「では、ピーター。クロソフスキーさんの張り込みをお願いします。なにかおかしな動きがあったら……」
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「フランシス。フランシスじゃないか」
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彼はセイたちを無視して、ネルの元へ駆け寄り抱きつこうとした。ネルがそれとなく手を前につきだして、それを拒否した。
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「フランシス、なにを言うんだ。濡れ衣さ。むかし馴染みのおんなとちょっと話込んでただけで、べつにオレのおんなっていうわけじゃない」
「へぇ。船員さんっていうのは、いたるところに女がいるから信用できないわね」
「いや、いや、フランシス。おまえさんだって、オレっていう男がいながら……」
男はそこまで言って、まわりにいるセイたちに気づいたらしく声を急にひそめて言った。
「街娼の仕事をしてるだろ」
「あんたがわたしを食べさせられるだけ稼いでくれれば、そんなことしなくてすむのよ」
「よく言う。いくら貢いだと思ってる?」
「まぁ、いいわ。わたしは今、そんなことしなくても食べていけるから、あんたに気にかけてもらう必要はないの?」
「どういうことだ?」
ネルはジェームズに、セイやスピロたちを、手をひろげて紹介した
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