666 / 935
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第190話 『慈善事業』とやらでぜひ力になってやってくれ
しおりを挟む
「第一発見者だったのですか?」
「ああ……、どうやらそうらしい」
セイはおどろいて、スピロと顔をみあわせた。
「そんときゃ、またそんな与太話をと思ってたが、そのあと、あの騒ぎだろ。ここんとこ連日、新聞に書きたてられて、オレも驚いてンのさ」
「その同僚のチャールズ様という方は今、どこに?」
「今日も休みだよ。ここんとこ、ロンドン警視庁で聴取に呼ばれててね。なにせ第一発見者だからね。まぁ、そんなことがあったから、日にちは間違えてねぇんだ」
「それでクロソフスキー様をみたのは何時ごろでしょう?」
「夜中の2時ごろにパブで見かけたのさ。オレはあいつのところで、髪を切ってもらってンで、顔はよくおぼえてンのさ。まぁ、おおかた娼婦でも物色してたンだろうな」
「パトリック様、あなたはなぜそんな時間にパブに?」
「は、こんな仕事してんだぜ」
パトリックが肉切り包丁を掲げてみせた。
「すこしくらい酔いがまわってねぇと、仕事なんかできやしねぇだろ」
「パトリック、やっぱり飲んでたんだね」
ピーターがうんざりした表情で言った。
「そりゃそうさ。おまえだって、こんな仕事をしてたら、おなじようになるさ」
「昔、手伝ったことあるけど、酒なんかの世話になんかならなかったよ」
「ああ、そうだったな。ピーター、おまえ、けっこういい腕してたな」
「あんまりにも稼げないから、もうたくさんだけどね」
そう言うと、ピーターはスピロにむかって「もう戻ろうぜ」と退室をうながした。
それにしたがってスピロは踵をかえしかけたが、パトリックが手を前に差し出しているのに気づいた。スピロが近づくとパトリックは耳元で囁いた。
「ああ言ってるが、あいつは、ストリートのちびっ子の世話のために、仕事をやめたんだ。あんたらカネもってるンだろ。いまはやりの『慈善事業』とやらで、ぜひ力になってやってくれねぇか」
------------------------------------------------------------
「これでクロソフスキーを容疑者から外せなくなりました」
ピックフォード社の肉解体工場をでたところで、スピロはセイたちに言った。
「そいつにぼくらがはりついていてもいいぜ」
ピーターが手を出しながら、上目遣いに言ってきた。
スピロはすこしだけ申し訳なさそうにして、エヴァのほうに目をやった。エヴァはそのために連れて来られたのを覚悟していたので、なんのためらいもなくピーターの手のなかにコインをおいた。
「ああ……、どうやらそうらしい」
セイはおどろいて、スピロと顔をみあわせた。
「そんときゃ、またそんな与太話をと思ってたが、そのあと、あの騒ぎだろ。ここんとこ連日、新聞に書きたてられて、オレも驚いてンのさ」
「その同僚のチャールズ様という方は今、どこに?」
「今日も休みだよ。ここんとこ、ロンドン警視庁で聴取に呼ばれててね。なにせ第一発見者だからね。まぁ、そんなことがあったから、日にちは間違えてねぇんだ」
「それでクロソフスキー様をみたのは何時ごろでしょう?」
「夜中の2時ごろにパブで見かけたのさ。オレはあいつのところで、髪を切ってもらってンで、顔はよくおぼえてンのさ。まぁ、おおかた娼婦でも物色してたンだろうな」
「パトリック様、あなたはなぜそんな時間にパブに?」
「は、こんな仕事してんだぜ」
パトリックが肉切り包丁を掲げてみせた。
「すこしくらい酔いがまわってねぇと、仕事なんかできやしねぇだろ」
「パトリック、やっぱり飲んでたんだね」
ピーターがうんざりした表情で言った。
「そりゃそうさ。おまえだって、こんな仕事をしてたら、おなじようになるさ」
「昔、手伝ったことあるけど、酒なんかの世話になんかならなかったよ」
「ああ、そうだったな。ピーター、おまえ、けっこういい腕してたな」
「あんまりにも稼げないから、もうたくさんだけどね」
そう言うと、ピーターはスピロにむかって「もう戻ろうぜ」と退室をうながした。
それにしたがってスピロは踵をかえしかけたが、パトリックが手を前に差し出しているのに気づいた。スピロが近づくとパトリックは耳元で囁いた。
「ああ言ってるが、あいつは、ストリートのちびっ子の世話のために、仕事をやめたんだ。あんたらカネもってるンだろ。いまはやりの『慈善事業』とやらで、ぜひ力になってやってくれねぇか」
------------------------------------------------------------
「これでクロソフスキーを容疑者から外せなくなりました」
ピックフォード社の肉解体工場をでたところで、スピロはセイたちに言った。
「そいつにぼくらがはりついていてもいいぜ」
ピーターが手を出しながら、上目遣いに言ってきた。
スピロはすこしだけ申し訳なさそうにして、エヴァのほうに目をやった。エヴァはそのために連れて来られたのを覚悟していたので、なんのためらいもなくピーターの手のなかにコインをおいた。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。


セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる