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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第188話 ニコル・ストリート・イレギュラーズの成果
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メリックとの面会を終えて、スピロたちが下宿にもどると、玄関先で『ニコル・ストリート・イレギュラーズ』たちが待っていた。
ピーター、マイケル、ジョン、そしてアリス。知らない顔の子がふたり……
エヴァとモリ・リンタロウはなかに招き入れようとしたが、ターナー夫人の反対にあったらしい。みすぼらしい格好のストリート・チルドレンたちを、この下宿にいれるわけにはいかない、ということだった。
ピーターたちはそんな扱いを受けたからと言って、腐ったり、腹を立てたりしていなかった。それが当たり前だと言わんばかりに、階段におとなしく座って待っていた。
表通りで話をするのもはばかられたので、地下室に続く玄関脇の戸外の階段を使うことにした。ふだんはご用聞きやセールスマンと立ち話をする場所だから都合もいい。
わかったのは容疑者とされる、理髪師セヴェリン・クロソフスキーと、教師で法廷弁護士のモンタギュー・ジョン・ドルトイットの住所だった。
これでスピロがあたりをつけた容疑者の居場所はわかった。
「だけど、ドルイットさんは犯人じゃないンじゃないかな?」
ピーターがかったるそうに言った。
「どうして、そう断定できるのです?」
「だって、ドルイットさんの住ンでるとこ、ホワイトチャペルから何マイルも離れたテムズ川の対岸ケント州だぜ。さすがに夜中にここまで来るのは無理があると思うぜ」
スピロはその意見ももっともだと思った。
「しかし、よくそんな遠くに住んでいるひとの住所、わかりましたね」
「運がよかったのさ。アバーライン警部が容疑者として、ロンドン警視庁へひっぱってったからね」
「アバーラインさんがかい?」
セイがおどろきを口にした。
「セイ様、そんなに驚くことではありません。ドルイットという人物は一番最初に疑われた人物です」
「ですが、そんな遠くに住んでいる人物をなぜ、アバーライン様は容疑者として、最後まで疑ったのでしょうね」
「そりゃ、ヤツが無能だからだよ」
マリアがここぞとばかりに言い放った。
「マリアさん。そりゃいいすぎだよ」
ゾーイがあわててマリアをたしなめたが、マリアはどこふく風だった。
「ゾーイ、べつにいいだろ。本人がいねぇんだから」
「マリア、きみは本人がいても言うだろ」
セイもやんわりとたしなめた。
「まぁ、いままで見たじゃあ、一番犯人っぽいのは、クロソフスキーだったな」
ピーターが言うと、それまでかたわらで黙っていたマイケルが嫌そうな顔をした。
「ぼく、あのひと嫌い」
「ぼくだって、あのひと嫌い」
「なにかされたのかい?」
セイがマイケルの顔を覗き込んで訊いた。
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エヴァとモリ・リンタロウはなかに招き入れようとしたが、ターナー夫人の反対にあったらしい。みすぼらしい格好のストリート・チルドレンたちを、この下宿にいれるわけにはいかない、ということだった。
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表通りで話をするのもはばかられたので、地下室に続く玄関脇の戸外の階段を使うことにした。ふだんはご用聞きやセールスマンと立ち話をする場所だから都合もいい。
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これでスピロがあたりをつけた容疑者の居場所はわかった。
「だけど、ドルイットさんは犯人じゃないンじゃないかな?」
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「だって、ドルイットさんの住ンでるとこ、ホワイトチャペルから何マイルも離れたテムズ川の対岸ケント州だぜ。さすがに夜中にここまで来るのは無理があると思うぜ」
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「しかし、よくそんな遠くに住んでいるひとの住所、わかりましたね」
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「アバーラインさんがかい?」
セイがおどろきを口にした。
「セイ様、そんなに驚くことではありません。ドルイットという人物は一番最初に疑われた人物です」
「ですが、そんな遠くに住んでいる人物をなぜ、アバーライン様は容疑者として、最後まで疑ったのでしょうね」
「そりゃ、ヤツが無能だからだよ」
マリアがここぞとばかりに言い放った。
「マリアさん。そりゃいいすぎだよ」
ゾーイがあわててマリアをたしなめたが、マリアはどこふく風だった。
「ゾーイ、べつにいいだろ。本人がいねぇんだから」
「マリア、きみは本人がいても言うだろ」
セイもやんわりとたしなめた。
「まぁ、いままで見たじゃあ、一番犯人っぽいのは、クロソフスキーだったな」
ピーターが言うと、それまでかたわらで黙っていたマイケルが嫌そうな顔をした。
「ぼく、あのひと嫌い」
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セイがマイケルの顔を覗き込んで訊いた。
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