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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第186話 エレファントマンとの出会い4
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ジョゼフ・メリックは意外なことを尋ねてきた。
「最後の・犠牲者は・メアリー・ジェーン・ケリーと言うの・は本当・ですか?」
「ええ。それがなにか?」
「偶然だけど・わたしの・母の名前も、メアリー・ジェーン・という・のです。メアリー・ジェーン・メリック」
「不思議な偶然……ですね」
「ああ、そう・だね。母は・わたしが・11・歳のときに・気管・支炎でなく・なった。わかくして・ね」
「そこから、あなたのさらなる苦難がはじまったのですよね」
スピロがため息まじりに言うと、トレヴェス医師がよこから口を挟んできた。
「そうだよ。ジョンは葉巻をまく仕事を得ても、手の肥大でできなくなり、行商人をやっても、気味悪がられてなにも売れず、けっきょく見せ物小屋でお金を稼ぐ方法しかなくなってね」
「フレデ・リック。ぼく・の話は・いいよ。いまは・きみの・おかげで・快適・な生活を・おくれ・ている」
「メリック様。こんなことをお聞きするのは筋違いだと思うのですが……」
スピロはどうしてこんなことを訊こうとしているのか、自分でも理解できなかった。
貧しさに苦しむ人々であふれるこの街で、その底辺の底をなめるような辛酸をあじわった彼なら…… エレファントマンなら、どういう解釈をするのかという興味がおおきかった。
「あなたは『切裂きジャック』とはどういう人物だと思われますか?」
「異形・のもの」
間髪をいれずに、メリックはそう言ってのけた。
スピロはドキリとした。
おもわずゾーイと目をあわせてしまう。あまりにも予想外の答え。ジョゼフ・メリックの口からだけは、でてこないはずの答え——
「わたし・の・ように・からだが・歪んで・いるのでは・ないよ」
メリックは声をふるわせた。おそらくおもしろがっているのだろう。
「こころが・歪・んでいる・人間だ・という・意味だ」
「そ、そうですね。わたしたちも先日、仲間内で推理しあいまして、それにちかい犯人像を導きだしました」
「ど・んな?」
「血に飢えた快楽者、多重人格者、恨みをかかえた性的未熟者、力の誇示によって現状を都合よくねじ曲げようとする狂人……」
「まぁ、たいした結論はでなかったがな」
「マリアさん、そういう言い方はないさぁ」
「小生は卓越した作家たちの、推理は楽しめましたがね」
ゾーイやマリア、リンタロウが口々に感想を述べると、メリックは目をほそめた。
「未来・人でも・過去が・全部・わかる・わけでは・ないので・すね。ところで……」
「未来では、ぼく・の病気・は治せるの・かな?」
メリックはストレートにそう尋ねてきた。
「最後の・犠牲者は・メアリー・ジェーン・ケリーと言うの・は本当・ですか?」
「ええ。それがなにか?」
「偶然だけど・わたしの・母の名前も、メアリー・ジェーン・という・のです。メアリー・ジェーン・メリック」
「不思議な偶然……ですね」
「ああ、そう・だね。母は・わたしが・11・歳のときに・気管・支炎でなく・なった。わかくして・ね」
「そこから、あなたのさらなる苦難がはじまったのですよね」
スピロがため息まじりに言うと、トレヴェス医師がよこから口を挟んできた。
「そうだよ。ジョンは葉巻をまく仕事を得ても、手の肥大でできなくなり、行商人をやっても、気味悪がられてなにも売れず、けっきょく見せ物小屋でお金を稼ぐ方法しかなくなってね」
「フレデ・リック。ぼく・の話は・いいよ。いまは・きみの・おかげで・快適・な生活を・おくれ・ている」
「メリック様。こんなことをお聞きするのは筋違いだと思うのですが……」
スピロはどうしてこんなことを訊こうとしているのか、自分でも理解できなかった。
貧しさに苦しむ人々であふれるこの街で、その底辺の底をなめるような辛酸をあじわった彼なら…… エレファントマンなら、どういう解釈をするのかという興味がおおきかった。
「あなたは『切裂きジャック』とはどういう人物だと思われますか?」
「異形・のもの」
間髪をいれずに、メリックはそう言ってのけた。
スピロはドキリとした。
おもわずゾーイと目をあわせてしまう。あまりにも予想外の答え。ジョゼフ・メリックの口からだけは、でてこないはずの答え——
「わたし・の・ように・からだが・歪んで・いるのでは・ないよ」
メリックは声をふるわせた。おそらくおもしろがっているのだろう。
「こころが・歪・んでいる・人間だ・という・意味だ」
「そ、そうですね。わたしたちも先日、仲間内で推理しあいまして、それにちかい犯人像を導きだしました」
「ど・んな?」
「血に飢えた快楽者、多重人格者、恨みをかかえた性的未熟者、力の誇示によって現状を都合よくねじ曲げようとする狂人……」
「まぁ、たいした結論はでなかったがな」
「マリアさん、そういう言い方はないさぁ」
「小生は卓越した作家たちの、推理は楽しめましたがね」
ゾーイやマリア、リンタロウが口々に感想を述べると、メリックは目をほそめた。
「未来・人でも・過去が・全部・わかる・わけでは・ないので・すね。ところで……」
「未来では、ぼく・の病気・は治せるの・かな?」
メリックはストレートにそう尋ねてきた。
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