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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第167話 ブラム・ストーカーのフーダニット2
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「まぁ、儀式といっても、今回の事件においては、おそらく組織的な犯行ではないでしょう。それよりも『血』や『肉』に取り憑かれて、その衝動をとめられない犯人像のほうがただしいのだと思います」
スピロが話を前に推し進めた。
「ミス・スピロ。血や肉に取り憑かれているとは、どういうことだね?」
フロイトが興味を隠せない口調で尋ねてきた。
「ひとを殺すことでしか、性的興奮を感じられなくなった異常者——」
スピロはあくまでも事務的な口調だったが、文士の面々は息をのんだ。この時代にそのような解釈は、あまりにも突飛すぎる意見だと、セイにはすぐわかった。
「スピロ。いきなり『サイコパス』を持ち出されても…… みんな面喰らってるよ」
「あぁ、セイ様。申し訳ありませんでした。つい21世紀の感覚で……」
「ミス・スピロ。さきほどミスター・ユメミが『サイコパス』と言っておったが、それは……」
「説明するのは難しいですが、ひと言で言えば、感情の一部が欠如している精神病質者……でしょうかね」
「精神病質者? そう言えば切り裂きジャックの容疑者のなかに、精神を病んでいるものがいた者がいた、と聞いていたが……」
「あのアーロン・コスミンスキーって野郎だな。コナン・ドイルとマシュー・バリーのふたりが、まんまと逃げられた……」
マリアがあからさまに皮肉を言うと、コナン・ドイルが文句を返してきた。
「ちょ、ちょっとぉ、待ってくださいよぉ。マリアさん、あぁたも一緒に見張ってたじゃないですかぁぁぁ。あたしらだけのせいじゃないですよぉ、逃げられたのってぇ」
「は、ふたりで昔話にふけってるあいだに逃げられただろうがぁ。チラッとしか見えなかったが、ありゃ、どうみてもイカレてる顔してたぜ。ヤツがジャックで間違いねぇんじゃねぇか?」
「マリア様。そう単純ではありません。もし犯人がほんとうにサイコパスのシリアル・キラーならね」
「おい、そりゃ、どういうことだ?」
「サイコパスは精神を病んでいるのですが、けっして妄言をはいたり、凶暴だったりする人物ではないからです。実際はむしろ逆で、表面上は口が達者であったり、社交的で魅力的であったりする人物であることが多い、とされています」
「そうならコスミンスキーってひとは、そのシリアル・キラーっていうのとちがう気がしますよ。あたしもチラッとしか見てないけど、そんな紳士的には見えませんでしたから」
スピロが話を前に推し進めた。
「ミス・スピロ。血や肉に取り憑かれているとは、どういうことだね?」
フロイトが興味を隠せない口調で尋ねてきた。
「ひとを殺すことでしか、性的興奮を感じられなくなった異常者——」
スピロはあくまでも事務的な口調だったが、文士の面々は息をのんだ。この時代にそのような解釈は、あまりにも突飛すぎる意見だと、セイにはすぐわかった。
「スピロ。いきなり『サイコパス』を持ち出されても…… みんな面喰らってるよ」
「あぁ、セイ様。申し訳ありませんでした。つい21世紀の感覚で……」
「ミス・スピロ。さきほどミスター・ユメミが『サイコパス』と言っておったが、それは……」
「説明するのは難しいですが、ひと言で言えば、感情の一部が欠如している精神病質者……でしょうかね」
「精神病質者? そう言えば切り裂きジャックの容疑者のなかに、精神を病んでいるものがいた者がいた、と聞いていたが……」
「あのアーロン・コスミンスキーって野郎だな。コナン・ドイルとマシュー・バリーのふたりが、まんまと逃げられた……」
マリアがあからさまに皮肉を言うと、コナン・ドイルが文句を返してきた。
「ちょ、ちょっとぉ、待ってくださいよぉ。マリアさん、あぁたも一緒に見張ってたじゃないですかぁぁぁ。あたしらだけのせいじゃないですよぉ、逃げられたのってぇ」
「は、ふたりで昔話にふけってるあいだに逃げられただろうがぁ。チラッとしか見えなかったが、ありゃ、どうみてもイカレてる顔してたぜ。ヤツがジャックで間違いねぇんじゃねぇか?」
「マリア様。そう単純ではありません。もし犯人がほんとうにサイコパスのシリアル・キラーならね」
「おい、そりゃ、どういうことだ?」
「サイコパスは精神を病んでいるのですが、けっして妄言をはいたり、凶暴だったりする人物ではないからです。実際はむしろ逆で、表面上は口が達者であったり、社交的で魅力的であったりする人物であることが多い、とされています」
「そうならコスミンスキーってひとは、そのシリアル・キラーっていうのとちがう気がしますよ。あたしもチラッとしか見てないけど、そんな紳士的には見えませんでしたから」
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