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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第156話 全員が悪魔に出し抜かれる
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「ワイルド様、スティーブンソン様、そしてリンタロウ様。みなさまにはニコルズ様の尾行をお願いしていたはずですが……?」
ワイルドがスティーブンソンに、恨めしげな視線を投げかけてから口をひらいた。
「あ、いや、スピロ殿。僕らは言いつけ通り、気づかれないようにしっかりと尾行していたのだよ。だがね、足の長いあの怪物が現われて行く手をふさいできてね……」
「そ、そうなのだよ。俺様たちはそいつをやりすごすために、隠れざるを得なかったのだよ。そのあいだにニコルズ嬢をみうしなってしまったっていうわけだ」
スティーブンソンが開き直ったように言ったが、リンタロウががっくりと肩をおとしていた。
「いや、スピロさん。小生の力量不足が原因です。格闘技の腕を見込まれていたにもかかわらず、あのバケモノを目の前にして足がすくんでしまった……」
「リンタロウ様、それは仕方がありません。だれだってあんな怪物なぞ相手にできません。ここにいるセイ様のような能力者でない限りは……」
「スピロの言う通りですよ、リンタロウさん。あれはどんなに屈強なひとでも、簡単には倒せないです。気にしないでください」
セイがリンタロウを慰めたところで、スピロは今度はフロイトたちに質問を投げかけた。
「さて、フロイト様、ブラム・ストーカー様、あなたたちはゾーイと一緒にウォルター・シッカート氏を尾行してきていたかと思いますが……」
フロイトがわざとらしく咳払いをしてから言い放った。
「わが輩らもシッカートを見うしなったよ。しかたあるまい。あのへんてこな怪物に邪魔されたのだからな」
まるで失敗したのは当然といわんばかりの口ぶりだった。
「あ、いえ、私たちはホワイトチャペル駅までは尾行していました」
ブラム・ストーカーが声をあげた。
「途中でウェルズ君と会って、彼もシッカートが街中に消えていくのを目撃しています。ですが、追いかけようとしたところで、あのバケモノに襲われましてね。ゾーイ殿がヤツラと戦っているあいだに、私らはシッカートを追いかけたんですが……」
「すみません。自分が話しかけたりしたから、見うしなったのかもしれません」
ウェルズは素直に謝意を口にした。
「すくなくとも、シッカート氏は犯行時間に、この街にいたとわかったのなら、それだけで上出来でしょう。容疑者から外れなかったのは残念ではありますがね」
そう言いながらも、スピロはまたしても悪魔に出し抜かれた、という腹立たしさでいっぱいだった。
ワイルドがスティーブンソンに、恨めしげな視線を投げかけてから口をひらいた。
「あ、いや、スピロ殿。僕らは言いつけ通り、気づかれないようにしっかりと尾行していたのだよ。だがね、足の長いあの怪物が現われて行く手をふさいできてね……」
「そ、そうなのだよ。俺様たちはそいつをやりすごすために、隠れざるを得なかったのだよ。そのあいだにニコルズ嬢をみうしなってしまったっていうわけだ」
スティーブンソンが開き直ったように言ったが、リンタロウががっくりと肩をおとしていた。
「いや、スピロさん。小生の力量不足が原因です。格闘技の腕を見込まれていたにもかかわらず、あのバケモノを目の前にして足がすくんでしまった……」
「リンタロウ様、それは仕方がありません。だれだってあんな怪物なぞ相手にできません。ここにいるセイ様のような能力者でない限りは……」
「スピロの言う通りですよ、リンタロウさん。あれはどんなに屈強なひとでも、簡単には倒せないです。気にしないでください」
セイがリンタロウを慰めたところで、スピロは今度はフロイトたちに質問を投げかけた。
「さて、フロイト様、ブラム・ストーカー様、あなたたちはゾーイと一緒にウォルター・シッカート氏を尾行してきていたかと思いますが……」
フロイトがわざとらしく咳払いをしてから言い放った。
「わが輩らもシッカートを見うしなったよ。しかたあるまい。あのへんてこな怪物に邪魔されたのだからな」
まるで失敗したのは当然といわんばかりの口ぶりだった。
「あ、いえ、私たちはホワイトチャペル駅までは尾行していました」
ブラム・ストーカーが声をあげた。
「途中でウェルズ君と会って、彼もシッカートが街中に消えていくのを目撃しています。ですが、追いかけようとしたところで、あのバケモノに襲われましてね。ゾーイ殿がヤツラと戦っているあいだに、私らはシッカートを追いかけたんですが……」
「すみません。自分が話しかけたりしたから、見うしなったのかもしれません」
ウェルズは素直に謝意を口にした。
「すくなくとも、シッカート氏は犯行時間に、この街にいたとわかったのなら、それだけで上出来でしょう。容疑者から外れなかったのは残念ではありますがね」
そう言いながらも、スピロはまたしても悪魔に出し抜かれた、という腹立たしさでいっぱいだった。
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