626 / 935
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第150話 コナン・ドイルとマシュー・バリーは腹を括った
しおりを挟む
コナン・ドイルとマシュー・バリーが腹を括ったようだった。
エヴァが注意をうながした。
「わたしの銃撃は動きをとめますが、仕留めるわけではありません。どれくらいかはわかりませんが、あまりのろのろしていたらあのバケモノは息を吹き返しますので、ご注意ください」
「えぇっ。ちょっとぉ、今、それ言うかな。なんか覚悟がゆらぐなぁぁ」
「心配すんな。オレがおまえたちのあとを追いながら、とどめをさしていってやるよ」
マリアが胸をはったが、ドイルもバリーも不安そうに顔を見合わせたのが、遠めにすらわかった。
エヴァは抜けるべき正面の通路を再確認した。
通路は直線距離で300メートルほどで、1分もあれば抜けられそうだった。
問題はミアズマの数だけだった。
ミアズマが折り重なるようにして、びっしりと通路を埋め尽くしており、路面には猫の額ほどの隙間もないようだった。しかも路面に脚もかけられない個体は、壁を這い回っている。
エヴァは車体を傾けて、一番手前にいるミアズマに照準を合わせる。
一瞬だけ振り向いて、ネルがどうしているかだけを再確認した。彼女は健気に言いつけを守って目をしっかり閉じたまま、エヴァにしがみついていた。
「撃ちます!」
そう叫ぶやいなや、エヴァはトリガーをひいた。
ガガガガガガガガ……
けたたましい連射音とともにカウルの両端にある、マシンガンの銃口が火をふいた。おびたただしい数の銃弾が一気に地上にむかって吐き出されると、ミアズマたちがバタバタと倒れていった。一瞬にして力をうしない、折り曲げた長い針金の脚で体躯を支えきれず、ドスン、ドスンと地面に落ちていく。
「いまだ。走れっ!」
マリアの号令とともに、倒れたミアズマのあいまをふたりが駆けていく。落ちきっていない浮いた身体の下を抜けたり、細い脚を踏みしめたり、場合によってはミアズマのからだの上を踏みつけながら走っていく。途中、ミアズマの背中に埋込まれた人間の顔を蹴飛ばす勢いで踏んづけたりしていたが、ふたりともそんなことに構いもせず、先を急いでいく。
エヴァはそのふたりのスピードにあわせながら、その奥側にむけて慎重に銃弾を撃ち込んでいく。遅すぎても早すぎてもいけない。
その攻撃には絶妙なタイミングが求められた。
が、走っていくコナン・ドイルとマシュー・バリーのスピードが次第にあがってきて、エヴァの掃討のタイミングがあわなくなってきはじめた。
ミアズマがまだすこし動いているというのに、ふたりは横を通り抜けていきはじめた。「うわぁぁぁぁぁぁ」という悲鳴とも雄叫びともしれない奇声をあげながら走りぬける。
ついには銃弾がまだ着弾したばかりだというのに、ふたりはその上を踏み越えていくほどになった。残りはあと100メートルもない。
こちらが間に合わない。いくらなんでも急ぎすぎだ。
が、その理由がわかった。
マリアだった——。
エヴァが注意をうながした。
「わたしの銃撃は動きをとめますが、仕留めるわけではありません。どれくらいかはわかりませんが、あまりのろのろしていたらあのバケモノは息を吹き返しますので、ご注意ください」
「えぇっ。ちょっとぉ、今、それ言うかな。なんか覚悟がゆらぐなぁぁ」
「心配すんな。オレがおまえたちのあとを追いながら、とどめをさしていってやるよ」
マリアが胸をはったが、ドイルもバリーも不安そうに顔を見合わせたのが、遠めにすらわかった。
エヴァは抜けるべき正面の通路を再確認した。
通路は直線距離で300メートルほどで、1分もあれば抜けられそうだった。
問題はミアズマの数だけだった。
ミアズマが折り重なるようにして、びっしりと通路を埋め尽くしており、路面には猫の額ほどの隙間もないようだった。しかも路面に脚もかけられない個体は、壁を這い回っている。
エヴァは車体を傾けて、一番手前にいるミアズマに照準を合わせる。
一瞬だけ振り向いて、ネルがどうしているかだけを再確認した。彼女は健気に言いつけを守って目をしっかり閉じたまま、エヴァにしがみついていた。
「撃ちます!」
そう叫ぶやいなや、エヴァはトリガーをひいた。
ガガガガガガガガ……
けたたましい連射音とともにカウルの両端にある、マシンガンの銃口が火をふいた。おびたただしい数の銃弾が一気に地上にむかって吐き出されると、ミアズマたちがバタバタと倒れていった。一瞬にして力をうしない、折り曲げた長い針金の脚で体躯を支えきれず、ドスン、ドスンと地面に落ちていく。
「いまだ。走れっ!」
マリアの号令とともに、倒れたミアズマのあいまをふたりが駆けていく。落ちきっていない浮いた身体の下を抜けたり、細い脚を踏みしめたり、場合によってはミアズマのからだの上を踏みつけながら走っていく。途中、ミアズマの背中に埋込まれた人間の顔を蹴飛ばす勢いで踏んづけたりしていたが、ふたりともそんなことに構いもせず、先を急いでいく。
エヴァはそのふたりのスピードにあわせながら、その奥側にむけて慎重に銃弾を撃ち込んでいく。遅すぎても早すぎてもいけない。
その攻撃には絶妙なタイミングが求められた。
が、走っていくコナン・ドイルとマシュー・バリーのスピードが次第にあがってきて、エヴァの掃討のタイミングがあわなくなってきはじめた。
ミアズマがまだすこし動いているというのに、ふたりは横を通り抜けていきはじめた。「うわぁぁぁぁぁぁ」という悲鳴とも雄叫びともしれない奇声をあげながら走りぬける。
ついには銃弾がまだ着弾したばかりだというのに、ふたりはその上を踏み越えていくほどになった。残りはあと100メートルもない。
こちらが間に合わない。いくらなんでも急ぎすぎだ。
が、その理由がわかった。
マリアだった——。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。


セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる