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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第128話 マリアはコナン・ドイルのことばに違和感を覚えた
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「リンタロウさん、そんなこと言ったら、あたしゃどうするってーンです。妻を郷里に残したまま診療所をほったらかにしてるんですよ。まあ、居たところで、たいした患者は来やしませんがね。いや、もちろん二日おきに電報を送ってますよ。でもね、これでも結婚三年目ですからね。ルイーズに寂しい思いをさせてるんですから……」
「アーサー、だったらとっとと帰れよ。オレたちは別におまえを必要としてねぇぞ。シャーロック・ホームズみたいに切れ者でもねぇしな」
「マリアさん、ずいぶんな物言いじゃないかい。ドイルさんに失礼だよぉ」
ゾーイがすぐにマリアをたしなめてきたが、ドイルのぼやきはとまらない。
「そうは言いましてもね、一ヶ月ですよ。一ヶ月。まだ新婚だってぇのに、そんなにも離れてるんです。はぁーー、もう夏もおわるっていうのに……」
マリアはそのコナン・ドイルのことばに、違和感を覚えた。
なにを言っている——?。
「アーサー、それはどういう意味だ!」
「いやね、あたしゃ田舎の貧乏医者だってぇのに、まるまる一ヶ月夏休みをとってるってぇ話でね」
「一ヶ月!!」
マリアの胸にいやな予感がどっと押し寄せる。ゾーイもそれに気づいたらしい。
「ド、ドイルさん。一ヶ月ってどういうことなんだい。だってパーティーは昨日だっただろ」
「いやだなぁ、ゾーイさん。そりゃね、わかりますよ。楽しかったから昨日のように感じてるってぇのはね。でもいくらなんでも余韻を楽しみすぎでしょ。ねぇ、リンタロウくん」
「ええ、小生だってあれが本当に昨日だっていうなら、こんなに焦燥に駆られておりませんよ。すでに一ヶ月も経ってるから頭を抱えてるんじゃないですか。それに、マリアさんのお話どおり、たしかに日本までエリーゼが押しかけてきたって連絡もはいっておりまして、もうどうしたものかと……」
マリアは目を見開いたまま、思わず天を仰いだ。
「マリアさん、これってどういうことなんだい……」
そう問いかけるゾーイの声は震えていた。
「ああ、やられた。一夜にして『超跳躍』させられていたようだ」
「じ、時間が進められたっていうことかい。ど、どれくらいなんだい」
マリアは悔しさと腹だたしさをそのまま隠そうともせず、リンタロウをどなりつけた。
「リンタロウ!。今日は今日は何日だ!」
「マリアさん、な、なにをそんなに。今日は8月31日ですよ」
マリアは下唇をぐっと噛みしめた。
「切り裂きジャック事件、当日じゃねぇか……」
「アーサー、だったらとっとと帰れよ。オレたちは別におまえを必要としてねぇぞ。シャーロック・ホームズみたいに切れ者でもねぇしな」
「マリアさん、ずいぶんな物言いじゃないかい。ドイルさんに失礼だよぉ」
ゾーイがすぐにマリアをたしなめてきたが、ドイルのぼやきはとまらない。
「そうは言いましてもね、一ヶ月ですよ。一ヶ月。まだ新婚だってぇのに、そんなにも離れてるんです。はぁーー、もう夏もおわるっていうのに……」
マリアはそのコナン・ドイルのことばに、違和感を覚えた。
なにを言っている——?。
「アーサー、それはどういう意味だ!」
「いやね、あたしゃ田舎の貧乏医者だってぇのに、まるまる一ヶ月夏休みをとってるってぇ話でね」
「一ヶ月!!」
マリアの胸にいやな予感がどっと押し寄せる。ゾーイもそれに気づいたらしい。
「ド、ドイルさん。一ヶ月ってどういうことなんだい。だってパーティーは昨日だっただろ」
「いやだなぁ、ゾーイさん。そりゃね、わかりますよ。楽しかったから昨日のように感じてるってぇのはね。でもいくらなんでも余韻を楽しみすぎでしょ。ねぇ、リンタロウくん」
「ええ、小生だってあれが本当に昨日だっていうなら、こんなに焦燥に駆られておりませんよ。すでに一ヶ月も経ってるから頭を抱えてるんじゃないですか。それに、マリアさんのお話どおり、たしかに日本までエリーゼが押しかけてきたって連絡もはいっておりまして、もうどうしたものかと……」
マリアは目を見開いたまま、思わず天を仰いだ。
「マリアさん、これってどういうことなんだい……」
そう問いかけるゾーイの声は震えていた。
「ああ、やられた。一夜にして『超跳躍』させられていたようだ」
「じ、時間が進められたっていうことかい。ど、どれくらいなんだい」
マリアは悔しさと腹だたしさをそのまま隠そうともせず、リンタロウをどなりつけた。
「リンタロウ!。今日は今日は何日だ!」
「マリアさん、な、なにをそんなに。今日は8月31日ですよ」
マリアは下唇をぐっと噛みしめた。
「切り裂きジャック事件、当日じゃねぇか……」
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