ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜

多比良栄一

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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜

第105話 あなたは戯曲において名を残します

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「ジェームス、コナン・ドイル君も本を出版しているそうなのだよ」

 コナン・ドイルの話が長びきそうだと見てとったのか、ワイルドがあわてて口をはさんだ。

「本当なのか、アーサー。なんて本なんだい」
「あ、いや、それが、たいして売れてなくて……」

「『緋色の研究』ですわ」

 スピロがタイトル名を告げた。
「緋色の……研……究?。それは色彩学かなにかの学術書かなにかなのかい?」
「推理小説です、マシュー・バリー様。未来でとても人気のシャーロック・ホームズ・シリーズの記念すべき第一作目です」
 スピロは胸をはってそう主張したが、そこにいた人々からはなんの反応もなかった。それがどういう意味なのかがピンときてないようだった。
 コナン・ドイルが大あわてで取りつくろった。

「あ、いえ、この人がそう言いはってるだけで、あたしゃ、たいしたもん書いてなんておりません」

「まぁ……、そうだろうね。未来からきたっていうのも、どうかあやしいものだ」
「ジェームス、それはちがう。彼らはまちがいなく未来からきた人々だ」
 ワイルドがジェームスの疑念を断つように、力づよく口ぞえした。

「ほう、そうかい。ではこのボクは今後どうなる?。アーサーのように、その『未来』とやらに名を残せるのかね」

 その目はスピロにむけられていた。
 スピロはにっこりと、ほほえんで言った。
「ご安心ください。マシュー・バリー様はこのあと世界的な名声を手に入れられます……」

「戯曲においてね」

「戯曲?。小説ではなくて?」
「えぇ、あなたの小説はそれなりに売れましたが、あなたの名を『未来』に残すのはその戯曲。これから10年以上もあとに執筆される作品……」

「『ピーター・パン』です」

「まぁ、『ピーター・パン』でしたか……」
 エヴァが思わず声をあげた。
「作者名を知りませんでした」

 するとすぐさまスピロが揶揄やゆするように言った。
「あら、エヴァ様、おかしな話ではありませんか?。このマシュー・バリー様もジョニー・デップ様が映画で演じられておりましたよ。あなたがファンの……」
「え?。あ!。あぁ……そう、映画『ネバー・ランド』で……。そうでしたわね。どうにも結びつきませんでした」

 セイはエヴァが失念しているのももっともだと思った。
 ジョニー・デップがいくら憑依型の名優でも、眼の前の男の容姿に重ねるのは難しい。
 それを皮肉られるのは気の毒だ。
 セイはエヴァに加勢した。

「『ピーター・パン』だったらぼくもよく知ってるよ」
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