560 / 935
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第84話 ロンドンで一番人気の女性誌主催のパーティー
しおりを挟む
「結局はどこかの有力者の知り合いなしには、ネルさんの夢は叶えられねぇってわけだよな」
ゾーイががっかりしたような口調で言った。
「あのぉ……」
そのとき、うしろのほうで申し訳なさそうに、リンタロウが手を挙げていた。
「小生……じつは、近々開かれるパーティーに招かれていまして……」
「それはどういうことなんですか?」
セイが前のめりでリンタロウに訊いたが、ほかの面々もおなじようなことばを口々にしていた。
「それがですね。本日、尾崎行雄氏に会いにいったとき、ニッポンに並々ならぬ興味を示している人がいて、尾崎氏にお話を聞かせて欲しいと、パーティーへの招待状をいただいていたらしいのですが、多忙なため、代わりに小生に行ってくれと言われましてね」
「リンタロウ様、それはどなたのご招待なのですか?」
「だれ……かは聞かなかったのですが、なんでも今このロンドンで一番人気の女性誌が主催だとか」
「もしかして『ザ・ウーマンズ・ワールド』かい?」
ネルが声を弾ませた。それだけでその女性誌が、人気があることがわかる。
「あぁ、そうそう、その女性誌です」
「そう言えば、さっき大家のターナー夫人が、『ジャポニスム』がロンドンでもブームって言ってましたね……」
リンタロウがそう言うと、ネルはもう気がそぞろという口調で尋ねてきた。
「アタシも、それに招待してもらえるのぉ?」
「ですが、少々くだけたパーティーで、正式な社交界というわけではないらしいのですよ」
「関係ないわよぉ。だって『ザ・ウーマンズ・ワールド』主催なんですよぉ。ロンドン中の女性の憧れのぉ」
ネルが興奮に顔を紅潮させているのをみて、スピロがたたみかけるように言った。
「ではリンタロウ様、それではその主催者の方に頼み込んでいただけますか?」
「小生……がですかぁ……」
「お願いします。今はそのつてしか、わたくしたちにはないのですから」
その一縷の望みは存外、簡単に実現した。
モリ・リンタロウから連絡を受けた尾崎行雄はすぐに主催者に連絡をとってくれて、8人もの大人数で押しかける許可をとってくれた。
電報を受け取ったリンタロウは、すこし顔をこわばらせていた。なれないパーティーへの出席にいまから、怖じ気づいているのかと思ったが、そうではなかった。
「乃木少将にお願いして帰国を延期してるのに、パーティーになんぞに参加しているのが明るみになったら、小生は一生ニッポンに帰れなくなりますよ」
ゾーイががっかりしたような口調で言った。
「あのぉ……」
そのとき、うしろのほうで申し訳なさそうに、リンタロウが手を挙げていた。
「小生……じつは、近々開かれるパーティーに招かれていまして……」
「それはどういうことなんですか?」
セイが前のめりでリンタロウに訊いたが、ほかの面々もおなじようなことばを口々にしていた。
「それがですね。本日、尾崎行雄氏に会いにいったとき、ニッポンに並々ならぬ興味を示している人がいて、尾崎氏にお話を聞かせて欲しいと、パーティーへの招待状をいただいていたらしいのですが、多忙なため、代わりに小生に行ってくれと言われましてね」
「リンタロウ様、それはどなたのご招待なのですか?」
「だれ……かは聞かなかったのですが、なんでも今このロンドンで一番人気の女性誌が主催だとか」
「もしかして『ザ・ウーマンズ・ワールド』かい?」
ネルが声を弾ませた。それだけでその女性誌が、人気があることがわかる。
「あぁ、そうそう、その女性誌です」
「そう言えば、さっき大家のターナー夫人が、『ジャポニスム』がロンドンでもブームって言ってましたね……」
リンタロウがそう言うと、ネルはもう気がそぞろという口調で尋ねてきた。
「アタシも、それに招待してもらえるのぉ?」
「ですが、少々くだけたパーティーで、正式な社交界というわけではないらしいのですよ」
「関係ないわよぉ。だって『ザ・ウーマンズ・ワールド』主催なんですよぉ。ロンドン中の女性の憧れのぉ」
ネルが興奮に顔を紅潮させているのをみて、スピロがたたみかけるように言った。
「ではリンタロウ様、それではその主催者の方に頼み込んでいただけますか?」
「小生……がですかぁ……」
「お願いします。今はそのつてしか、わたくしたちにはないのですから」
その一縷の望みは存外、簡単に実現した。
モリ・リンタロウから連絡を受けた尾崎行雄はすぐに主催者に連絡をとってくれて、8人もの大人数で押しかける許可をとってくれた。
電報を受け取ったリンタロウは、すこし顔をこわばらせていた。なれないパーティーへの出席にいまから、怖じ気づいているのかと思ったが、そうではなかった。
「乃木少将にお願いして帰国を延期してるのに、パーティーになんぞに参加しているのが明るみになったら、小生は一生ニッポンに帰れなくなりますよ」
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる