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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第78話 あのシャーロック・ホームズの?
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そこへ一度は出ていきかけたはずの、セイたちがぞろぞろと戻ってきた。
「どうしたんだい、スピロ」
スピロはまだ戸惑った表情のまま棒立ちしている、コナン・ドイルを手でさししめしながら紹介した。
「セイ様。こちら、コナン・ドイル様です」
「コナン・ドイルって、あのシャーロック・ホームズの?」
セイがおもわず驚きのことばを口にしたが、当のドイルはそれ以上にびっくりしていた。
「嘘だろ、き、きみたちは、あたしのことを知ってるのかい。もしかして『緋色の研究』を読んでくれたぁ?」
ドイルの声は嬉しさに弾んでいたが、セイは両手を前でおおきくふって、あわてて否定した。
「あ、いえ……。読んだことはありません」
「オレもねえな」
「残念ながらわたしも」
「あたいもないねぇ」
全員が口々に否定的な回答を返してくると、ドイルは全員を指さしてすねたような口調で抗議した。
「なんだよ、なんだよ、みんなであたしをバカにしているんですかぁ。だれも読んだことなんかないじゃないのよ。そりゃ、まったく売れなかった本だし、期待するほうが無駄っていうわのはわかってましたがね」
「ほうら、やっぱり売れてないじゃありませんか」
ターナー夫人に指摘されて、コナン・ドイルはしまったと言う表情を浮かべたが、すぐにセイとおなじように両手をからだの前でふって、あわてて否定した。
「いや、ターナーさん。小説ってえのは、この子らの言ってる『シャーロック・ホームズ』なんていう低俗なものじゃないんですよ。こないだロングマン社に買い取ってもらった歴史小説のことなんです。その原稿料が入るあてがあるんです」
スピロはそれを聞いて、コナン・ドイルの歴史小説の傑作を思いだした。
「歴史小説!。あぁ『ホワイト・カンパニー』や『南アフリカ戦争 原因と行い』。いえ、それとも『ジェラール准将』シリーズですか?」
「あ、いや、それはなにかね。あたしの書いたのは17世紀後半のモンマスの反乱を描いた『マイカ・クラーク』っていう作品ですけど……」
「なんだ、そりゃ、聞いたことねぇな」
マリアが小馬鹿にしたように言い放つと、コナン・ドイルはむきになって反論した。
「そ、そりゃ、そうですよ。来年出版予定ですからね。でもこの作品は『緋色の研究』なんかより、よっぽど有望なンですよ。ありゃたった25ポンドにしかならなかった。短編並の安値ですよ。そんなので買いたたかれたんだ。一応、単行本にもなったけど……、まぁ、その、なんだ……」
「やっぱり売れなかったんじゃありませんか」
ターナー夫人が呆れ声で言った。
「どうしたんだい、スピロ」
スピロはまだ戸惑った表情のまま棒立ちしている、コナン・ドイルを手でさししめしながら紹介した。
「セイ様。こちら、コナン・ドイル様です」
「コナン・ドイルって、あのシャーロック・ホームズの?」
セイがおもわず驚きのことばを口にしたが、当のドイルはそれ以上にびっくりしていた。
「嘘だろ、き、きみたちは、あたしのことを知ってるのかい。もしかして『緋色の研究』を読んでくれたぁ?」
ドイルの声は嬉しさに弾んでいたが、セイは両手を前でおおきくふって、あわてて否定した。
「あ、いえ……。読んだことはありません」
「オレもねえな」
「残念ながらわたしも」
「あたいもないねぇ」
全員が口々に否定的な回答を返してくると、ドイルは全員を指さしてすねたような口調で抗議した。
「なんだよ、なんだよ、みんなであたしをバカにしているんですかぁ。だれも読んだことなんかないじゃないのよ。そりゃ、まったく売れなかった本だし、期待するほうが無駄っていうわのはわかってましたがね」
「ほうら、やっぱり売れてないじゃありませんか」
ターナー夫人に指摘されて、コナン・ドイルはしまったと言う表情を浮かべたが、すぐにセイとおなじように両手をからだの前でふって、あわてて否定した。
「いや、ターナーさん。小説ってえのは、この子らの言ってる『シャーロック・ホームズ』なんていう低俗なものじゃないんですよ。こないだロングマン社に買い取ってもらった歴史小説のことなんです。その原稿料が入るあてがあるんです」
スピロはそれを聞いて、コナン・ドイルの歴史小説の傑作を思いだした。
「歴史小説!。あぁ『ホワイト・カンパニー』や『南アフリカ戦争 原因と行い』。いえ、それとも『ジェラール准将』シリーズですか?」
「あ、いや、それはなにかね。あたしの書いたのは17世紀後半のモンマスの反乱を描いた『マイカ・クラーク』っていう作品ですけど……」
「なんだ、そりゃ、聞いたことねぇな」
マリアが小馬鹿にしたように言い放つと、コナン・ドイルはむきになって反論した。
「そ、そりゃ、そうですよ。来年出版予定ですからね。でもこの作品は『緋色の研究』なんかより、よっぽど有望なンですよ。ありゃたった25ポンドにしかならなかった。短編並の安値ですよ。そんなので買いたたかれたんだ。一応、単行本にもなったけど……、まぁ、その、なんだ……」
「やっぱり売れなかったんじゃありませんか」
ターナー夫人が呆れ声で言った。
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