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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第64話 今のことば、とりけしてもらえるかな
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いつのまに——。
ゾーイの頭のなかに一瞬のうちに、いくつもの疑問符が頭に浮かんだ。ゾーイとおなじようにスピロにも、その早業は驚異に映ったようだった。目をおおきく見開いたまま見とれている。
だがマリアとエヴァはちがっていた。
マリアは自分の手のひらのうえに黒い雲を呼びだしていたし、エヴァは下にむけた手からの念で、床に黒い穴を現出させている。
「ゴードリーさん。今のことば、とりけしてもらえるかな」
セイは精いっぱいビジネスライクな口調で、ゴードリーに謝罪を要求した。
「ど、どのこ、こ、ことば……」
「ここにいるぼくの仲間は、あなたにひどい言われ方をするような人じゃない」
「あぁ……。そ、そう……」
ゴードリーの目は後悔と詫びの念で涙があふれんばかりだったが、彼はことばもなくうんうんと首を小刻みに縦揺れさせるだけだった。
さすがにゾーイはゴードンが少々憐れに思えてきたが、それをとめたのはアバーラインだった。
「ちょっと、キミ。やめてもらませんかね!。ここは警察署ですよ」
「えぇ、わかっています」
セイがアバーラインのほうへ向き直って言った。
「だからこの場所で、ぼくの仲間が勝手に罪人まがいの、濡れ衣を着させられることには黙っていられない」
「わ、わかった。ゴードンが吐いた暴言はわたしが謝ろう。だからその物騒なものを引っ込めてくれないかね」
「アバーライン警部補がそうおっしゃるのでしたら……」
セイはあっさりとそのことばに従い、ゴードンにつきつけていた日本刀を引くと、すかさず上へ放りあげた。
日本刀は天井にぶつかりそうになると、元からそんなものは存在しなかったかのように消えうせていた。
「おどろいたな」
アバーラインは刀が消えた空間に目をむけたまま、上の空のような口調で言った。
ゴードンが「うぅぅぅぅ」と呻き声をあげて、その場に崩れるように膝をついた。首筋につきつけられていた刃に
「きみらは、サーカスの団員かなにかなのかね。『バーナム・アンド・ベイリーサーカス』」かなにかの?」
アバーラインがすこし興奮気味にセイに尋ねた。
「サーカスではありません」
「でも、今、長い剣をどこからか取り出して消失させたじゃないか。まるで希代のマジシャン、フーディーニのようだ」
「いえ、手品師でもありませんわ」
「じゃあ、いったいぜんたいきみらは何者なんだね?」
そのこたえはセイよりも先に、スピロが答えた。
「未来からきた名探偵——、と言ったところです」
ゾーイの頭のなかに一瞬のうちに、いくつもの疑問符が頭に浮かんだ。ゾーイとおなじようにスピロにも、その早業は驚異に映ったようだった。目をおおきく見開いたまま見とれている。
だがマリアとエヴァはちがっていた。
マリアは自分の手のひらのうえに黒い雲を呼びだしていたし、エヴァは下にむけた手からの念で、床に黒い穴を現出させている。
「ゴードリーさん。今のことば、とりけしてもらえるかな」
セイは精いっぱいビジネスライクな口調で、ゴードリーに謝罪を要求した。
「ど、どのこ、こ、ことば……」
「ここにいるぼくの仲間は、あなたにひどい言われ方をするような人じゃない」
「あぁ……。そ、そう……」
ゴードリーの目は後悔と詫びの念で涙があふれんばかりだったが、彼はことばもなくうんうんと首を小刻みに縦揺れさせるだけだった。
さすがにゾーイはゴードンが少々憐れに思えてきたが、それをとめたのはアバーラインだった。
「ちょっと、キミ。やめてもらませんかね!。ここは警察署ですよ」
「えぇ、わかっています」
セイがアバーラインのほうへ向き直って言った。
「だからこの場所で、ぼくの仲間が勝手に罪人まがいの、濡れ衣を着させられることには黙っていられない」
「わ、わかった。ゴードンが吐いた暴言はわたしが謝ろう。だからその物騒なものを引っ込めてくれないかね」
「アバーライン警部補がそうおっしゃるのでしたら……」
セイはあっさりとそのことばに従い、ゴードンにつきつけていた日本刀を引くと、すかさず上へ放りあげた。
日本刀は天井にぶつかりそうになると、元からそんなものは存在しなかったかのように消えうせていた。
「おどろいたな」
アバーラインは刀が消えた空間に目をむけたまま、上の空のような口調で言った。
ゴードンが「うぅぅぅぅ」と呻き声をあげて、その場に崩れるように膝をついた。首筋につきつけられていた刃に
「きみらは、サーカスの団員かなにかなのかね。『バーナム・アンド・ベイリーサーカス』」かなにかの?」
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「サーカスではありません」
「でも、今、長い剣をどこからか取り出して消失させたじゃないか。まるで希代のマジシャン、フーディーニのようだ」
「いえ、手品師でもありませんわ」
「じゃあ、いったいぜんたいきみらは何者なんだね?」
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「未来からきた名探偵——、と言ったところです」
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