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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第54話 失敗したっっっ!!
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現在に戻ってきたセイを見て、広瀬・花香里は心底おどろいていた。こんなに落ち込んでいるセイを見るのは、ほんとうにひさしぶりだったからだ。
ジャンヌ・ダルクのとき以来ではないだろうか……。
マリアとエヴァと一緒にダイブするようになってからは、はじめてかもしれない。
いつものようにいちばん最初に浮上してきたマリアに、むこうでなにがあったかは伝えられていた。だが、その落ち込みぶりは、かがりの想定外だった。
「失敗したっっっ!」
マリアはプールからからだを起こして、顔からゴーグルとレギュレーターを、引きはがしながら叫んだ。まるで罵声のように聞こえる。
「マリア!。なにがあったの?。聖ちゃんのヴァイタルがおおきく乱れたわ。教えて!」
かがりはマリアのどなり声に負けないほどの大声で問いただした。が、マリアはすぐに答えを返してこなかった。
どういうこと!。マリア——。
かがりは数秒も待てなかった。勢いよくプールへ走り出すと、マリアが浸かっているダイブ区画の端に足を踏み入れた。
「マリア。なぜ答えてくれないの!。聖ちゃんのヴァイタルが……」
「わかってる!。聖はやられたんだ。敵に串刺しにされた!」
「串刺しに?」
かがりは反射的にセイのヴァイタル・データが表示されているモニタに目をやった。今は落ち着いた波になっているが、ついさきほどまでかなり乱れていたことがわかる波形の軌跡が見てとれる。
あの乱れはそういうことだったのだと合点した。
「そんな強い敵がいたの?、マリア!」
「いいえ!」
仕切られたプールの一番端の区画から、エヴァの声が割りこんできた。かがりが反射的にエヴァに視線をむけた。エヴァは眉根をよせてこちらを見ていた。なにか哀しげな表情だった。
「わたしたちは力を奪われました。そこを大量のミアズマ、いえ怪物たちに襲われて……」
「ちょ、ちょっと、エヴァ。力を奪われたって、どうやって?」
「そんなの知るかよ」
マリアが苛立ちをぶちまけた。
「くわしいことはスピロに訊け。オレたちも自分たちがなぜそうなったかわかっていねぇんだ」
マリアが喧嘩腰で話しかけてくるのに、かがりは腹がたった。
「マリア、なにを怒っているのよ」
「かがり、怒ってンのはおまえだ。ーったく、聖のことになると、ひとが変わったように攻撃的になりやがって」
そう指摘されて、かがりは自分がいつのまにやら、相当テンパっていたことに気づいた。
「あ、ごめん。マリア……」
「わりぃが、オレたちもすこぶる機嫌が斜めだ。ただの高校生の身でトンでもねぇ数の怪物に、取り囲まれちまったからな」
「かがりさん。わたしのせいです。わたしが聖さんに助けを求めなければ、刺されるような隙はうまれなかったはず……」
ジャンヌ・ダルクのとき以来ではないだろうか……。
マリアとエヴァと一緒にダイブするようになってからは、はじめてかもしれない。
いつものようにいちばん最初に浮上してきたマリアに、むこうでなにがあったかは伝えられていた。だが、その落ち込みぶりは、かがりの想定外だった。
「失敗したっっっ!」
マリアはプールからからだを起こして、顔からゴーグルとレギュレーターを、引きはがしながら叫んだ。まるで罵声のように聞こえる。
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かがりはマリアのどなり声に負けないほどの大声で問いただした。が、マリアはすぐに答えを返してこなかった。
どういうこと!。マリア——。
かがりは数秒も待てなかった。勢いよくプールへ走り出すと、マリアが浸かっているダイブ区画の端に足を踏み入れた。
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「わかってる!。聖はやられたんだ。敵に串刺しにされた!」
「串刺しに?」
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「いいえ!」
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「わたしたちは力を奪われました。そこを大量のミアズマ、いえ怪物たちに襲われて……」
「ちょ、ちょっと、エヴァ。力を奪われたって、どうやって?」
「そんなの知るかよ」
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マリアが喧嘩腰で話しかけてくるのに、かがりは腹がたった。
「マリア、なにを怒っているのよ」
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「あ、ごめん。マリア……」
「わりぃが、オレたちもすこぶる機嫌が斜めだ。ただの高校生の身でトンでもねぇ数の怪物に、取り囲まれちまったからな」
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