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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第50話 ゾーイは悲鳴すらでなかった
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マリアは満足そうな顔をみせながら、ゾーイの手に握られた血のついたナイフに手を添えてきた。
「ゾーイ、やればできるじゃねぇか」
そう言いながらゾーイの指を引き剥がすようにして、ナイフをとりあげた。
「さぁ、ネルを取り返しにいくぞ」
「ネル……さ……んを?」
ショックで顔がこわばっているのか、口をうまく動かせず、マリアに答えることばがでてこない。マリアはそんなゾーイの状況を気にすることなく続けた。
「だけど、ゾーイ。刺したのはいいが、こんなかすり傷じゃあダメだぜ。踏み込みがあめえ。こうやらねぇとな」
とそう言うやいなや、助走なしでドンと跳躍して、ウェンディの顔にむけて渾身の力でナイフを突き立てた。
「ぎゃぁぁぁぁぁ」
一瞬にして断未の声があがった。
ウェンディのミアズマの細い脚が力をうしない、からだがドスンと廊下に落ちたかと思うと、そのまま横に倒れた。ウェンディの顔は向こう側にむいたので、見なくてすんだ。
「ほらな、これくらいじゃねぇと倒せねぇ。そうだろ……、スピロ」
そう言いながらマリアが背後に目を泳がせた。その視線の先にスピロがいた。
「あ……、え、えぇ、そうです。まだゾーイは力が足りないようです」
マリアはその返事ににやりと口元を緩め、今度はゾーイを下から見あげて言った。
「だから、このミアズマはオレがやった。おまえじゃなくてな」
ゾーイはなにも言い返せなかった。
が、マリアの気持ちは嬉しかった。
「え、えぇ……。ま、まだ、あたいじゃあ、力不足のようだねぇ」
「そうだな。さぁ、ネルを取り返しにいくぜ」
ゾーイはマリアがナイフ片手に走り出そうとしたのを呼び止めた。
「マリアさん、エヴァさんは?」
「エヴァか?。あいつは二体のミアズマ引き連れて、二階から下へ飛び降りたよ」
「飛び降りた?」
「あぁ。ショートカットして、ネルを拉致ったミアズマを下で待ち受けてるはずさ」
マリアが臆面もなく言ったが、そのとたん外からエヴァの悲鳴が聞こえた。ただならないそのトーンに、マリアがあわてて窓のほうへ走り寄る。
「あぁっ!」
マリアが窓から顔を突き出すなり、短い悲鳴をあげそのまま絶句した。
だがゾーイは悲鳴すらでなかった。足ががくがくと震えて、おもわず背後にいる姉スピロに助けを求めるように視線をむけた。だが、頼みのスピロは自分よりもショックを受けていた。スピロはすでに立っていられず、蒼ざめた顔でその場に膝をついていた。
セイが二体のミアズマの槍の脚に、からだを貫かれていた——。
「ゾーイ、やればできるじゃねぇか」
そう言いながらゾーイの指を引き剥がすようにして、ナイフをとりあげた。
「さぁ、ネルを取り返しにいくぞ」
「ネル……さ……んを?」
ショックで顔がこわばっているのか、口をうまく動かせず、マリアに答えることばがでてこない。マリアはそんなゾーイの状況を気にすることなく続けた。
「だけど、ゾーイ。刺したのはいいが、こんなかすり傷じゃあダメだぜ。踏み込みがあめえ。こうやらねぇとな」
とそう言うやいなや、助走なしでドンと跳躍して、ウェンディの顔にむけて渾身の力でナイフを突き立てた。
「ぎゃぁぁぁぁぁ」
一瞬にして断未の声があがった。
ウェンディのミアズマの細い脚が力をうしない、からだがドスンと廊下に落ちたかと思うと、そのまま横に倒れた。ウェンディの顔は向こう側にむいたので、見なくてすんだ。
「ほらな、これくらいじゃねぇと倒せねぇ。そうだろ……、スピロ」
そう言いながらマリアが背後に目を泳がせた。その視線の先にスピロがいた。
「あ……、え、えぇ、そうです。まだゾーイは力が足りないようです」
マリアはその返事ににやりと口元を緩め、今度はゾーイを下から見あげて言った。
「だから、このミアズマはオレがやった。おまえじゃなくてな」
ゾーイはなにも言い返せなかった。
が、マリアの気持ちは嬉しかった。
「え、えぇ……。ま、まだ、あたいじゃあ、力不足のようだねぇ」
「そうだな。さぁ、ネルを取り返しにいくぜ」
ゾーイはマリアがナイフ片手に走り出そうとしたのを呼び止めた。
「マリアさん、エヴァさんは?」
「エヴァか?。あいつは二体のミアズマ引き連れて、二階から下へ飛び降りたよ」
「飛び降りた?」
「あぁ。ショートカットして、ネルを拉致ったミアズマを下で待ち受けてるはずさ」
マリアが臆面もなく言ったが、そのとたん外からエヴァの悲鳴が聞こえた。ただならないそのトーンに、マリアがあわてて窓のほうへ走り寄る。
「あぁっ!」
マリアが窓から顔を突き出すなり、短い悲鳴をあげそのまま絶句した。
だがゾーイは悲鳴すらでなかった。足ががくがくと震えて、おもわず背後にいる姉スピロに助けを求めるように視線をむけた。だが、頼みのスピロは自分よりもショックを受けていた。スピロはすでに立っていられず、蒼ざめた顔でその場に膝をついていた。
セイが二体のミアズマの槍の脚に、からだを貫かれていた——。
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