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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第38話 人間大もある大きな蜘蛛が現われた
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それは人間大もある大きな蜘蛛に見えた。
そのからだは三角錐を想像させる、ゆがんだフォルムをしており、そこから針金のような脚が何本も突き出していた。脚は細かったが異様に長く、「V」の字をひっくり返したように脚を折り曲げているのに、その脚に支えられた体躯は地面につかず宙に浮いていた。
脚の数はざっと20本ほど。八本でおさまらないところをみると、蜘蛛ではない。
だがなによりも蜘蛛と姿を異にするのは、からだの中央部分に人間の顔らしきものが貼り付いていることだった。
蜘蛛がこちらに近づいてくる。
その針金のような脚が石畳に触れるたびに、カチンカチンと耳障りな音をたてる。その足先はまるで『槍』のように尖っているのがわかった。
さきほどから街中に音を響かせていたのは、この音だったのだ。
「うそでしょ……」
一番最初に口を開いたのはネルだった。だが、その顔からは血の気がひいていて、からだはガタガタと小刻みに震えていた。
「あ……、あれは……、ハムステッドさん」
ネルは一番最初に現れた蜘蛛を震える手で指さしながら言った。が、立っていられなくなったのか、前にいるゾーイに倒れかかるようにしがみついた。ゾーイはあわててネルのからだを受けとめながらスピロに尋ねた。
「どういうことなんだい?。お姉さま」
「ゾーイ、思い出しなさい。あなたもオリンピュアで戦ったではないですか。数々のギリシア神話の怪物と……」
そこまで聞いてゾーイは気づいたようだった。
「まさか……、この化物どもって……この街の住人……ってことなのかい」
「なにがまさか、なものですか。悪魔が怪物をつくるときは、いつだってそのベースになるものがあると決まっていますよ」
ゾーイとスピロの会話を剣を身構えたまま聞いていたマリアが嘆息した。
「ゾーイ。おまえ鈍すぎ。街中からひとけが消えてた段階で気づけよ。だが問題はそこじゃねぇ……」
そう言ってマリアは上のほうを見まわした。
「多すぎるってことだ」
ふと気づくと、いつの間にか蜘蛛たちに取り囲まれていた。すべての四つ角、小路、二階建ての貸間長屋の屋根が、蜘蛛にびっしりと埋め尽くされていた。さらに建物の壁に垂直に取りついている個体もいた。そういう様はまさに蜘蛛、としか形容のしようがない。
「このクソせめぇ場所に、定員オーバーだろ。空気読め、このクソ蜘蛛」
マリアは悪態をついたが、たしかにこの路地で相手にするには、数が多いのは確かだ。セイはエヴァの力を借りることにした。
「エヴァ、まずきみに頼みたい。あいつらを機関銃で一掃してくれないか?」
そのからだは三角錐を想像させる、ゆがんだフォルムをしており、そこから針金のような脚が何本も突き出していた。脚は細かったが異様に長く、「V」の字をひっくり返したように脚を折り曲げているのに、その脚に支えられた体躯は地面につかず宙に浮いていた。
脚の数はざっと20本ほど。八本でおさまらないところをみると、蜘蛛ではない。
だがなによりも蜘蛛と姿を異にするのは、からだの中央部分に人間の顔らしきものが貼り付いていることだった。
蜘蛛がこちらに近づいてくる。
その針金のような脚が石畳に触れるたびに、カチンカチンと耳障りな音をたてる。その足先はまるで『槍』のように尖っているのがわかった。
さきほどから街中に音を響かせていたのは、この音だったのだ。
「うそでしょ……」
一番最初に口を開いたのはネルだった。だが、その顔からは血の気がひいていて、からだはガタガタと小刻みに震えていた。
「あ……、あれは……、ハムステッドさん」
ネルは一番最初に現れた蜘蛛を震える手で指さしながら言った。が、立っていられなくなったのか、前にいるゾーイに倒れかかるようにしがみついた。ゾーイはあわててネルのからだを受けとめながらスピロに尋ねた。
「どういうことなんだい?。お姉さま」
「ゾーイ、思い出しなさい。あなたもオリンピュアで戦ったではないですか。数々のギリシア神話の怪物と……」
そこまで聞いてゾーイは気づいたようだった。
「まさか……、この化物どもって……この街の住人……ってことなのかい」
「なにがまさか、なものですか。悪魔が怪物をつくるときは、いつだってそのベースになるものがあると決まっていますよ」
ゾーイとスピロの会話を剣を身構えたまま聞いていたマリアが嘆息した。
「ゾーイ。おまえ鈍すぎ。街中からひとけが消えてた段階で気づけよ。だが問題はそこじゃねぇ……」
そう言ってマリアは上のほうを見まわした。
「多すぎるってことだ」
ふと気づくと、いつの間にか蜘蛛たちに取り囲まれていた。すべての四つ角、小路、二階建ての貸間長屋の屋根が、蜘蛛にびっしりと埋め尽くされていた。さらに建物の壁に垂直に取りついている個体もいた。そういう様はまさに蜘蛛、としか形容のしようがない。
「このクソせめぇ場所に、定員オーバーだろ。空気読め、このクソ蜘蛛」
マリアは悪態をついたが、たしかにこの路地で相手にするには、数が多いのは確かだ。セイはエヴァの力を借りることにした。
「エヴァ、まずきみに頼みたい。あいつらを機関銃で一掃してくれないか?」
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