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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第30話 あたしは誰かに殺された……
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「オレはクリスチャンだ。あんたとおなじカトリック教徒のな。このエヴァはバプテスト教会のプロテスタント、そしてそこにスピロとゾーイの姉妹は、ギリシア正教……。だからあんたが『前世』なんて信じられないのはわかる。だが、今ここはまちがいなく、あんたの前世の記憶のなかだ。そこにオレたちはダイブしている」
「そしてオレたちはあんたを助けにきた」
マリアの取りつく島のない言い方に、すこし気圧されて口ごもったが、エリザベスはそれでも強気の態度を崩そうとしなかった。
「ふ、だからって言ってなんなの?。あなたたちのような子供が、どうやって私を助けるっていうの……」
エミリーはマリアをキッと睨みつけた。マリアはあきれ返って肩をすくめたが、その横でスピロがゾーイに目で合図した。ゾーイはエリザベスにうしろからそっと近づくと、すっとさりげなくその頭に手をかざした。
「このひとの未練を教えていただけますか?」
スピロはエリザベスを正面から見すえて尋ねた。
「は、なにを言って……」
またエリザベスが悪態をつきそうになったが、エリザベスの顔の前に今度はネルの姿が浮き出てきた。エリザベスも靄のようにかすんで見えたが、ネルはそれよりさらに薄ぼんやりとしていた。
ネルがぼんやりとした表情でうわ言のように言った。
「あたし、誰かに殺されたんだわ……」
スピロが片方の眉だけをあげて、その目を覗き込んだ。
「だれにです?」
「わからない……、わかりっこない。だって……うしろからいきなり首を掻き切られて……、相手の顔なんて見る暇なんてなかったわ」
そのネルの証言によほど驚いたのだろうか、エヴァがおもわずスピロに尋ねた。
「スピロさん。首を切られたって、切り裂きジャックにやられたんじゃあないですか?」
「いいえ。エヴァ様。そんなはずはありません。夕方頃に新聞の売り子が『五番目の犠牲者がでた』と大声で喧伝していました。切り裂きジャックの犯行はその5人目で終わりなのです」
スピロが理路整然と言い切ったのが、気に入らなかったのか、エヴァがさらに食い下がる。
「ですが、スピロさん。ホワイトチャペルで首を切られて娼婦……、女性が殺されたのなら、切り裂きジャックの犯行を疑わないという選択肢はないのではないですの?」
ネルの意識体が悔しそうに顔をゆがめながらセイに訴えかけてきた。
「あたしはまだ29歳だったのよ。そりゃ、ひとさまに胸を張れるような生き様じゃなかったけど……。でもこんなどん底の人生でも、勝手に終わらせられるなんて……ひどい。ひどすぎるわ。あたしはもっと生きたかったのに……」
ネルががっくりとうなだれた。
とたんにふっとネルのイメージが消える。中年女性エリザベスの顔が一瞬かいま見えるが、ネルの意識体とほとんど同時にそちらも霧消した。
ネル本人がゆっくりと頭を起こす。頭痛でもするのか、こめかみあたりを無意識にさすっている。
「そしてオレたちはあんたを助けにきた」
マリアの取りつく島のない言い方に、すこし気圧されて口ごもったが、エリザベスはそれでも強気の態度を崩そうとしなかった。
「ふ、だからって言ってなんなの?。あなたたちのような子供が、どうやって私を助けるっていうの……」
エミリーはマリアをキッと睨みつけた。マリアはあきれ返って肩をすくめたが、その横でスピロがゾーイに目で合図した。ゾーイはエリザベスにうしろからそっと近づくと、すっとさりげなくその頭に手をかざした。
「このひとの未練を教えていただけますか?」
スピロはエリザベスを正面から見すえて尋ねた。
「は、なにを言って……」
またエリザベスが悪態をつきそうになったが、エリザベスの顔の前に今度はネルの姿が浮き出てきた。エリザベスも靄のようにかすんで見えたが、ネルはそれよりさらに薄ぼんやりとしていた。
ネルがぼんやりとした表情でうわ言のように言った。
「あたし、誰かに殺されたんだわ……」
スピロが片方の眉だけをあげて、その目を覗き込んだ。
「だれにです?」
「わからない……、わかりっこない。だって……うしろからいきなり首を掻き切られて……、相手の顔なんて見る暇なんてなかったわ」
そのネルの証言によほど驚いたのだろうか、エヴァがおもわずスピロに尋ねた。
「スピロさん。首を切られたって、切り裂きジャックにやられたんじゃあないですか?」
「いいえ。エヴァ様。そんなはずはありません。夕方頃に新聞の売り子が『五番目の犠牲者がでた』と大声で喧伝していました。切り裂きジャックの犯行はその5人目で終わりなのです」
スピロが理路整然と言い切ったのが、気に入らなかったのか、エヴァがさらに食い下がる。
「ですが、スピロさん。ホワイトチャペルで首を切られて娼婦……、女性が殺されたのなら、切り裂きジャックの犯行を疑わないという選択肢はないのではないですの?」
ネルの意識体が悔しそうに顔をゆがめながらセイに訴えかけてきた。
「あたしはまだ29歳だったのよ。そりゃ、ひとさまに胸を張れるような生き様じゃなかったけど……。でもこんなどん底の人生でも、勝手に終わらせられるなんて……ひどい。ひどすぎるわ。あたしはもっと生きたかったのに……」
ネルががっくりとうなだれた。
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