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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第29話 あなたを21世紀に連れ戻しにきました
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「ネルゥゥゥゥ!!」
ピーターもこの早とちりっぷりに、さすがにうんざりしたのか声を張りあげた。
「な、なによ。ピーター。こんな時間にそんな大声だしちゃあ、警ら中のお巡りがすっとんでくるじゃないのぉ」
「ネル……。この人たちは、キミに用事があって、はるばる東の果ての島国、ニッポンから来たんだ」
「東の果ての……。そんな辺境からなんでアタシなんかに……」
ひと騒動がやっと落ち着いたところで、セイは全員を代表してネルに自己紹介した。ネルはていねいに挨拶したあとでも、怪訝そうな目をむけてきた。
「で、セイ。アタシに用ってなんなのぉ」
セイはネルの正面に進みでると、額に手をかざして念をこめた。とたんにネルの首ががくんと前に倒れて、代わりにその頭上にひとの顔が浮かびあがった。このロンドンの靄のように黄ばんだ煙につつまれて、中年の黒人女性がけだるげに頭をもたげた。
セイはその女性にむかってやさしく声をかけた。
「エリザベス・ブロンテさん」
そのひと声でその女性は目を開け、目をパチクリとさせて正面にいるセイを見た。
「な、なんなの?……。あなたは……だあれ?」
「ぼくはセイ・ユメミ。あなたを21世紀、あなたの元いた世紀の世界に連れ戻しにきました」
「21世紀!。あぁ、そうなのよ。そうわたしは21世紀にいたのよ」
「えぇ、承知しています。あなたは昏睡病になって……」
「そう、昏睡病。なんか頭が縮む、いえ、脳がそのまま縮んだように痛くなって……」
「その病気のせいで、あなたの意識が、今ここ、あなたの前世に引きずり込まれたんです。ですから……」
「前世?。つまり生れ代わりってこと?。まさか、そんなの信じるわけないじゃないの。わたしはクリスチャンよ、カトリックのね。そんな……、生まれ変わりなんて……、そんなのでまかせです。イエス様はひと言もそんな教えを説いておりませんことよ。それより早くここから連れ出してちょうだい。ここは息苦しくて、臭くて、気分が滅入る天気ばかり続いて……。もううんざり。イヤな事だらけ……」
自分勝手にまくし立てるエリザベスに、セイはおもわずため息をついた。
この前世にして、この来世なのだと、思い知らさせる——。
「うるせぇぞ、ババァ!。残念ながらな、前世はあるんだよ」
マリアがいくぶん恫喝気味に言い放った。さきほどからのいろいろな出来事で、腹に据えかねるようなものがあったのかもしれない。
ピーターもこの早とちりっぷりに、さすがにうんざりしたのか声を張りあげた。
「な、なによ。ピーター。こんな時間にそんな大声だしちゃあ、警ら中のお巡りがすっとんでくるじゃないのぉ」
「ネル……。この人たちは、キミに用事があって、はるばる東の果ての島国、ニッポンから来たんだ」
「東の果ての……。そんな辺境からなんでアタシなんかに……」
ひと騒動がやっと落ち着いたところで、セイは全員を代表してネルに自己紹介した。ネルはていねいに挨拶したあとでも、怪訝そうな目をむけてきた。
「で、セイ。アタシに用ってなんなのぉ」
セイはネルの正面に進みでると、額に手をかざして念をこめた。とたんにネルの首ががくんと前に倒れて、代わりにその頭上にひとの顔が浮かびあがった。このロンドンの靄のように黄ばんだ煙につつまれて、中年の黒人女性がけだるげに頭をもたげた。
セイはその女性にむかってやさしく声をかけた。
「エリザベス・ブロンテさん」
そのひと声でその女性は目を開け、目をパチクリとさせて正面にいるセイを見た。
「な、なんなの?……。あなたは……だあれ?」
「ぼくはセイ・ユメミ。あなたを21世紀、あなたの元いた世紀の世界に連れ戻しにきました」
「21世紀!。あぁ、そうなのよ。そうわたしは21世紀にいたのよ」
「えぇ、承知しています。あなたは昏睡病になって……」
「そう、昏睡病。なんか頭が縮む、いえ、脳がそのまま縮んだように痛くなって……」
「その病気のせいで、あなたの意識が、今ここ、あなたの前世に引きずり込まれたんです。ですから……」
「前世?。つまり生れ代わりってこと?。まさか、そんなの信じるわけないじゃないの。わたしはクリスチャンよ、カトリックのね。そんな……、生まれ変わりなんて……、そんなのでまかせです。イエス様はひと言もそんな教えを説いておりませんことよ。それより早くここから連れ出してちょうだい。ここは息苦しくて、臭くて、気分が滅入る天気ばかり続いて……。もううんざり。イヤな事だらけ……」
自分勝手にまくし立てるエリザベスに、セイはおもわずため息をついた。
この前世にして、この来世なのだと、思い知らさせる——。
「うるせぇぞ、ババァ!。残念ながらな、前世はあるんだよ」
マリアがいくぶん恫喝気味に言い放った。さきほどからのいろいろな出来事で、腹に据えかねるようなものがあったのかもしれない。
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