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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第25話 ホワイトチャペルへ
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「行きましょう」
そう言うなりピーターが歩き出すと、五人はぞろぞろとつき従った。
が、その姿はどうしても目をひいた。
闇と霧のおかげで、それが誰なのかはわからなかっただろうが、それでも人々の耳目がこちらに向いているのを、セイは感じずにはいられなかった。
歩きはじめて20分ほど経ったところで、ピーターが「ホワイトチャペルだ」と声をかけた。おなじ街並みや入り組んだ複雑な路地が延々と続くので、時間の感覚や距離感が狂わされたが、実際の距離は2キロ程度だろうと、セイは見積もった。
だがピーターという案内役がいなければ、まだあのオールド・ニコルから抜けだせずにいたかもしれない。
先導していたピーターがふいに足をとめた。
そこにはなにもなかったので、セイは不思議に思ったが、ピーターは建物と建物の切れ目の隙間から奥を覗き込んだ。そこには路地と呼ぶのもはばかられる、狭い通路があった。
「ピーター、ここを通るのかい?」
「ここを通り抜けるほうが早いんだ」
「おい、ピーター。ここは絶対に道じゃねぇよな?」
「嘘でしょう。まちがいなく汚れるじゃないですかぁ」
マリアもエヴァもピーターにむかって不満をぶつけたが、ピーターはうむを言わさず、その路地に足を踏み入れた。
その道は女性陣はなんとか通れたものの、体格の良いセイは横向きで蟹歩きをしなければ通れないほど狭かった。小路を抜けると、四方を集合住宅に囲まれたちいさな空き地にでた。空き地の地面はでこぼことしていて、いたるところに水溜まりがあった。その澱んだ水は昨日の雨でできたものだが、いまだに乾かずにいて悪臭を放っている。。
ピーターは空き地を突っ切ると、木戸に手をかけて押し開けた。そこから別の通路のほうに抜けられるようになっていた。どうやらここは居住者専用の裏庭の出入り口らしい。だがこの街の住人はそんなことお構いなしで、勝手に他人様の庭を通り抜けているのだった。
すこし歩いたところで、ピーターがひときわ寂れた長屋を見あげた。
「たぶん、ここ」
その建物はあまり見慣れない奇妙な構造をしていた。
ドーム(円門)のような正面の共同入り口からなかにはいると、各部屋にむかう暗い廊下と、二階に続くみすぼらしい階段があった。セイはこの階段をあがっていくのかと思ったが、ピーターはその横にある地階へ続くきたならしい階段をひょひょいと降りていく。数メートル降った場所には床下スペースがあって、その壁にぽっかりとおおきなトンネルがあいていた。
そう言うなりピーターが歩き出すと、五人はぞろぞろとつき従った。
が、その姿はどうしても目をひいた。
闇と霧のおかげで、それが誰なのかはわからなかっただろうが、それでも人々の耳目がこちらに向いているのを、セイは感じずにはいられなかった。
歩きはじめて20分ほど経ったところで、ピーターが「ホワイトチャペルだ」と声をかけた。おなじ街並みや入り組んだ複雑な路地が延々と続くので、時間の感覚や距離感が狂わされたが、実際の距離は2キロ程度だろうと、セイは見積もった。
だがピーターという案内役がいなければ、まだあのオールド・ニコルから抜けだせずにいたかもしれない。
先導していたピーターがふいに足をとめた。
そこにはなにもなかったので、セイは不思議に思ったが、ピーターは建物と建物の切れ目の隙間から奥を覗き込んだ。そこには路地と呼ぶのもはばかられる、狭い通路があった。
「ピーター、ここを通るのかい?」
「ここを通り抜けるほうが早いんだ」
「おい、ピーター。ここは絶対に道じゃねぇよな?」
「嘘でしょう。まちがいなく汚れるじゃないですかぁ」
マリアもエヴァもピーターにむかって不満をぶつけたが、ピーターはうむを言わさず、その路地に足を踏み入れた。
その道は女性陣はなんとか通れたものの、体格の良いセイは横向きで蟹歩きをしなければ通れないほど狭かった。小路を抜けると、四方を集合住宅に囲まれたちいさな空き地にでた。空き地の地面はでこぼことしていて、いたるところに水溜まりがあった。その澱んだ水は昨日の雨でできたものだが、いまだに乾かずにいて悪臭を放っている。。
ピーターは空き地を突っ切ると、木戸に手をかけて押し開けた。そこから別の通路のほうに抜けられるようになっていた。どうやらここは居住者専用の裏庭の出入り口らしい。だがこの街の住人はそんなことお構いなしで、勝手に他人様の庭を通り抜けているのだった。
すこし歩いたところで、ピーターがひときわ寂れた長屋を見あげた。
「たぶん、ここ」
その建物はあまり見慣れない奇妙な構造をしていた。
ドーム(円門)のような正面の共同入り口からなかにはいると、各部屋にむかう暗い廊下と、二階に続くみすぼらしい階段があった。セイはこの階段をあがっていくのかと思ったが、ピーターはその横にある地階へ続くきたならしい階段をひょひょいと降りていく。数メートル降った場所には床下スペースがあって、その壁にぽっかりとおおきなトンネルがあいていた。
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