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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第21話 ニコル・ストリート遊撃隊 (イレギュラーズ)
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「探してほしいのは、おんなのひとだよ。名前はわかんないだけど、30歳くらいの美人で、そう髪の毛は赤毛……、それになんか……たくましい。なんていうか腕が太くて……」
ピーターがにんまりと口元を緩めた。
「あぁ、それなら心当たりがある」
「居場所を知っているのかい?」
「居場所は……、今はちょっとわからない。でもそのひとは、赤毛のネルって呼ばれてる。まぁ—、どのあたりにいるかは見当がつくよ」
「そこを教えてくれないかい。あたいはもう限界さぁ。あんたを探すのでへとへとになっちまってね」
「なんでボクのせいなのかわかンないけど、そのひとはこの街じゃなくて隣町にいる」
「隣町……なのかい」
「どこをどうして間違えたのかしンないけど。この街オールド・ニコルにはいないさ」
「そうなのかい……」
ゾーイはため息をついた。要引揚者の思念をなんとかトレースできていた、と思っていただけにがっくりした。こんな物騒な街を夕闇が迫るなか、みんなをひっぱり回して、あげくに場所をおおきく間違えていたというのが恥ずかしくて、申し訳なくてならない。
「じゃあ、ピーター。ぼくらをそこに案内してくれないかい。もうこの汚れた空気にも、喉をさすような臭いにも、ぼくらは耐えられそうにない」
「そうですわね。この酷い環境ではゾーイの能力も力を発揮できないのも当然でしょう」
スピロがゾーイをかばいだてするように意見を言った。ゾーイは姉の庇護がうれしかった。
「じゃあ、この子たちを使ってくれないかい」
ピーターがうしろにいる子供たちを指し示しながら提案した。
「こんなちいさな子たちを?。こんな夜中に?」
「赤毛のネルが今どこにいるかわからないからね。この子たちが隣町を探しに行ってきて、見つかったらボクがキミたちを案内する」
「いや、しかし……、子供たちを……」
「いいでしょう。あなたたちみんなにお仕事を頼むこととしましょう」
ピーターの提案に二の足を踏むセイをよそに、スピロが即断した。スピロはちらりとエヴァに目配せしながら、ピーターに言った。
「子供たちにお仕事をお願いするのですから、もう5シリングはずむとしましょう」
エヴァは勘弁してとばかりに恨みがましい目をむけたが、子供たちの顔は突然生気が蘇ったように、晴々と輝いた。
ゾーイは子供たちが「うわーっ」と叫びだすかと思ったが、口々に期待と喜びに満ちた笑みを浮かべたものの、静かに手をとりあうだけの慎ましやかなものだった。
子供たちが声をひそめながらもはしゃいでいる様子を見ながら、スピロが言った。
「まるでシャーロック・ホームズシリーズに登場する『ベイカー・ストリート遊撃隊』みたいですわね」
「な、なんなの、そのシャーロックなんとかとか、『ベイカー・ストリート遊撃隊』とか言うのは?」
「そういう探偵小説がこれからはやるのです。その主人公の探偵ホームズは情報を得るのに、ストリートチルドレンの一団に調査を頼むのですよ」
「ふーん、じゃあ、ぼくらはさしずめ『ニコル・ストリート遊撃隊』ってわけか……」
「悪くないね」
ピーターがにんまりと口元を緩めた。
「あぁ、それなら心当たりがある」
「居場所を知っているのかい?」
「居場所は……、今はちょっとわからない。でもそのひとは、赤毛のネルって呼ばれてる。まぁ—、どのあたりにいるかは見当がつくよ」
「そこを教えてくれないかい。あたいはもう限界さぁ。あんたを探すのでへとへとになっちまってね」
「なんでボクのせいなのかわかンないけど、そのひとはこの街じゃなくて隣町にいる」
「隣町……なのかい」
「どこをどうして間違えたのかしンないけど。この街オールド・ニコルにはいないさ」
「そうなのかい……」
ゾーイはため息をついた。要引揚者の思念をなんとかトレースできていた、と思っていただけにがっくりした。こんな物騒な街を夕闇が迫るなか、みんなをひっぱり回して、あげくに場所をおおきく間違えていたというのが恥ずかしくて、申し訳なくてならない。
「じゃあ、ピーター。ぼくらをそこに案内してくれないかい。もうこの汚れた空気にも、喉をさすような臭いにも、ぼくらは耐えられそうにない」
「そうですわね。この酷い環境ではゾーイの能力も力を発揮できないのも当然でしょう」
スピロがゾーイをかばいだてするように意見を言った。ゾーイは姉の庇護がうれしかった。
「じゃあ、この子たちを使ってくれないかい」
ピーターがうしろにいる子供たちを指し示しながら提案した。
「こんなちいさな子たちを?。こんな夜中に?」
「赤毛のネルが今どこにいるかわからないからね。この子たちが隣町を探しに行ってきて、見つかったらボクがキミたちを案内する」
「いや、しかし……、子供たちを……」
「いいでしょう。あなたたちみんなにお仕事を頼むこととしましょう」
ピーターの提案に二の足を踏むセイをよそに、スピロが即断した。スピロはちらりとエヴァに目配せしながら、ピーターに言った。
「子供たちにお仕事をお願いするのですから、もう5シリングはずむとしましょう」
エヴァは勘弁してとばかりに恨みがましい目をむけたが、子供たちの顔は突然生気が蘇ったように、晴々と輝いた。
ゾーイは子供たちが「うわーっ」と叫びだすかと思ったが、口々に期待と喜びに満ちた笑みを浮かべたものの、静かに手をとりあうだけの慎ましやかなものだった。
子供たちが声をひそめながらもはしゃいでいる様子を見ながら、スピロが言った。
「まるでシャーロック・ホームズシリーズに登場する『ベイカー・ストリート遊撃隊』みたいですわね」
「な、なんなの、そのシャーロックなんとかとか、『ベイカー・ストリート遊撃隊』とか言うのは?」
「そういう探偵小説がこれからはやるのです。その主人公の探偵ホームズは情報を得るのに、ストリートチルドレンの一団に調査を頼むのですよ」
「ふーん、じゃあ、ぼくらはさしずめ『ニコル・ストリート遊撃隊』ってわけか……」
「悪くないね」
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