494 / 935
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第18話 牢屋に入れられるのが怖くはないのですか?
しおりを挟む
「警察につき出してもいいんですよ。でもコインをかえしてもらったら、見なかったことにしますわ。あれは使われては困るお金ですからね」
「はン。あんたらもどっからがくすねてきたってことかい」
「まぁ、泥棒扱いされるとは心外です」
「じゃあ、偽金ってわけか。ぼくは偽金の使用も得意だ」
「お金とは盗むものではなく稼ぐものですよ」
「稼ぐ手段があればそうするさ」
「牢屋に入れられるのが怖くはないのですか?」
「むしろ歓迎さ。飯はクソくらいまずいが、とりあえずベッドで寝られる」
エヴァはなにを言っても食ってかかる少年に、うんざりした。
「ああ言えば、こう言う……。まるで、マリアさんみたいですね」
エヴァは腹立ちまぎれにそう言うと、ゾーイが苦笑しながら少年に声をかけた。
「なぁ、おまえさん。どうして大人たちに頼まないのかい?。頼めば食事くらい恵んでくれるだろうに」
「バカか、あんたは。そんなことをしたら『物乞い』をしたってことで、やっぱり豚箱行きだよ」
そう少年が叫んだとき、どこからかか細い声が聞こえた。
「ピーター……」
エヴァはハッとしてあたりに気を巡らせた。ゾーイもすぐ動けるように、すこし腰を浮かせて身構えた。
「ピーター……」
今度はちがう方向から声が聞こえた。エヴァがそちらに目をむける。
いくつもの目が暗闇にあった——。
エヴァはその視線に驚いて、一瞬、からだをうしろにひきそうになった。だがよくみるとそれはちいさな子供たちの目だと気づいた。まだ3歳か4歳くらいの幼児——。
暗さと霧のせいで見えにくいにもかかわらず、その子供たちのみすぼらしい様がエヴァにはすぐにわかった。
いつのまにかエヴァたちは十数人もの子供たちに取り囲まれていた。
子供たちはみな、目のまわりには隈をつくり、頬がこけていた。まるで死人のようにどろんとした瞳は、石のように無表情で生気を感じられない。髪の毛は色つやなどなくパサパサで、汚れや埃が皮脂で固まるがままに放置されていた。手足は青白く痩せ細っている。ぼろ布のような服に隠れているが、おそらくあばらが浮き出ているだろうとすぐにわかる。 そこには、もはや子供らしい、あどけなさや愛らしさなどどこにもなかった。
「こ、この子たち……」
エヴァの口からおもわず声が漏れでる。それに呼応するようにゾーイも、こころのことばを口にする。
「こ、この子たちは生きてるのかい……。幽霊とかじゃ……」
「生きてる!」
ゾーイが膝で押さえつけている下から少年が叫んだ。
「この子たちは生きてる!。ぼくがみんなを死なせない」
「そのためなら、ぼくはかっぱらいだって、スリだって、たとえ殺しだってやる!」
「はン。あんたらもどっからがくすねてきたってことかい」
「まぁ、泥棒扱いされるとは心外です」
「じゃあ、偽金ってわけか。ぼくは偽金の使用も得意だ」
「お金とは盗むものではなく稼ぐものですよ」
「稼ぐ手段があればそうするさ」
「牢屋に入れられるのが怖くはないのですか?」
「むしろ歓迎さ。飯はクソくらいまずいが、とりあえずベッドで寝られる」
エヴァはなにを言っても食ってかかる少年に、うんざりした。
「ああ言えば、こう言う……。まるで、マリアさんみたいですね」
エヴァは腹立ちまぎれにそう言うと、ゾーイが苦笑しながら少年に声をかけた。
「なぁ、おまえさん。どうして大人たちに頼まないのかい?。頼めば食事くらい恵んでくれるだろうに」
「バカか、あんたは。そんなことをしたら『物乞い』をしたってことで、やっぱり豚箱行きだよ」
そう少年が叫んだとき、どこからかか細い声が聞こえた。
「ピーター……」
エヴァはハッとしてあたりに気を巡らせた。ゾーイもすぐ動けるように、すこし腰を浮かせて身構えた。
「ピーター……」
今度はちがう方向から声が聞こえた。エヴァがそちらに目をむける。
いくつもの目が暗闇にあった——。
エヴァはその視線に驚いて、一瞬、からだをうしろにひきそうになった。だがよくみるとそれはちいさな子供たちの目だと気づいた。まだ3歳か4歳くらいの幼児——。
暗さと霧のせいで見えにくいにもかかわらず、その子供たちのみすぼらしい様がエヴァにはすぐにわかった。
いつのまにかエヴァたちは十数人もの子供たちに取り囲まれていた。
子供たちはみな、目のまわりには隈をつくり、頬がこけていた。まるで死人のようにどろんとした瞳は、石のように無表情で生気を感じられない。髪の毛は色つやなどなくパサパサで、汚れや埃が皮脂で固まるがままに放置されていた。手足は青白く痩せ細っている。ぼろ布のような服に隠れているが、おそらくあばらが浮き出ているだろうとすぐにわかる。 そこには、もはや子供らしい、あどけなさや愛らしさなどどこにもなかった。
「こ、この子たち……」
エヴァの口からおもわず声が漏れでる。それに呼応するようにゾーイも、こころのことばを口にする。
「こ、この子たちは生きてるのかい……。幽霊とかじゃ……」
「生きてる!」
ゾーイが膝で押さえつけている下から少年が叫んだ。
「この子たちは生きてる!。ぼくがみんなを死なせない」
「そのためなら、ぼくはかっぱらいだって、スリだって、たとえ殺しだってやる!」
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる