482 / 935
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第6話 オレがゲロを吐いている姿見てえか!
しおりを挟む
「コルセットで締めつけるのは勘弁しろ!。幼児体型のオレには責め苦に近いっ!」
「そうですか?。その当時、女性の内臓は弱くて支えが必要だと考えられていましたからね。コルセットなしでいることは、きちんと姿勢をとれない、すなわち、自制心に欠ける不道徳とみなされていたのですよ」
「オレは自制心に欠けるでも、不道徳でもいい!。実際にそうだしな」
「そうですか、残念です。わたくしはマリア様の細い柳腰も見てみたいと思っておりましたが……」
「スピロ、このままでいい。もしコルセットなんかつけたら、見られるのは、たぶんオレがゲロを吐いている姿だけだ」
マリアが渋々降参したところで、エヴァがセイに話かけてきた。
「セイさん。はやく要引揚者を探しませんか?。あまりここにはいたくないはありませんからね」
「たしかにそうだね、エヴァ。ここにいると気分が滅入ってきそうだ」
「できれば要引揚者が社交界の貴婦人とかだったら、ありがてぇんだがねぇ」
ゾーイがすこし浮かれたように希望を口にした。女性なのに男性の執事の典型的な身なりをさせられていることは、まったく気にならないらしい。セイにはむしろ男装のほうがボーイッシュなゾーイにはしっくりきている気がした。本人もそれをわかったうえで、それを楽しんでいるのかもしれない。
「は、ゾーイ。そんなところにその格好で行ったら、おまえはずっとそいつらを給仕するはめになるぞ。まるっきり執事だかんな」
ゾーイはそうマリアに指摘されて、自分の服装を再確認した。
「なるほど……。それは、まぁ……、そう……、光栄ですね」
その出で立ちを意識してか、ゾーイの口調が標準語になっている。
「は、ゾーイ、てめぇ、楽しんでいるってか!。気にくわねぇな」
「マリアさん、あなたも楽しみたければ、スピロさんの提案を受け入れて、コルセットに挑戦されては……、いえ、むしろ子供服を着たほうが早いかもしれませんわ」
「エヴァ。てめぇ。言うに事欠いて、ひとを子供扱いしやがって;…」
マリアが憤ってみせると、驚いたことにスピロがすぐさまそれに加勢した。
「そうですよ、エヴァ様。しつれいです。この時代では乳児期を過ぎると子供は『小さな大人』として扱われていたのです。こんなおおきな子供がいるものですか」
「いや、スピロ。それはそれですこし腹がたつな」
マリアはスピロが素で意味をとりちがえていることに抗議したが、スピロはそんなことはどうでもいい、とばかりにゾーイに声をかけた。
「そうですか?。その当時、女性の内臓は弱くて支えが必要だと考えられていましたからね。コルセットなしでいることは、きちんと姿勢をとれない、すなわち、自制心に欠ける不道徳とみなされていたのですよ」
「オレは自制心に欠けるでも、不道徳でもいい!。実際にそうだしな」
「そうですか、残念です。わたくしはマリア様の細い柳腰も見てみたいと思っておりましたが……」
「スピロ、このままでいい。もしコルセットなんかつけたら、見られるのは、たぶんオレがゲロを吐いている姿だけだ」
マリアが渋々降参したところで、エヴァがセイに話かけてきた。
「セイさん。はやく要引揚者を探しませんか?。あまりここにはいたくないはありませんからね」
「たしかにそうだね、エヴァ。ここにいると気分が滅入ってきそうだ」
「できれば要引揚者が社交界の貴婦人とかだったら、ありがてぇんだがねぇ」
ゾーイがすこし浮かれたように希望を口にした。女性なのに男性の執事の典型的な身なりをさせられていることは、まったく気にならないらしい。セイにはむしろ男装のほうがボーイッシュなゾーイにはしっくりきている気がした。本人もそれをわかったうえで、それを楽しんでいるのかもしれない。
「は、ゾーイ。そんなところにその格好で行ったら、おまえはずっとそいつらを給仕するはめになるぞ。まるっきり執事だかんな」
ゾーイはそうマリアに指摘されて、自分の服装を再確認した。
「なるほど……。それは、まぁ……、そう……、光栄ですね」
その出で立ちを意識してか、ゾーイの口調が標準語になっている。
「は、ゾーイ、てめぇ、楽しんでいるってか!。気にくわねぇな」
「マリアさん、あなたも楽しみたければ、スピロさんの提案を受け入れて、コルセットに挑戦されては……、いえ、むしろ子供服を着たほうが早いかもしれませんわ」
「エヴァ。てめぇ。言うに事欠いて、ひとを子供扱いしやがって;…」
マリアが憤ってみせると、驚いたことにスピロがすぐさまそれに加勢した。
「そうですよ、エヴァ様。しつれいです。この時代では乳児期を過ぎると子供は『小さな大人』として扱われていたのです。こんなおおきな子供がいるものですか」
「いや、スピロ。それはそれですこし腹がたつな」
マリアはスピロが素で意味をとりちがえていることに抗議したが、スピロはそんなことはどうでもいい、とばかりにゾーイに声をかけた。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。


セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる