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ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
第106話 もう邪魔しないでよぉぉぉ
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が、跳躍した瞬間、つぎの帆船はすんなりとは通してもらえそうもないのがわかった。
眼下に見おろしたその船の甲板では、十字軍の精鋭とおぼしき屈強な者が勢ぞろいしていた。甲板に降りたったとたん、襲いかかろうと手ぐすねをひいているのだ。
「もう邪魔しないでよぉぉぉ」
マリアは手にした剣を上にふりあげた。剣に光が走り、変形しはじめる。
刃の尖端近くにピボット・ピンがあらわれたかと思うと、それがぐるりと回った。そのピンが回転するとおりたたみナイフのように、隠れていた刃が回りながら出てきた。それがカチンと固定されると、ソードはマリアの身長の倍ほどの長さになっていた。
だが、それだけでは終わらない。さらにその刃の先にも、ピボット・ピンがでてきて、さらにおなじように次の刃をつぎ足していく。
空中を浮遊している数秒の間に、それらの行程をくり返した剣の刃は、帆船に乗り込む寸前には、十メートル以上の長さにまでなっていた。
こうなるとマリアには剣の切っ先がどこにあるのか見えてなかったので、そのまま全力で振り下ろすしかなかった。
その刃は帆船の甲板を一気に破壊した。床板をたたき割り、その下の梁をうち砕いて、いくつもの支柱をへし折った。その衝撃で甲板の床の一部が抜けた。兵士たちが下へと落ちていく。
マリアは振り抜いた剣から手を離すと、まだ無事な甲板に着地した。そのまま奥まで走り抜けようとしたが、船がぐらっと傾いで足が止まった。
甲板の亀裂から落ちなかった兵たちが、このチャンスを逃さずマリアに襲いかかろうとした。が、船がさらに傾いて、襲いかかった兵士たちは足をとられて、そのまま甲板の裂け目から下へ転がり落ちていった。
マリアは斜めになった甲板の上を走り抜けると、イスタンブールの岸壁にむかって、おおきく跳躍した。
海側の城壁が近づく。
ここで狙い撃たれては元も子もないと心配していたが、それも取り越し苦労だった。城壁を守っていたトルコ兵たちは、こちらに飛んでくる幼女の姿に口をあけた、まぬけな顔で身じろぎもできずにいた。
マリアは兵士たちのうしろにある競場の練習所の比較的軟らかな土をはねあげ着地した。うしろから我に返ったトルコ兵たちが、マリアを取り囲もうとしてわらわらと駆け寄ってくる。
ここでトルコ兵と一義交えている時間はない。
「あなたたちのスルタンが危機なの。あたしはメフメト二世を守るために戻ってきたの。忠義あるものはあなたたち一緒に付いてきなさい!」
マリアは兵士たちの返事も待たず、そのまま大宮殿のほうへ走りだした。すぐに背後で雄叫びがあがった。
マリアは元老院の横を一気に駆け抜け、ハギア・ソフィア大宮殿の門の前に隣接するアブグステオン広場に走り出た。すぐさま左側にある大宮殿の入り口へ向かう。
が、ふいに正面から馬のいななきと馬車の車の音が聞こえ、中央大通りの終端ミリオンがあるあたりに騎馬隊があらわれた。ものものしい数の騎馬隊が、三台の馬車を護衛しながらこちらへ向かってきていた。
そしてその騎馬隊の先頭に、ロルフ・ギュンターがいた。
眼下に見おろしたその船の甲板では、十字軍の精鋭とおぼしき屈強な者が勢ぞろいしていた。甲板に降りたったとたん、襲いかかろうと手ぐすねをひいているのだ。
「もう邪魔しないでよぉぉぉ」
マリアは手にした剣を上にふりあげた。剣に光が走り、変形しはじめる。
刃の尖端近くにピボット・ピンがあらわれたかと思うと、それがぐるりと回った。そのピンが回転するとおりたたみナイフのように、隠れていた刃が回りながら出てきた。それがカチンと固定されると、ソードはマリアの身長の倍ほどの長さになっていた。
だが、それだけでは終わらない。さらにその刃の先にも、ピボット・ピンがでてきて、さらにおなじように次の刃をつぎ足していく。
空中を浮遊している数秒の間に、それらの行程をくり返した剣の刃は、帆船に乗り込む寸前には、十メートル以上の長さにまでなっていた。
こうなるとマリアには剣の切っ先がどこにあるのか見えてなかったので、そのまま全力で振り下ろすしかなかった。
その刃は帆船の甲板を一気に破壊した。床板をたたき割り、その下の梁をうち砕いて、いくつもの支柱をへし折った。その衝撃で甲板の床の一部が抜けた。兵士たちが下へと落ちていく。
マリアは振り抜いた剣から手を離すと、まだ無事な甲板に着地した。そのまま奥まで走り抜けようとしたが、船がぐらっと傾いで足が止まった。
甲板の亀裂から落ちなかった兵たちが、このチャンスを逃さずマリアに襲いかかろうとした。が、船がさらに傾いて、襲いかかった兵士たちは足をとられて、そのまま甲板の裂け目から下へ転がり落ちていった。
マリアは斜めになった甲板の上を走り抜けると、イスタンブールの岸壁にむかって、おおきく跳躍した。
海側の城壁が近づく。
ここで狙い撃たれては元も子もないと心配していたが、それも取り越し苦労だった。城壁を守っていたトルコ兵たちは、こちらに飛んでくる幼女の姿に口をあけた、まぬけな顔で身じろぎもできずにいた。
マリアは兵士たちのうしろにある競場の練習所の比較的軟らかな土をはねあげ着地した。うしろから我に返ったトルコ兵たちが、マリアを取り囲もうとしてわらわらと駆け寄ってくる。
ここでトルコ兵と一義交えている時間はない。
「あなたたちのスルタンが危機なの。あたしはメフメト二世を守るために戻ってきたの。忠義あるものはあなたたち一緒に付いてきなさい!」
マリアは兵士たちの返事も待たず、そのまま大宮殿のほうへ走りだした。すぐに背後で雄叫びがあがった。
マリアは元老院の横を一気に駆け抜け、ハギア・ソフィア大宮殿の門の前に隣接するアブグステオン広場に走り出た。すぐさま左側にある大宮殿の入り口へ向かう。
が、ふいに正面から馬のいななきと馬車の車の音が聞こえ、中央大通りの終端ミリオンがあるあたりに騎馬隊があらわれた。ものものしい数の騎馬隊が、三台の馬車を護衛しながらこちらへ向かってきていた。
そしてその騎馬隊の先頭に、ロルフ・ギュンターがいた。
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