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ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
第91話 あなたの名誉が優先ってわけ
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「そんなことはないさ、マリア。ぼくだって引き揚げ失敗なんていう、不名誉は負いたくないからね」
要引揚者の命よりも、あなたの名誉が優先ってわけ——。
マリアはその返事に反吐がでそうになる思いだった。が、いたって平静を装って言った。
「よかった。それなら話は別よ。まぁ、ロルフ、あなたの言うことも理解できるわ。あたしたちの戦いはいくら神の御名の元におこなわれる崇高なものとはいえ、世間に認められなければ意味ないし、その活動には莫大なお金がかかるものね」
「ああ、その通りだ、マリア。さすがエラ・アッヘンヴァル学長の姪だけある」
「まぁね。それにバチカンのお偉いさんたちの、キリスト教の過去の過ちをたとえ仮想空間であっても正したい、という気持ちもわからなくないわ」
「物分かりがいいな。すこしは大人になったようだね」
ロルフは表情を華やがせると、マリアと交わらせている剣の圧力を緩めた。
「ロルフ・ギュンター……」
マリアはにっこりと微笑んでそう言うと、隠し持っていたもう一本の剣をロルフの足の甲に突き立てた。ロルフの足が地面に釘付けになる。
「大人なわけないじゃない。まだ子供よ」
マリアは突き立てた剣の柄頭をぐっと踏みつけて蹴り上げると、ロルフの頭上を飛び越える跳躍で、ヴラドを守っているレオンの前に着地した。
ロルフが叫ぶ。
「レオン、ヴラドを守れ!」
レオンがマリアのほうへ右手を突きだす。目の前に超音波の『見えない盾』が張り巡らされたのがわかった。
まったくぅ、真正面からの攻撃は無理ってことね!。
マリアはレオンの周りをぐるっと回るようにしてダッシュした。走り回るマリアが自分のからだの正面になるように、レオンがからだの向きを変える。
レオン。そんな動きをしたら、その見えない盾が正面しか防げないってことがわかっちゃうのにぃ。
「ドラキュラ、覚悟しなさい」
そう言ってマリアは持っていた剣を山なりに投げた。レオンの頭上のかなり上を通る緩い投擲。レオンには絶対に当たらない軌跡だったが、その放物線の先にはヴラドがいた。
マリアがヴラドを狙った剣が、自分の頭上を超えていくのを見てレオンは慌てた。
「レオン、罠だ!」
要引揚者の命よりも、あなたの名誉が優先ってわけ——。
マリアはその返事に反吐がでそうになる思いだった。が、いたって平静を装って言った。
「よかった。それなら話は別よ。まぁ、ロルフ、あなたの言うことも理解できるわ。あたしたちの戦いはいくら神の御名の元におこなわれる崇高なものとはいえ、世間に認められなければ意味ないし、その活動には莫大なお金がかかるものね」
「ああ、その通りだ、マリア。さすがエラ・アッヘンヴァル学長の姪だけある」
「まぁね。それにバチカンのお偉いさんたちの、キリスト教の過去の過ちをたとえ仮想空間であっても正したい、という気持ちもわからなくないわ」
「物分かりがいいな。すこしは大人になったようだね」
ロルフは表情を華やがせると、マリアと交わらせている剣の圧力を緩めた。
「ロルフ・ギュンター……」
マリアはにっこりと微笑んでそう言うと、隠し持っていたもう一本の剣をロルフの足の甲に突き立てた。ロルフの足が地面に釘付けになる。
「大人なわけないじゃない。まだ子供よ」
マリアは突き立てた剣の柄頭をぐっと踏みつけて蹴り上げると、ロルフの頭上を飛び越える跳躍で、ヴラドを守っているレオンの前に着地した。
ロルフが叫ぶ。
「レオン、ヴラドを守れ!」
レオンがマリアのほうへ右手を突きだす。目の前に超音波の『見えない盾』が張り巡らされたのがわかった。
まったくぅ、真正面からの攻撃は無理ってことね!。
マリアはレオンの周りをぐるっと回るようにしてダッシュした。走り回るマリアが自分のからだの正面になるように、レオンがからだの向きを変える。
レオン。そんな動きをしたら、その見えない盾が正面しか防げないってことがわかっちゃうのにぃ。
「ドラキュラ、覚悟しなさい」
そう言ってマリアは持っていた剣を山なりに投げた。レオンの頭上のかなり上を通る緩い投擲。レオンには絶対に当たらない軌跡だったが、その放物線の先にはヴラドがいた。
マリアがヴラドを狙った剣が、自分の頭上を超えていくのを見てレオンは慌てた。
「レオン、罠だ!」
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